仙台放送がアジア最大級の医療・福祉機器展に出展 担当者が語る背景と展望
編集部
株式会社仙台放送 ニュービジネス事業部 部長・太田 茂氏(右)、同事業部プロデューサー・工藤理子氏(左)
宮城県を放送地域とするフジテレビ系列の仙台放送が、東北大学大学院医学系研究科と共同で、緑内障の早期発見に寄与できるゲーム「METEOR BLASTER(メテオブラスター)VR」を開発。2023年8月16日~18日、タイ・バンコクで開催されたアジア最大級の医療・福祉機器展示会「Medlab Asia (メドラボ・アジア)2023」に出展した。
これまでも同局では、交通事故の多発に関する報道をきっかけに「運転技能向上トレーニング・アプリ」を東北大学加齢医学研究所と共同開発。報道で取り上げた課題を起点としたアプリ開発を通じて社会貢献を図り、注目を集めている。
本記事では、株式会社仙台放送 ニュービジネス事業部 部長・太田 茂氏と、同事業部プロデューサー・工藤理子氏にインタビュー。アプリ開発、出展の経緯から今後の取り組みまでを伺う。
■アジア最大級の医療・福祉機器展示会に「ゲームで緑内障リスク判断」アプリを出展
──「Medlab Asia」とは、どのような展示会なのでしょうか。
工藤氏:「Medlab Asia」は、タイ・バンコクで毎年開催されているアジア最大級の医療・福祉機器展示会です。今年は世界から200社を超える企業が集まり、最新の医療機器や検査サービスなどのブースを出展しました。
日本貿易振興機構(JETRO)によれば、タイの高齢化率は周辺国より35年も早くピークを迎えるとされています。高齢化が進み、ヘルスケア分野への需要が高まるタイへの販路拡大を目指そうと、出展社、来訪者どちらもさまざまな国籍の方が集まっており、国際色豊かなイベントという印象を受けました。
──今回出展した「METETOR BLASTER VR」は、どのようなアプリなのでしょうか。
太田氏:「METETOR BLASTER VR」は、東北大学と仙台放送が共同開発し、特許を取得した「緑内障の早期発見に寄与するアプリ」です。わずか数分間ゲームをプレイするだけで、緑内障のリスクの有無を判定することができます。
■世界共通の課題「緑内障早期発見」に“日本発のソリューション”をアピール
──出展を決められた背景についてお聞かせください。
太田氏:人生100年時代と言いますが、眼球の健康寿命は70年を超えられないという研究結果が報告されていると聞きました。目の病気をいかに早期発見するかは、高齢化社会におけるQOL維持に直結する問題です。特に緑内障は完治が難しい病であることから、いかに早く発見し、治療を開始できるかがカギとなります。
「緑内障の早期発見」というテーマは、高齢化が進む日本のみならず、いまやアジア各国、世界共通の社会課題です。この流れにいちはやく対応し、日本発のソリューションの可能性を各国の医療関係者や研究者に広く認知してもらうべく、今回、仙台市の協力を得て「Medlab Asia 2023」へ出展を決めました。
■「日本のテレビ局が出展」に驚きの声、緑内障患者が多い国の医療関係者から高い評価
──医療メーカーが中心となる展示会に日本のテレビ局が出展するのは異例のことであったと思います。会場ではどのような反響がありましたか。
工藤氏:日本のテレビ局が出展しているということに対して驚きの声が多く聞かれましたが、全般的に深く興味を持っていただけたように思います。体験された方からは「Interesting!」「funny!」と感嘆の言葉を多くいただくなど、非常に好意的に受け止めていただいた印象です。
──体験者の方は、どのような点に関心を持たれていましたか。
工藤氏:多くの方はゲーム性の部分に大きな関心を持たれていました。「緑内障早期発見」の視点で体験された方々からは、価格や使用場所など、実際の活用に向けた具体的な質問を受ける場面もありました。特に緑内障患者が多いとされるシンガポールで医療機器販売を担当されている方からは「METEOR BLASTER VR」の必要性を高く評価していただくなど、手応えとしては十二分であったと感じています。
■今秋「Japan Mobility Show」に放送局として初出展。“交通事故半減”のSDGsに訴求
──今回の出展を経て、次にどのような展開を予定されていますか?
太田氏:2023年10月28日から東京ビッグサイトで開催される「Japan Mobility Show 2023」(旧・東京モーターショー)の次世代モビリティ部門にて、日本生命と共同出展することになりました。放送局としては、初めての出展であると聞いています。期間中は約130万人の来場者が見込まれるとのことで、この機会に「METETOR BLASTER VR」をより多くの方にご体験いただきたいと考えています。
緑内障による視野の狭窄は、交通事故の要因にもなっているとも指摘されています。SDGs には「世界の交通事故による死傷者を半減させる」という目標がありますが、「METETOR BLASTER VR」がさまざまな社会課題の解決につながるソリューションとなることを目指し、さらに機能の拡張を目指していきたいと思います。