NEC、制作~送出まで「セキュアな次世代放送IP基盤」を検証するためのMoIPラボを放送局向けに開設
編集部
MoIPラボ概要図
日本電気株式会社(以下、NEC)は、放送局が「マスターシステムおよびサブシステムを始めとした放送局の各システムとの相互接続検証」や「他拠点やクラウド環境との接続検証」、「ネットワーク負荷試験やロングランテスト」、「セキュリティ検証」などのMedia over IP(MoIP)に関わる各種検証を行うことができる設備として府中事業場にMoIPラボを開設した。


■背景
現在、放送基幹設備のIP化はサブシステム単位で導入が進んでいる。放送局内の複数システムのインフラ基盤となるMoIPインフラは、国の重要インフラである放送を支える共通基盤であり、セキュアで可用性が高いネットワークでなければならない。MoIPインフラの構築においては、「可用性」「安全性」「柔軟性」の観点で十分に事前検証を行うことが重要となる。
▼可用性
24時間365日稼働を前提とした設計と事前検証による高可用性の実現が求められる。実運用に近い環境を用いて、「ネットワーク負荷試験やロングランテスト」をサブシステムも含めて行うことが重要。また、事前にネットワークおよび接続する機材の同期精度を検証することも求められる。
▼安全性
「放送設備サイバー攻撃対策ガイドライン」に対応する十分なセキュリティ対策による安全性の確保が必要。高可用性が求められ、高品質で伝送容量の大きいデータを扱う放送設備においては、ITシステムと同様のセキュリティ対策の適用が困難な場合がある。そのため、放送設備に適した「セキュリティ検証」を行い、安全性を確保することが重要となる。
▼柔軟性
放送局内のサブシステムは、それぞれ構築ベンダーが異なることが想定されるため、各サブシステムの特性を理解した設計と「マルチベンダーでの相互接続検証」による柔軟性の確保が重要。また、将来の放送設備集約化やワークフローの変革に合わせて、柔軟に基盤を拡張できるとともに他拠点との接続によるリモート監視やクラウド接続などに対応することが求められる。
■ラボ活用例
▼放送局とのPoC実施
次世代放送設備の検討における実証実験の場として活用できる。実証実験内容によっては、複数の協力ベンダーと連携しながら、検証を実施することも可能。
<PoCの例>
・異なるネットワーク構成の同期精度の比較とロングランテスト
・遠隔地拠点からのシステム運用監視
・クラウドシステムとの相互接続
▼放送局の持ち込み機材接続検証
放送局内で使用予定の機材などを持ち込み、接続検証を行うことができる。事前に接続検証を十分行うことで、導入時のトラブルを最小化することができる。
▼放送局向けデモの実施
NEC MoIPラボに放送局を招き、MoIPに係るデモを実施する。MoIPの監視ソリューションやNECのマスターシステムを含めたデモを確認できる。
■今後の展開
今後も複数のネットワークスイッチの検証や他ベンダーとの接続検証、マルチクラウド対応、複数の拠点間接続を行い、検証環境を順次拡大していくとともに、放送局内IP化の検討推進、IP化の懸念点解消、放送ネットワーク人材育成などの場として活用してもらうことを目指すという。