Screens独占取材!池上無双のライブ&見逃し配信化に迫る
編集部
相手が首相だろうと誰であろうと、視聴者目線で聞きたいことは聞く――今や選挙特番と言えば“池上無双”でおなじみの池上彰氏。彼が出演するテレビ東京の番組は、今年7月の参院選でも民放トップの高視聴率を獲得している。その話題性の高さから、放送後数日間はマスコミでも取り上げられ、ネット上でも大いに盛り上がりを見せたのは記憶に新しい。
テレビ東京でも特に力を入れている池上彰氏の選挙特番だが、今回はテレビ放映と同時にテレビ東京ビジネスオンデマンドでの生放送配信も決行した。テレビ東京ビジネスオンデマンドとは、選挙特番を配信することにどんな効果が期待できるのか、そしてこれからのテレビはどうなっていくのかを、テレビ東京 コンテンツビジネス局次長 兼 ビジネス開発担当 齊藤直宏氏に聞いてきた。
■テレビ東京がビジネスオンデマンドで選挙特番を配信する2つの理由
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写真:テレビ東京 コンテンツビジネス局次長 兼 ビジネス開発担当 齊藤直宏氏
テレビ東京では、人気の『WBS』『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『未来世紀ジパング』『Newsモーニングサテライト』『Mプラス11』など、経済番組を中心に月額500円(税別)で配信サービスを展開している。PC、スマートフォン、タブレットなどで視聴可能なため、テレビ東京系列の放送がない地域の人でも番組を楽むことができる。
そんな中、2016年7月10日にテレビ東京で放映された「池上彰の参院選ライブ」をビジネスオンデマンド上でライブ配信、ならびに10日間の見逃し配信を行ったのは、初めての試みだった。なぜテレビ東京では前代未聞の生放送&キャッチアップ配信施策をとったのか。
「池上さんの選挙特番は知名度が高いので、ビジネスオンデマンドの知名度を上げて会員を増やすことができると思いました」
齊藤氏によると、今回の配信施策には二つの理由があるという。一つは、ビジネスオンデマンドの知名度を上げて会員を増やすこと。もう一つは、テレビ東京系列の放送がない地域の人たちや、放送時間に何らかの理由で放送が見られない人からの要望が今回の配信につながったという。
■テレビ東京初の試み。選挙特番のライブ&キャッチアップ配信の成果は!?
テレビ東京ビジネスオンデマンドを担当する齊藤氏のチームでは、今年7月の参院選に向けて、昨年の秋くらいから選挙特番をビジネスオンデマンドでも配信できないかという話が出始めていた。けれど実際にGOサインが出たのは今年の5月に入ってから。そこから約2ヵ月という短い期間で準備が始まった。
「7月10日の参院選ライブをより楽しんでもらうために、一週前に放送した『池上彰の選挙に行こう!~参院選ライブ1週間前SP~』は10日の放送直前まで無料で配信する施策を取りました」
齊藤氏によると、7月3日に放送した『池上彰の選挙に行こう!~参院選ライブ1週間前SP~』については、7月10日の参院選ライブの告知も含めてビジネスオンデマンドだけでなく、TVer、GYAO、ニコニコ動画など各媒体で無料配信を行う「ネットもテレ東キャンペーン」でも配信したそう。それも手伝ってか、『ガイアの夜明け』や『カンブリア宮殿』など人気番組の3~4倍の視聴数を参院選ライブでは獲得したという。
「配信がテレビの視聴率にどう影響したかなど、そういったデータは取れないためわかりませんが、テレビの視聴率では2014年の総選挙に続き民放1位を取れたことを考えると、少なからず7月3日の参院選1週間前SPを無料配信したことは、10日の参院選ライブにもうまく連動できたという手応えがあります」
こう齊藤氏も語る通り、事実、7月10日の参院選ライブでは、テレビ東京系列が見られない地域の方のビジネスオンデマンドの加入者数が増加したという結果が出た。放送と配信が連携したところで正確なデータが取得できていないのは残念だが、視聴率および配信がともに数字が上がっているのであれば、この取組みは大いに意義があるものだったと言えるだろう。
■配信施策の成功の裏で起きた想定外のこと
今回の選挙特番が新聞やネットでも話題になったことから、齊藤氏の予測では、配信後も1週間くらいは視聴が殺到するだろうと考えていた。しかし、視聴数が伸びたのは2日間だけで、その後は沈静化し横ばいになってしまったという。
ただ、放送当日の盛り上がりは予想以上だったことを考えると、配信施策は成功と言えるだろう。その証拠に、7月31日の都知事選もLIVE配信が決定した。東京は規模が大きく、国政にも影響を及ぼすと言われている。その首長が誰になるかということは、都民のみならず、全国民が関心を寄せていることだろう。2度目のライブ配信では視聴者にどのような反応が見られるのか、仕掛け側である齊藤氏も興味のあるところだと語る。
次回は、テレビ東京の10年後について。テレビ局の姿はおそらく様変わりするが、放送の強みはまだまだあると齊藤氏は語る。
[vol.2]10年後のテレビ局の姿は?テレビ局が生き残るための強みとは
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写真中央:テレビ東京 コンテンツビジネス局次長 兼 ビジネス開発担当 齊藤直宏氏
――テレビ東京 コンテンツビジネス局次長 兼 ビジネス開発担当 齊藤直宏氏プロフィール
1987年に日本経済新聞社に入社。
3年目の人事異動でテレビ東京に出向する形となり、夕方のニュース番組のディレクターに抜擢。その後はドキュメンタリーや政治番組、「WBS」に携わり、再び日経新聞社に勤務するものの、数年後またしてもテレビ東京に返り咲き、「ガイアの夜明け」などの番組を担当。その後も日経新聞社に戻り日経電子版に携わり、今回は3度目の出向という形でテレビ東京コンテンツビジネス局次長のポストを務めている。
現在、興味があるのは格差問題やトランプ現象、EU離脱、イスラム国などの世界情勢について。仕事をする上で大事にしているのは、謙虚であること。自宅ではAmazon Fire TVでNetflixなど視聴し楽しんでいる。
「テレビ東京ビジネスオンデマンド」概要
【URL】http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/
【サービス概要】
・会員制有料動画配信サービス/月額500円(税別)
・視聴可能デバイス:パソコン、スマートフォン、タブレット(iOS・Android向け専用アプリあり)
※現在配信中の番組(2016年7月現在)
・『ワールドビジネスサテライト』(毎週月曜~金曜夜11時)
・『NEWS モーニングサテライト』(毎週月曜~金曜朝5時45分/同時サイマル配信も実施)
・『Mプラス11』(毎週月曜~金曜午前11時13分)
・『未来世紀ジパング』(毎週月曜夜10時)
・『ガイアの夜明け』(毎週火曜夜10時)
・『カンブリア宮殿』(毎週木曜夜10時)
このほか『日曜夕方の池上ワールド』や報道特別番組を配信中
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