テレビとネットの「今」を考える~地上波は最大公約数、ネットは最小公倍数をターゲットに[シェイク!Vol.14]レポート
編集部
業界関係者が集う熱いトークセッション「シェイク!Vol.14」が、11月27日に株式会社IPGの本社(東京都中央区築地)にて開催。今回のテーマは「今」で、2017年最後の開催に相応しい豪華な顔ぶれとなった。
モデレーターには、時代につれて変遷する「今」をタイムリーに感じ取ってきた、元吉本興業の広報責任者であり、現在は株式会社モダン・ボーイズCOO、謝罪マスター、著述家として活躍する竹中功氏、放送局はテレビだけではない「今」の形として、FOD(フジテレビオンデマンド)に携わるフジテレビ 総合事業局 コンテンツ事業センター コンテンツデザイン部 部長職 野村和生氏、そして、「今」日本で最大のコミュケーションツールとなっているLINEで、斬新なコンテンツを世に送り出すLINE株式会社 チーフプロデューサー 谷口マサト氏の3名だ。
■制作側の意図は関係ない!選択権は視聴者にある
“Master of 謝罪”の異名を持つ竹中氏より、「最近、謝罪したことは?」という話題から、世間を賑わす様々なニュースが上げられ、“クレーム”について語られた。今から20~30年前、吉本興業にいた頃、お笑い番組の苦情で「面白くない!」と抗議してきた視聴者に対し、「ほんならチャンネル替えろ!」と言い返したことがあるとし、「今の時代、テレビやインターネット、動画配信、スマホ、見るものがいっぱいあるけれど、何を見るかは視聴者の自由。そこには制作側の意図など関係ない」と発言。だからこそ、「視聴者の視点を重視したコンテンツ制作が重要ではないか」と伝えられた。
これを受け野村氏は、最近のFODの取組みとして、人気お笑いコンビ・スピードワゴンがMCを務めるオリジナルバラエティ番組『スクールジャック!!』の生配信を例に挙げ、「今の制作は尺に合わせるために編集に手間をかけがちだけど、台本はもちろん、面白い画を撮ることに注力しています。ドラマもですが、テロップを入れなくても理解できる面白い番組を制作したい」と述べた。
■ライブコマースからもわかる、インターネットの距離の近さと速さ
Web業界では、「今」何が流行かに話題が移ると、谷口氏は「ライブコマース」が人気と発言。ライブコマースとは、ECにライブ配信の動画を掛け合わせたもので、ライブ動画を見ながら商品を購入できるような通販の形。「何でコレが売れるんだろう? と思うようなものもありますが、ネットの性質上、相手との距離がものすごく近くに感じるため購買欲が湧く」と。また、それぞれのマスメディアの特徴を次のように指摘。「ラジオはあなたへ届けるもの、テレビはみんなに届けられるもの、ネットは居酒屋で隣の席に座っているくらい近い感覚になるもの」と表現し、「ネットは距離間の近さと時間(やり取り)の速さが魅力である」と続けた。
このライブコマース、言うならばWebの通販番組のようなものなのだが、仮にテレビでライブコマースをするとなれば、よくあるテレビショッピングになってしまう一方、販売数も見込めない。これに対し野村氏は、「地上波は最大公約数を狙って作られるものであり、ネットは最小公倍数をターゲティングすることでユーザーとのマッチング率が上がる」。谷口氏もこの秋、自身が企画した最新JK用語で1日を再現した3分動画『ワンチャンワンドキ!JK用語でJKの1日を再現してみた』を公開し、その反響の大きさから、野村氏の発言には納得の様子だった。(※「ワンチャンワンドキ!JK用語でJKの1日を再現してみた」YouTube公式チャンネルより↓↓)
■“視聴者視点”と“テレビ的”にこだわらないコンテンツ制作がサバイブの鍵
最後に竹中氏から、テレビにしてもネットにしても「今」、制作側が考えなければならないのは、「視聴者視点」を重視すること。それには「企画力とコンテンツ制作能力が一番大事」と伝えられた。ただ、テレビに関して言えば、「これだけの伝統と信頼のあるメディアは他にはないからこそ、テレビの特性でもある“生放送”にもっと力を入れてほしいという思いがある一方、“テレビ的”なことにこだわるのはやめて、若い才能を育てたり、テレビのことにあまり詳しくないWebの人たちがコンテンツ作りをするっていうのもありかもしれない」と提言。「業界にこだわらず、もっとみんなで考えれば、新たなマーケットがきっと見つかるのではないか」とまとめ、トークセッションは終了した。