フジテレビオンデマンドの魅力と、目が離せないプレミアム会員の動向
編集部
野村和生氏:フジテレビオンデマンド事業執行責任者 フジテレビジョン コンテンツ事業局副部長
低調ぶりが噂され、凋落したかと思われた“フジテレビ”ブランドだが、同社の運営する動画配信サービス「FOD(フジテレビオンデマンド)」は好調を見せている。果たして、その魅力とは何なのだろうか?8月から始まった新サービス、FODプレミアムの動向とあわせて、FOD事業執行責任者である野村和生氏に話を伺った。
■総合エンターテインメントサイトFODの魅力
FODでは動画配信のみならず、ライブチャンネルやマンガ、雑誌の配信までも行う“総合エンターテインメントサイト”となっている。基本フジテレビの作品が多いが、最新作から全盛期の大人気作品まで配信しているほか、ここ数年はオリジナルコンテンツにも力を入れている。中でもあのテラスハウスと並び、地上波の番組並に視聴数を獲得しているのが、FOD限定のオリジナルフェイクドキュメンタリー「Virgins(ヴァージンズ)~ハジメテに乱れる女たち~」だ。
「『Virgins』は15分程の尺なので、スマホでもサクッと観れてしまうのがウケているようです。『+7(プラスセブン)※』の月9ドラマなどに番宣を入れている効果もあると思うのですが、月9の視聴者と非常に相性がいい作品なんでしょうね。ただ、視聴者動向を見ると、放送でFODを認知する方が多いので、やっぱりテレビの影響力は本当に大きいと痛感します」
※+7(プラスセブン)…ドラマやバラエティ番組を放送終了後最大7日間、インターネットで無料視聴できるサービス
■テレビ放送と書籍の相乗効果をFODが後押し
FODが好調な背景にはテレビの影響が大きいとのことだが、テレビ放送による恩恵は、書籍にもあると野村氏はこう続けた。
「フジテレビでも他局でも、ドラマ化や映画化された書籍やマンガはよく読まれます。進撃の巨人や半沢直樹も放送をきっかけに書籍がヒットしていますが、FODで一番反響が高かったのが、テレビ朝日放送の『アメトーーク! 』キングダム芸人の回で、放送後に書店の在庫がなくなるという現象が起き、ユーザーが電子書籍に流れてきたため、FODでも大量に購入されました」
2015年2月2日にコミック配信を開始。40,000タイトル、150,000冊超の規模を揃える
スマホの普及率が70%にものぼる昨今、スマホの画面上ではゲームやSNSのみならず、音楽、動画、書籍といったさまざまなコンテンツが時間の取り合いが発生していると野村氏は語る。動画配信のみならず、その先のユーザー動向を読み書籍も販売するという手法は、FODならではの特徴と言える。
「実は以前、フジテレビでもフジテレビBOOKSという電子書籍配信サービスを運営していたのですが、その事業をFODの中に再構築したことで、FOD会員資源を最大限活用することができました。FODで書籍を取り扱うまでは、いくらヒット作を放送しても書店に流れるユーザーからは何の収益も得られませんでしたから、一本化できたことで、取りこぼしなくユーザーを囲い込めたと思います。なにより他局で話題になった作品を読みたくてFODを利用してくださるのはオイシイですね。FODの書籍はテレビ好きな人とのマッチングが非常に良いことがわかりました」
■FODプレミアム開始で会員増加中
フジテレビでは8月より新サービスとしてFODプレミアムが開始された。FODではこれまでTVOD(Transactional Video On Demand=都度課金型動画配信)を中心に展開してきたが、ここにきてSVOD(Subscription Video on Demand=定額制動画配信)、ADVOD(Advertising Video On Demand:無料動画配信)など複数の動画視聴形態を組み合わせたサービスの提供に、本格的に乗り出し始めたのだ。それには、どんな理由があったのだろうか。
「第一に、FODをご利用いただいているみなさまのライフスタイルにあわせた利用を優先した取組みではあるのですが、真の狙いはFODの会員獲得にあります。たった888円で、ほぼすべてのフジテレビ作品が見放題となるサービスです。TVODでは視聴しにくかったバラエティはもちろん、新旧問わずドラマをラインナップ化していますし、フジテレビ作品だけでなく、洋画、邦画、海外ドラマ、アニメ、ドキュメンタリーなどを大量に外部調達しているのも特徴です。また、動画以外にも78誌の雑誌の最新号が読み放題というサービスも会員特典として付いてきますから、これは見逃せないはずです」
(FODと他社サービスの比較)
888円というフジテレビならではの価格設定もさることながら、早期に有料会員数100万人突破を目指し開始されたFODプレミアムの動向は、競合他社も目が離せないだろう。安価でサービス満点なFODプレミアム、その会員数は日々100万人へと近づいている。
[vol.1]若者ニーズを熟知!フジテレビオンデマンド仕掛け人にインタビュー
――フジテレビオンデマンド事業執行責任者 フジテレビジョン コンテンツ事業局副部長 野村 和生氏のプロフィール
中央大学法学部卒業後、NTT北海道移動通信網(現NTTドコモ)に入社。ワンセグの企画などを担当したのち2005年よりフジテレビ入社。モバイルサイトプロデューサー、CSスポーツ編成、ゲームプロデューサーを経て2012年より現職。同時にインターネットオリジナル番組「めちゃ×2ユルんでるッ!」「めちゃ×2タメしてるッ!」のプロデューサーも務める。
座右の銘は“為せば成る”。
仕事で大切にしているのは直感。愛読家として有名で、欠かさず読むのは「週刊SPA!」、最近読んだのは北方謙三の「水滸伝」「楊令伝」。大のコミック好きでも知られ、15分に1冊のペースで読破する。よく見るのはFacebook、Twitter、Yahoo!、食べログ、Retty、Netflix、Hulu、NHKオンデマンドなど。