MTF2017で見た、テレビ局が導入する最新ツール
編集部
先進的なマーケティングテクノロジーが集結する一大イベント「マーケティング・テクノロジーフェア(MTF)2017」が今年も東京ビッグサイト(2月14日、15日)にて開催。そこで得た、テレビ局の最新マーケティング手法をご紹介しよう。
■事例1:スマホアプリを利用したオウンドメディアの有効活用
TBSでは2016年7月よりスマートフォン向け公式ニュース専用アプリケーション『TBS News i』(TBS ニューズアイ)の配信を開始。1 日のニュースをコンパクトに動画で送る「ニュースダイジェスト」の配信や番組の見どころをキャスターが紹介したり、専門記者によるニュースの真相を解説したりするサービスなどを提供している。
災害や重大ニュースといった情報をテレビより早く、24 時間体制で届けるプッシュ通知機能が搭載されているのが特徴。スマホに即時に通知されることで、「今、何が起こっているのか、どんな状況なのか?」をテレビで確認しようとするユーザーに対し、お知らせできるのはもちろん、外出時でもアプリ上で配信される緊急ライブを視聴できるようになっている。
今回のイベントには、この『TBS News i』の制作に関わったクラウド型アプリプラットフォーム『Yappli(ヤプリ)』を開発したファストメディア株式会社が出展。担当者に話をうかがったところ、「オウンドメディアを運営することで囲い込みを狙うなら、自局アプリを活用し、“手のひらから最短距離のコンテンツ配信”をしていくことは重要」と話している。同社は公式HPでも「最初に知るのはいつもアプリ」とうたっているが、確かにスマートフォン利用時間の約8割をアプリが占めていることからも、アプリでユーザーを囲い込んでいく動きは今後さらに必要になってくるのかもしれない。
プッシュ通知機能によりリピート率をアップさせ、そこからサイトやテレビに誘導させるという動きは、現代のユーザー行動の流れにマッチしているのではなかろうか。
■事例2:最先端のWeb・AI 技術を駆使しテレビに流動
NHKの番組サイト『クローズアップ現代』と『知る楽』のweb制作に携わった株式会社ティファナ・ドットコムも出展。このブースでは、いかにしてユーザーをテレビ視聴に結びつけるかを重視しwebサイトを制作しており、ブースのスタッフに話を聞くことができた。
例えば、正しい情報配信の徹底、過去の放送から情報を有機的に取り出せる検索システムの導入、あらゆるユーザーに対応した音声機能の搭載や文字表示を大小調節できるといった工夫がなされている。そうした細部にまでわたる制作者の意図により、過去に放送された番組の内容を、アーカイブ化された記事でキャッチできたり、放送のプラスアルファの情報を得ることができたりと、「テレビ放送→ネット情報→そして、再びテレビへ」といったサイクルを生むことにも貢献できたのではないかと担当者は語る。
また、昨今は特にAI(人工知能)技術にも力を入れている同社では、Web制作×人工知能(AI)技術を駆使し、少ない労力で最短かつ最大の効果を生み出すソーシャルメディア戦略を提供しているそう。これもまた、テレビへの流動に大きな期待が持てる手法の一つとして考えてみてはどうか。
■事例3:インターネットやメールを介した視聴者との双方向コミュニケーションの実現
日本テレビでは、2009年より株式会社エイジアが提供するメール配信システム「WEBCAS e-mail」およびアンケートシステム「WEBCAS formulator PRO」のクラウド(SaaS)版を利用。「WEBCAS e-mail」は毎時300万通という業界最速レベルの高速配信が可能なうえ、ユーザーの嗜好や属性、購買履歴などに基づいた最適なメールが配信できるOne to Oneメール配信システムが備わっているのが特徴だそう。また、「WEBCAS formulator PRO」のアンケートシステムを利用した、ユーザーが求めるであろう同局の番組情報やお得なプレゼント情報等が受け取れるメールマガジンの配信を行っている。
出展していた株式会社エイジアのブースにお邪魔し担当者にインタビューしたところ、毎年同局で放送される夏の風物詩『24時間テレビ』で実施している「24時間テレビインターネット募金」の協力者への募金結果報告をメール配信で行ったり、Webアンケートを行ったりしたいという要望を受けたことが、同社がサービスを提供したきっかけだったそう。同社では他にもユーザーの声を集めたり、分析したりといった連携サービス等も展開しており、多業種のマーケティングコミュニケーション支援を行っている。
■時代の流れをキャッチし、最先端技術をうまく利用したサービス展開に注目
上記3つのツールをご紹介したが、各局さまざまな手法や技術を柔軟に取り入れながら、きちんとテレビの将来を考えあらゆる施策を行っていることがわかる。最先端技術を製品だけに使用する時代は完全に終わり、アプリケーションやインターネットを介しどんなサービスを展開していくのか、今後の各局の動向にも注目していきたい。