動画コンテンツ市場の今と未来を緊急予測!デジタルコンテンツは今後どうなる!?
編集部
デジタルビジネスで先陣を切るFODでは、昨今の動画コンテンツ市場をどう見ているのか。FOD事業執行責任者である野村和生氏に、今後の予測から未来のテレビについてズバリ聞いてみた。
■Amazonプライム・ビデオとAbemaTVに対する本音
若者のテレビ離れが語られる中、動画配信サービスの需要はさらに高まっているが、FODではこうした他社の動向をどう見ているのだろうか。非常に語りにくいのを承知で、まずはAmazonが提供する「Amazonプライム・ビデオ」について伺ってみた。
野村和生氏:フジテレビオンデマンド事業執行責任者 フジテレビジョン コンテンツ事業局副部長
「そうですね、非常に申し上げづらいのですが(苦笑)、事実FODの会員がAmazonプライムさんに流れているといった動きはあるでしょうね。どうしても価格では勝てませんから、同じコンテンツを棚に置くのは避けています。ただ、Amazon有料会員(プライム会員)の年会費のみで見放題になるサービスですから、ユーザーからしてみればお得感はハンパないですね。とはいえ、単独でサブスクリプション型(加入型)サービスを展開している我々としては大変厳しいものがあります。きっと動画配信事業者は、みんな同じ気持ちだと思いますよ」
では、新たな動画サービスとして話題を呼んだ、無料で楽しめるインターネットテレビ局のAbemaTVに対してはどうだろうか。
「Abemaさんはマーケティングもプロモーションもすごいですよね、何と言ってもアプリの作りがうまい! あの開発力は憧れます。資金も潤っているようなので羨ましい限りですが、チャンネル運用にはかなりのコストがかかっているのではないでしょうか。というか、あれだけのチャンネル数を魅力的なコンテンツで埋めるには、年間200億でも足りないと思います。スカパーさんですら黒字化するのに時間がかかりましたから、今後のAbemaさんがどうなっていくのか楽しみですね」
どちらの回答も控えめながら、現在のコンテンツビジネス業界の実態をあらわしているように感じられた。視聴者からはなかなか見えない部分の話であるからこそ、デジタルコンテンツの今と、将来を担う野村氏の本音が垣間見られたように思う。
■フジテレビの収益の源は垂直統合にあり
FODを運営するうえでも、フジテレビというプラットフォームがあることは心強いはずだが、それには、収益のない時代でも社内でひたすら努力してきた功績が大きいと野村氏は語る。
「テレビ局の収益の源は、垂直統合にあると思います。決してコンテンツだけで収益があるわけではありません。例えば、今でこそ24時間放送が当たり前ですが、昔は考えられなかった。そういったことを実現していくには、類まれな努力があったからだと思います。
当初、動画配信の世界では、コンテンツの作り手と配信事業者は分離していました。買い手市場になれば、コンテンツの作り手は買い叩きに遭います。けれど、そんな時でも買い叩きに遭わぬよう、自社で収益をしっかり上げられるよう垂直統合の仕組みづくりをしてきたことがFODの強さではないでしょうか」
たとえ赤字でも自社ですべてまかなおうとする志、そうした礎があるからこそ、FODのサービスも軌道に乗っているのだ。今後も、プラットフォームと化したFODが培い備えてきたものに+αする形で新たなサービスが開始されたり、初期投資のような大きな予算をかけずに新しいことにも挑戦し続けられたりといった利点があるだろう。
次回は、野村氏の思い描くフジテレビオンデマンドの未来についてお聞きする。理想のコンテンツ配信サービスとは何か、その究極を考えていきたい。
[vol.1]若者ニーズを熟知!フジテレビオンデマンド仕掛け人にインタビュー
――フジテレビオンデマンド事業執行責任者 フジテレビジョン コンテンツ事業局副部長 野村 和生氏のプロフィール
中央大学法学部卒業後、NTT北海道移動通信網(現NTTドコモ)に入社。ワンセグの企画などを担当したのち2005年よりフジテレビ入社。モバイルサイトプロデューサー、CSスポーツ編成、ゲームプロデューサーを経て2012年より現職。同時にインターネットオリジナル番組「めちゃ×2ユルんでるッ!」「めちゃ×2タメしてるッ!」のプロデューサーも務める。
座右の銘は“為せば成る”。
仕事で大切にしているのは直感。愛読家として有名で、欠かさず読むのは「週刊SPA!」、最近読んだのは北方謙三の「水滸伝」「楊令伝」。大のコミック好きでも知られ、15分に1冊のペースで読破する。よく見るのはFacebook、Twitter、Yahoo!、食べログ、Retty、Netflix、Hulu、NHKオンデマンドなど。