「CEATEC JAPAN 2017」から見えたライフスタイルとテレビとの“新たな関係性 ”
IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志
2017年10月3日から7日まで、千葉県千葉市にある幕張メッセで総合展示会「CEATEC JAPAN 2017」が開催されました。最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会から2016年にCPS(サイバーフィジカルシステム)とIoT(もののインターネット)を中心とした総合展示会に移行したこともあり、以前にはよく見られたテレビ関連の最新技術動向があまり見られなくなってしまいました。
しかし一方で、若者を中心とした最近のテレビ視聴動向なども踏まえて、我々のライフスタイルとテレビとの新たな関係性を紡ぎ出すような取り組みも垣間見られました。そこで、最新の製品動向も含めて紹介したいと思います。
■シャープから「8Kテレビ」がついに登場
テレビ関連の展示で最も来場者の注目を集めていたのが、シャープの8Kテレビでした。現行のテレビ放送の16倍(縦横各4倍)の解像度を持つ「8Kスーパーハイビジョン」の試験放送はすでにスタートしており、2018年12月には本放送がスタートする予定になっています。それに先駆けて、シャープが70インチの8Kテレビ「AQUOS 8K LC-70X500」を発表しました。
予想実勢価格は100万円前後と決して安くはないですが、6月に同社が発売した業務用の70インチ8Kディスプレイの約800万円に比べると大幅に低価格化しています。決して手に届かない価格ではないということもあってか、多くの人がその映像のクオリティーをつぶさにチェックしているように感じました。
8Kスーパーハイビジョンの魅力は解像度がアップしたことによる精細感の向上だけにとどまりません。暗闇の中にあるわずかな光の濃淡、木漏れ日のような光のきらめきといったコントラスト表現がより豊かになり、再現できる色の範囲も大幅に広がりました。これによって、目の前にある映像は決して3Dではないのにもかかわらず、まるで3D映像かのように立体的に見えてくるのが不思議なものです。近いうちに家電量販店の店頭にも並ぶと思いますので、興味のある人はぜひ自分の目で確かめてみてほしいと思います。
■「Hybridcast Connect X」で臨場感あふれるテレビ体験
最近は、「若者のテレビ離れ」などと言われるようになりました。外出先でスマホを使ってワンセグなどを見る人、録画した番組を遠隔再生する人などもいるため一概には言えませんが、YouTubeやニコニコ生放送などのインターネット配信を視聴する人も多く、「リビングでのテレビ視聴」という機会は確かに減ってきているのかもしれません。
そんな中でリビングならでは、大画面テレビならではのテレビの楽しみ方を提案する展示が注目を集めていました。それが「Hybridcast Connect X」です。これはテレビとスマホのアプリ、IoT機器などとの連携機能をスマホ上に実現するというもの。
デモでは、サッカー中継を例に挙げて紹介していました。応援しているチームが得点すると、その瞬間にLED照明が赤く点滅し、テレビの下に置いてあるロボットも喜びのガッツポーズを見せます。スマホやタブレットでチームや選手の情報を見ながら、またはツイッターで応援や感想などをツイートしながら楽しむというのも一つの楽しみ方ではあります。しかし、照明やロボットも一緒に応援することで、スタジアムには行けなくても臨場感のある観戦体験ができそうです。
■今後はスマートスピーカーやロボットがテレビのお供に?
CEATEC JAPAN 2017開催期間中に、LINEから「Clova WAVE」、Googleからは「Google Home」と、スマートスピーカーが続々と登場しました。これらは会場に展示されていなかったようですが、テレビを含めたさまざまな機器を連携するコントロールセンターとして注目を集めています。
CEATEC JAPAN会場でも、リビングのハブになるようなスマートスピーカーやコミュニケーションロボットが展示されていたので紹介したいと思います。
まずは東芝が北米で12月の発売を予定しているスマートスピーカーです。こちらはClova WAVE、Google Homeとは違い、アマゾンのAIアシスタント「Alexa(アレクサ)」を採用したもの。現状ではAlexaがまだ日本に進出していないため日本での発売は未定ですが、発売されればさまざまな対応機器を音声コントロールできるようになります。テレビも含めてどれだけの機器が操作できるようになるのかは不明ですが、Clova WAVEのように赤外線を使って家電をコントロールできる機器も登場するのではないかと思います。
日本レイトロンのブースで展示していたコミュニケーションロボット「Chapit」もなかなかのものでした。こちらは同社が開発した雑音に強く認識率の高い音声認識エンジン「VoiceMagic」を搭載しており、雑音の多い会場内でも「テレビを付けて・消して」、「カーテンを開けて・閉めて」といった音声コマンドに難なく反応していました。
スマートスピーカーやコミュニケーションロボットは「未来の機器」と思われる方もいるかもしれません。しかし、日本は世界にも類を見ない超高齢社会に突き進んでいます。こうした機器があれば、テレビの音声を手元で聞きながら、小さな声にも反応して音声だけでテレビのオン・オフやチャンネル変更、音量調整、さらには照明のオン・オフからさまざまな家電のコントロールまでできるようになります。デジタル機器に興味のある若年層ではなく、シニア層にこそ活用の機会が広がるのではないかと改めて感じました。