リサーチデータは広げて連結させる時代に! 「実践広告スキルアップセミナー」レポート
編集部
東京広告協会による「実践広告スキルアップセミナー」が、7月12、13日と2日間にわたってコートヤード・マリオット 銀座東武ホテルで開催された。
このセミナーのガイダンスでもある“オーディエンスインサイトから見たメディア変化のダイナミズム”は前回レポートした通りだが、続いて株式会社電通の野田大樹氏による“データの整備・充実化と効果的な使用/マスメディアにおけるデジタルとの連携強化へのソリューション”というセミナーが行われた。
メディア・マーケターとしてメディア・プランニング、メディア・リサーチなどの領域で活躍している野田氏が、テレビとデジタルの連携を強化することの重要さを説いたセミナーの概略を紹介する。
■サンプリングデータとマシンログデータの長所と短所を理解する
マーケットリサーチのデータは、大別して「サンプリングデータ」と「マシンログデータ」がある。サンプリングデータは、その名の通りサンプリングを行うため、精度の差があったとしてもある程度の代表性を持つ領域のデータとなる。一方のマシンログデータは、データ量が圧倒的でプロットも多く頻度も高いが、偏ったデータになることも多いという特徴がある。
これらのデータについて野田氏は、「どちらもデータとして語られる領域ではありますが、扱い方が異なるということを最初に考えるべきです。ポイントの置き方はさまざまで、どちらにも長所と短所があることを理解する必要があります」と解説。
そして、まずメディア接触を測るデータとして、アスキングによりカバーする領域を広げやすいサンプリングデータを取り上げた。「メディア接触に関するサンプリングデータの現状は、主にデジタルを組み合わせて測る多メディア測定、購買動向などのプロフィールリッチ化、センシングや生体反応を使った接触の質を上げること、といった方向に進んでいます」
加えて、サンプル数を増やすこと、精度や代表性を上げること、速報性を持たせることも求められていると言う。
■米国では、視聴率測定に大きな変化が始まっている
さらに、米国における視聴率測定の動向についても紹介。ニールセンはトータル・オーディエンス視聴率の整理を進めており、テレビ番組とCMがパッケージとして捉えられてる場合と組合せが変わる場合に大別。主に地上波のコンテンツにデジタル動画番組を加えたものがTCR(トータル・コンテンツ視聴率)、そして地上波CMにデジタル広告(バナーや動画)を加えたものをTAR(トータル広告視聴率)としてサービスを展開していると整理を紹介した。
野田氏はまた、「かなりトータルな形で、テレビとデジタルをかけ合わせて測定しようという、網羅的な動きが出てきています」と指摘する。
一方でケーブルSTB(Set Top Box)やサードパーティのデータを組み合わせ、マシンログデータ的な独自の視聴データを作成する動きに触れ、「米国の方でも、かなり大きな動きが起きている感じです」と、今後も動向に注視が必要だと訴えた。
■VR CUBICとSTADIA、それぞれの特性
このような流れの中で野田氏は、マーケティングやプランニング用のデータとして、SSP(シングルソースパネル)は何ができるのかを、VR CUBIC(株式会社ビデオリサーチ)を例に挙げて次のように解説する。
「最近のSSPは、メディア接触をメータで捕捉し、さらにアスキング調査で補完するという、かなりきめ細かいところまで進んでいます」
加えて、マシンログデータ側からのアプローチとして、今年3月に正式版がリリースされたSTADIA(スタジア:株式会社電通)を取り上げた。
STADIAは統合マーケティングプラットフォームで、テレビの実視聴ログデータとデジタル広告配信の連携を強化させるものだ。テレビとデジタルの連携・橋渡しを行うツールで、認知/想起→興味→好意→購買のマーケティングファネルのスムーズな速度を作り出す。
同サービスを活用した広告配信は、①視聴ログの収集、②広告配信対象者を抽出、③ウェブ広告を配信、④効果検証・分析のサイクルで、テレビ視聴後、ダイレクトにデジタル上の実広告配信を行うことを可能とするものだと言う。
このSTADIAでは、「広告配信、あるいは検証といったところで、新しいデータに対するアプローチができるものです」と野田氏は語った。
■データ連携を積極的に進めることが重要になる
以上のような実例を挙げ、セミナーのまとめとして「現在のマーケターに求められる視点は、事実マーケティング(ログ解析)に、確率マーケティング(アンケート調査)の結果を乗せるオンオフ統合」「センサス内パネル戦略」といった今後の道筋を示した野田氏。
「テレビから起点を発して、ネット、モバイル、ECへとデータを広げデータを扱っていくアプローチもあれば、いろんな領域で個別に取られるデータを連結させていく動きも増えてくると考えています。データの連結を積極的に進めて、より確度の高いPDCAや施策につなげていって欲しいと思います」と今後の展望を語り、セミナーを締めくくった。