ディスプレイが映像表現を変える?8K、シースルー、XR、空中表示ほか「CEATEC 2019」レポート
IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志
2019年10月15日から4日間にかけて、あらゆる産業・業種による「CPS(サイバーフィジカルシステム)/IoT(もののインターネット)」と「共創」を軸にビジネス創出を図る展示会「CEATEC 2019」が開催された。経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指すというのがテーマになっており、ここ数年は「家電やITの最新技術をお披露目する総合展示会」という枠から大きく広がり始めている状況だ。
このCEATECにおいては、これまで新しく発表されたテレビ受像機などを中心に紹介してきたが、今年は“ディスプレイ”に焦点をあて、CEATEC2019をレポートする。
■シースルーディスプレイが「サイネージ」を変える?
シャープブースでは、AIとIoTを組み合わせた「AIoT家電」によって実現する「スマートライフ」を提案していたが、それをアピールする「デジタルサイネージ(デジタル看板)」として活躍していたのが「90V型シースルーディスプレイ」だった。
90V型シースルーディスプレイは90インチもの大きなショーウィンドウの手前にさまざまな情報を表示できるというもの。オフ時に透明になるノーマリーホワイトタイプと、オフ時にブラックになるノーマリーブラックタイプの2種類を用意。より透過性の高いノーマリーホワイトタイプはブランド品などデザイン性の高い商品の訴求に向いており、ノーマリーブラックタイプは商品を隠したり見せたりと、よりインパクトの高い見せ方をしたい場合に向いているとのことだった。
シャープブースではそのほかに8K液晶ディスプレイでは世界最大級となる120V型8K液晶ディスプレイ、狭額縁4Kディスプレイを4台組み合わせることで120インチ8K相当の表示が可能な60V型4Kインフォメーションディスプレイを展示していた。
縦横4台ずつの計16台を組み合わせれば240型16K相当のディスプレイになるため、パブリックビューイングなどにも用いることができるという。
■MicroLEDディスプレイはポスト・有機ELになるのか
京セラのブースでは、次世代ディスプレイ技術のMicro LEDディスプレイを展示していた。LEDディスプレイというとLEDバックライトの液晶ディスプレイと勘違いされるかもしれないが、それとは全く異なる。これはLEDをバックライトとしてではなく、R(赤)G(緑)B(青)3原色の超小型LEDを敷き詰めて発光させることで、有機ELのように自発光デバイスとして用いるというものだ。
液晶テレビが有機ELテレビより明るいように、有機ELディスプレイよりも高輝度を実現でき、さらに有機ELよりも長寿命という特徴もあるという。
3原色のLEDを敷き詰めたディスプレイといえばソニーの「Crystal LED」というのが数年前に発表されたが、「Crystal LEDは約1mmピッチなのに対し、約200ppi(ピクセル・パー・インチ)とより高精細を実現できるのが特徴です」と担当者は語っていた。
現在は約1.8インチと小型だが、今後10インチサイズを目指すという。大型化については、10インチサイズを複数組み合わせて敷き詰めることで対応できるとのことだった。
■XR(VR/AR/MR)や空中表示ディスプレイが映像表現を変える
CEATECに限らず、最近さまざまな展示会で見かけるようになったのが「xR」(XReality=VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の総称)による新たな楽しみ方の提案や、xRによる展示だった。
au(KDDI)のブースでは、スマートフォンなどのカメラで撮影したスポーツ選手の映像から手や足の指先を含む骨格点65点の動きを認識する「スポーツ行動認識AI」と、センサー内蔵型ボールから取得したIoTデータを活用して選手の技術向上に役立てる「行動認識AI × IoT」、臨場感のある映像を同時に体験できる「VR同時視聴システム」などを展示していた。
そのほか、Nreal社が開発したスマートグラス「NrealLight」は、スマートフォンとUSB-Type Cケーブルで接続して使用できるスマートグラスを使った「AR Museum」の展示や、スマートフォンのディスプレイを見ながら対戦するARシューティングゲームの体験ブースなども用意されていた。
三菱電機のブースでは、ARと音声認識を組み合わせた「空中しゃべり描き」のデモを行っていた。これはタブレット(やスマートフォン)のマイクに向けて言葉を発し、画面を見ながら空中になぞり描きすると、文字を絵のように描けるというものだ。
デモでは約15cm先に描けるようになっており、タブレットを近付けても遠ざけても、ほぼ同じ場所に表示され続けるのが不思議な感覚だった。ARはさまざまなアプリで活用されており、より自由な使い方ができるようになっていくことだろう。
同社のブースでは、空中に映像を表示する「大型空中表示サイネージ」も展示していた。案内表示やアミューズメント施設向けの空中映像表示などを目的にしたものだ。
新光商事のブースで展示していた「空中ディスプレイ」は特殊なミラーとレンズを用いることで、反射させた映像を空中に結像させるというもの。タッチセンサーを利用して空中でのタッチ(のような)操作が可能になっており、映像表現の幅の広がりを感じさせるものだった。