“視聴者をユーザに。”HAROiDが提案する奇想天外の新テレビソリューション
編集部
マーケティング・テクノロジーフェア2017(2月14日、15日 東京ビッグサイト)の2日目に行われたニューテクノロジーセミナー「テレビをソリューションメディア化する」では、テレビを誰かと同時に楽しめるエンターテイメントとし、“視聴者をユーザに。”することを掲げている株式会社HAROiDの取組みについて、同社の事業開発マネージャー吉澤健吾氏よる発表があった。
テレビを起点に視聴者(ユーザ)一人ひとりに直接つながり、長期的かつ継続的な関係を構築しようとする同社の取組みを以下、紹介する。
●テレビのリーチパワー&コンテンツパワーを利用したソリューション
2016年同社は、従来テレビ番組のインタラクティブ企画向けだったソリューションをテレビCMに応用し、大勢の視聴者が同時にスマホやリモコンを操作することで、CM自体が視聴者の参加状況に応じてリアルタイムに変化させることができる「LiVE CM」を開発。9月に放送されたダチョウ倶楽部出演CMの「絶対押すなよ! 氷結(R)ゲット~ダチョウ倶楽部のあの王道ネタにみんなで参加!~」は記憶に新しく、直近の事例としても紹介された。これは熱湯風呂ならぬ氷で覆われた「氷結風呂」の上でダチョウ倶楽部が王道ネタを繰り広げる中、視聴者がCM放映中にキャンペーンサイトにアクセスし氷結風呂の氷をタップで割ることができるというもの。しかもCM放映中「氷結風呂」に参加した視聴者には、先着順でコンビニ(リアル店舗)にて氷結(R)1本を無料で受け取れるといったキャンペーンに連結している。
以前は商品がもらえるというO2O(Onair to Online)までの展開に留まっていたが、今回のように本格的な放送を起点にしたO2O2O(Onair to Online to Offline)が実現したことで、視聴者像から購買活動までをワンストップで取扱えるようになっている。
放送における大量の視聴者の参加に耐えられるスマホ向けシステムの構築、そしてそこからコンビニで商品を入手するという行動へのシームレスな受け渡し……放送から小売&流通へのダイレクトな接着剤を企画できた結果、ユーザ(視聴者)、メーカー、コンビニ、放送局と、関わる全ての人たちがWIN×4と大きなメリットを得ることができた新ソリューションと言えるだろう。
●テレビ番組を連動させた共通ポイントサービス「CHARiN」
また、2016年7月より、同社は日本テレビと、テレビ番組と連動したポイントサービス「CHARiN」を開始。テレビ番組の企画などに参加することでポイントが蓄積され、貯まったポイントは番組グッズやグルメ、旅行など豪華景品といった魅力的なプレゼントへの応募や、さまざまな賞品・ギフト・サービスなどに交換することもできる新サービスだ。従来は番組毎に番組ポイントが発行されたり、スタンプラリーを実施するといった継続視聴(番組CRM)を目的とした取り組みが行われていたが、「CHARiN」ではどの番組で参加しても連動されるため、共通ポイントとして貯めることが可能となった。
吉澤氏によると、視聴者にとって何が便利かを考えたとき、ユーザビリティを最適化し共通ポイントとして蓄積することができれば、それが新規獲得、囲い込み、優良顧客化へと誘導できるという発想から「CHARiN」は生まれたそう。上記以外の具体的な取組みとしては、QRコードで番組にチェックインするとポイントがもらえるという企画や、見れば見るほどポイントが貯まるテレビマイレージキャンペーン、1日1回ルーレットを回せるCHARiNポイントブックや人気アナウンサーを起用したゲームに等、豊富なコンテンツが提供されている。
吉澤氏は「視聴者とのつながりを強化し、継続的な関係を築くために、“お金では買えないもの”をユーザに提供し、ユニークなテレビサービスを展開していくことが、結果的に放送局へのソリューション提供にもなる」と主張した。
●視聴者のユーザ化には可視化が不可欠
“視聴者をユーザに。”をテーマに掲げる同社では、上記以外にもKDDI、BSジャパン、バスキュールと手を組みスマートフォンとテレビを連動させたWebサイト「流星放送局」を2016年12月1日から15日まで開局した。これはリアルタイムで検知した流星をライブ映像で体感したり、ふたご座流星群を楽しもうという企画で、ふたご座流星群が活動ピークを迎えた13日にはBSジャパンで特別番組も生放送された。そこでは、期間中に投稿されたユーザの“流星への願い”を、生放送の画面上で流星のように表示させるといった、今までにない映像・流星体験をユーザに提供し大きな反響を呼んだ。
最後に吉澤氏から、進むTVのIoT化や動画配信、さらには放送の同時送信時代を見据えた放送局のデジタルマーケティングや新規ビジネスモデルの開発を推進し、視聴体験をアップデートする放送局向けのプライベートDMP「HAROiD DMP」を同社で2016年11月より開始されたことが告げられた。今回セミナーでも発表されたLiVE CM、CHARiN、流星放送局といった取組みからもわかるように、同社では今後さらに“視聴者の見える化(可視化)”をバックアップしていく方針だ。
テレビを見るだけの「視聴者」はもはやオールドメディアの考えで、テレビ×インターネット、テレビ×スマホorタブレットといったセカンドorサードスクリーンとの連動を主とする現代メディアでは、「ユーザ」という呼称がまさに当てはまる。セミナー受講を終え、ますます同社の新しいマーケティングならびに新テレビソリューションからは目が離せないと感じた。