「ハイコネ」を拡張した各局の最新技術が集結【Connected Media Tokyo 2019】
編集部
2019年6月12日~14日、幕張メッセ(千葉県)においてデジタルメディアビジネスの総合イベント「Connected Media Tokyo 2019」が開催された。本項では、最新の放送サービスや技術的な取り組みを紹介する展示コーナー「Broad Cast Innovation」の各ブースを前後編に分けて紹介する。「Broad Cast Innovation」では、今回新たにテレビとスマホの連携による新しいサービスを楽しめるアプリ「※Hybridcast Connect(ハイコネ)」(※IPTVフォーラムの 「ハイブリッドキャスト運用規定」 に準拠したアプリケーション)関連の展示を主軸としたことから“ハイコネパビリオン”と命名し、各社、その取組みを展示した。前編となる今回は、スマホ起点でテレビを楽しむ放送各局の最新技術、ならびにサービスイメージをレポートしたい。
■スマホ起点でテレビを楽しむ放送各局の取組み
放送局や受信機メーカーを問わずサービスを利用できる共通コンパニオンアプリ「Hybridcast Connect (ハイコネ)」 は、放送・通信の連携によるテレビサービス “ハイブリッドキャスト”を楽しむためのアプリケーションだ。これまでは、テレビ番組に関連した詳しい情報をスマホで確認したり、クイズやプレゼントキャンペーンへの参加といった利用法が主だったが、さらなる開発・規格化が進み、スマホからテレビをONにして目的のチャンネルを映したり、同時配信されている4K動画の視聴にも対応できるようになった。以下が、各局の取組みとなる。
■TBS
TBSは、「ハイコネを用いたローカル局視点での4K動画配信」の検証実験を紹介。従来、ローカル局ではハイブリッドキャストの運用は困難とされてきたが、アプリ(ハイコネ)を搭載したスマホから、データ放送の機能を使わずに、直接ハイブリッドキャストを起動して4K配信動画へ誘導する方法を提案した。担当者によると、本サービスは今年度中にリリース予定で、「テレビ局のコンテンツを簡易に利用できるメリットは大きい」とコメントした。
■フジテレビ
フジテレビは、「日本版ブロードキャスト・インディペンデントアプリ」技術を紹介。現在のハイブリッドキャストアプリは、受信機メーカー共通で動作し、放送通信連携もできるが、放送エリアにしか提供できない。一方、テレビOSアプリは、地域によらず展開できるが、受信機ごとに採用技術が異なり、それぞれにアプリ開発が必要で、放送通信連携もできない。そこでハイコネを活用した日本版ブロードキャスト・インディペンデントアプリ技術を提案し、試験実装を展示した。この技術を用いれば、各地の放送局がハイブリッドキャストアプリを全国展開でき、放送遷移も可能になる。担当者は、「例えば弊社なら、現在のテレビ向けFOD(フジテレビオンデマンド)アプリを受信機メーカー共通で提供できるようになる。放送局共通アプリも実現でき、視聴者・テレビメーカー・放送局それぞれにメリットがある」と標準化提案に向けた手応えを感じていた。
■朝日放送テレビ
朝日放送テレビは、「視聴データとハイブリッドキャストコネクトを活用した実証実験」を展示。インターネットとテレビをつなぐシステムとして、ハイコネアプリとの連携による放送レコメンド機能、災害情報の発信、SNSやアプリ、Webサービスからの放送リソース提供機能を作成し、技術実証実験を行なったものを紹介した。担当者は、「ネット世代にもテレビに接して欲しいという思いから考案した。SNSでは番組の公式アカウントがあるが、登録する人はテレビに興味がある人がほとんど。なので、視聴者自身に情報を発信・拡散してもらえば、これまであまりTVに興味のなかった人にも情報が届き、ワンクリックで視聴が可能になる」と実装に向け期待を寄せた。
■テレビ朝日
テレビ朝日は、「スマホファーストで楽しむ!テレ朝コンテンツ」を紹介。スマホから地上波、BS、CS、キャッチアップ、通販、番組PR、4K動画といった同局のさまざまなコンテンツ・サービスへのアクセスが、ワンタッチでスムーズになったことが展示された。担当者は、「スマホからテレビ操作をスムーズに行えるようになった。プッシュ通知で、テレビ視聴に誘導できる」とコメントした。
■日本テレビ
日本テレビは、「5G時代の簡単・低コストの映像制作システム“ブラウザキャスト”」を紹介。あらゆるPCやスマホで動くウェブブラウザ上で、字幕やテロップのスーパー、外部機器の制御を行い、映像制作ができるシステムを構築。特別なソフトや機器が不要で、OSやデバイスを選ばず、ウェブサイトから操作が可能。HTML/javascriptベースのため、SNS等のウェブサービスとの親和性も高く、ニーズに応じたカスタマイズもできる。利用シーンとして、ライブ配信番組向けの映像制作、構内・館内放送の映像制作、制作支援システム向けの映像制作が想定される。担当者は、「カメラとPCがあれば制作でき、小規模な配信に向いている」とコメントした。
【関連記事】番組制作に役立つ技術、新しいテレビの在り方を提案する『日テク2019』開催
■NHK
NHKでは、個人の視聴ログなどから生活を便利にする「ライフログを活用した放送・ネットの新たなサービス連携」を紹介。昨今、世界的にも視聴ログを含むパーソナルデータの扱いに注目が集まっている。放送技術研究所では、TVとスマホを連携させることができるハイコネの機能を使って、視聴者自身が主体となって視聴ログを管理・活用する仕組みの研究に取り組んでいる。展示では、個人の視聴ログを有効活用した、視聴者の好みや生活行動にあわせた新しいサービス例を紹介した。担当者は、「テレビの前を離れても、視聴した番組の情報を有効に活用していただけるように、視聴ログを本人の意思で取得し、さまざまなサービスと連携させる点が重要であり新しいと思う」と説明した。
【関連記事】高精細VR・没入型・ARなど未来の映像体験が集結~NKH技研公開2019レポート
■エム・データ
エム・データは、TV番組とTVCMの放送内容を独自にテキストデータベース化した「TVメタデータ」サービスについて展示。同社では、関東・中京・関西のテレビ局(地上波)を対象に専門スタッフが24時間365日TVをウォッチ。「いつ、どこで、なにが、どのように、どのくらい」放送されたかを記録し、TVCM出稿内容、TV番組放送内容、TV番組で紹介された商品やスポットといった情報を網羅し、テレビ局はじめ広告代理店、メーカー(広告主)、調査会社など業界ニーズに対応している。担当者は、「現在や過去のトレンドの把握や分析、また、自社・競合社・クライアントのTVでの放送量や放送傾向(ネガティブ、ポジティブ)の把握や分析、未来の予兆の分析も可能。今後は視聴データ連携による“タレントレイティング指標”や、クラウドキャスティングサービス連携によるキャスティング機能も追加予定」とした。
次回、後編では、ハイコネを活用した各社の最新技術、ならびにサービスイメージをレポートする。