TBS、次世代の脚本家発掘・育成プロジェクト第2弾「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2024」各受賞者を決定
編集部
前列右からTBSテレビ代表取締役社長 龍宝正峰氏、早川聡真さん、溝口瑛士さん 後列右から、上牧晏奈さん、根本江利子さん、長濱亮祐さん、竹上雄介さん
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株式会社TBSテレビ(以下、TBS)は、次世代を担う脚本家の発掘・育成を目的とした「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2024」の各受賞者を決定した。
「TBS連ドラ・シナリオ大賞」をリニューアルして2023年にスタートした「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」。日本国内のみならず海外でも通用する脚本家を発掘し、ドラマに限らず、すべてのストーリーコンテンツの成長、業界の発展に寄与する人材を育成することを目的としたプロジェクトとなる。
連続ドラマの企画案と1話の脚本などを公募し、受賞者には賞金(大賞300万円、優秀賞100万円、佳作50万円、特別賞25万円)が授与され、副賞として受賞者の中から必ず1名以上の脚本家デビューが約束されている。
また、本プロジェクトでは「ライターズルーム」を設置。希望する受賞者は、TBSと6か月間の契約を交わし、ライターズルームのメンバーとしてTBSグループのクリエイターと共同で連続ドラマの企画開発や、脚本の執筆等にあたることになるほか、特別講座の受講や、撮影現場の見学などを実施する。そしてメンバーには脚本開発支援金も支給される。
以上のような育成プログラムのほか、TBSグループのクリエイターとのマッチング機会を設け、メンタリングやデビューの支援を行っていく。前回の受賞者たちもライターズルームに参加し、オリジナルの連続ドラマの企画開発に取り組んでいる。
第2回となる2024年度は応募総数855作品のなかから、TBSグループのクリエイターによる選考の結果、大賞1作品、優秀賞1作品、佳作2作品、特別賞2作品の計6作品が入選となった。
授賞式ではTBSテレビ代表取締役社長 龍宝正峰氏から各受賞者に賞状と副賞が授与された。
<TBSテレビ代表取締役社長 龍宝正峰氏のコメント>
この賞の特徴は、何よりもTBSグループで実際にドラマを作っている精鋭の制作者たちが選考しているということです。そして受賞者の皆さんの素晴らしい才能を、もっと尖ったもの、強いものにしていくために、TBSグループのクリエイターたちと一緒に切磋琢磨する時間をさらに設けていきます。皆さんと一緒に国内はもちろん、世界に通じる強いコンテンツを送り出せることを夢見ております。今日は一緒にスタートに立って頑張っていこう、という日だと思ってください。
■昨年の大賞受賞作「フェイク・マミー」の連続ドラマ化が決定
授賞式ではビッグサプライズがあった。昨年の大賞受賞作である「フェイク・マミー」が連続ドラマとして制作、TBSで放送されることが発表され、「フェイク・マミー」の作者・園村三氏が登壇した。
「フェイク・マミー」は、名門私立小学校を舞台に、「無職」と「経営者」という格差の両端にいる同世代の女性2人が“ニセママ”の契約を交わすことで、旧態依然とした“社会の無理ゲー”に挑む姿と、子どもたちの未来のために奮闘する大人たちの絆を軸に、現代の家族のあり方を描くファミリー・クライム・エンターテインメント。制作についての詳細は後日発表となる。
また同時に、第3回となる「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE 2025」の開催決定も発表された。こちらも詳細については後日発表される。
<園村三氏のコメント>
またこのような場に立てると思わなかったので嬉しい気持ちです。「フェイク・マミー」は、僕自身が子どもと向き合う日常の生活が創作の種となった作品です。日々の喜びとか、悲しみとか怒りとか、そういったリアルな感情を紡いでいくことで、多くの人の心に届けばいいなと思い、日々執筆しています。ご覧になった方が少しでも元気になるような作品にすべく、引き続き頑張っていきたいと思います。
<TBSテレビ代表取締役社長 龍宝正峰氏のコメント>
先輩が1年で次のステージへの夢を叶えた、というのは受賞者の皆さんにとって勇気になると思います。国内でやったうえで海外にも持っていければ・・・とも考えていますし、しっかり地に足をつけていい作品を作って頑張っていただければと思います。そして受賞者の皆さんにもいろんなことを教えてあげてください。
受賞者
■<大賞>(賞金300万円)「たかが3分」早川聡真さん
提出期限ギリギリに慌てて出したので、審査員の皆様と3次選考までの結果をご覧になった方はわかると思うのですが・・・作品のタイトルを間違えて提出していたことに最近気づいて・・・。それにもかかわらず作品を通過させてくださった皆様には、感謝しかありません。
昔から書くことが好きで、創作は趣味でやってきたのですが、昨年の第1回ライターズチャレンジが開催されるというのがきっかけになりました。
大学では脚本とは全く関係のない分野を学んでおり、周りに話し合えるような仲間もいなかったので、ライターズルームの方々やメンバーの皆さんと意見交換できるのを非常に楽しみにしています。
■<優秀賞>(賞金100万円)「アジ屋のリヒト~“サル”でも分かる!世論のつくり方~」溝口瑛士さん
私は今回の作品以外にドラマの脚本を書いたことがありません。脚本の教室にも通っていなかったので、ドラマ脚本特有の書式は脚本を書きながら、書籍やネットで少しずつ学んでいきました。アイディアだけはたくさん持っていたので、大学の夏休みの間に2本書いて応募する気でいました。
実際は1本書くのもままならず、最終的には2日徹夜をして、締め切り数分前に提出する羽目になりました。提出後に読み返して、いくつかのミスに気づきました。今年は落ちると思いました。それでも選考委員の方々は私の作品を高く評価してくださいました。
このコンクールは書式の誤りだとかスキルの拙さではなく、作品のメッセージやアイディアに1次選考の段階から丁寧に目を配ってくださるコンクールです。今後応募する方々は、自分が面白いと思うアイディアがあれば能力に自信がなくても、とにかく自分のセンスを信じて書いて出してみるべきだと思います。
これからの半年間、必ずご期待を上回る成長を遂げてみせます。
■<佳作>(賞金50万円)「悪い種」長濱亮祐さん
そんなに明るい作品ではないんですけれども・・・選んでいただき感謝しております。どんなに幸せそうに見える人でも「今の自分とは別の自分になりたい」とか「違う人生があるんじゃないかな」とか、そんなことを考えることがあると思うんです。
何かのきっかけでそういう思いが外に出たときに人とぶつかったり、周囲とぶつかったりして熱が生まれてエネルギーになって・・・。そこがドラマになるんじゃないかと思います。派手な話でもささやかな話でも、そういう個人の小さな思いを大切にしてこれからも書いていきたいと思っています。
■<佳作>(賞金50万円)「ザ・カウンセラー」根本江利子さん
今、49歳なんですけれども、初受賞になります。脚本の勉強を始めたのは十年以上前なのですが・・・この十数年なんの賞にも引っかかる気配もなく、たくさんある世の中の面白いドラマに憧れ続けてきました。自分には才能がないと思い「今回で最後」と書いた作品です。
悔いのないように本当に自分の思いを乗っけて、普段はあまり言わないようにしている社会への問題意識や、子育てを通じてもやもやしていることを全部書かせていただきました。
今回、そういった思いを乗せた作品を評価いただけたことが嬉しいのと同時に、自分の場合はそれぐらい振り切った作品を書かないと評価される作品にはならないのだと初めて気づき、勉強になりました。これからは、最後なんて言わず、スタートという気持ちで頑張ろうと思います。
■<特別賞>(25万円)「隣りのオロチ」竹上雄介さん
「隣りのオロチ」は、1匹の脱走蛇によって二つの家族が絡み合っていく物語です。正直、蛇はちょっと苦手なんですが・・・この作品はとても愛着を持って仕上げたことを覚えています。最初、特別賞という結果を聞いたときは悔しい思いもあったのですが「特別」という言葉は嫌いじゃないなと思って、今、嬉しい気持ちでこの場に立っています。
別のコンクールで賞をいただいた作品が先日オンエアされ、SNSなどでいろいろなご意見ご感想をいただきました。その反響が、とても嬉しくて。やっぱり脚本っていうのは映像化されてこそだなと実感しました。連ドラのオリジナルをやりたいと思ってずっと書いてきました。ライターズルームでは、やっぱり映像化にこだわって勉強していきたいと思っております。
■<特別賞>(賞金25万円)「持田くんの実家は太い」上牧晏奈さん
夜な夜なベッドの上で天井を見上げながら「誰か私を見つけてくれー」と思っていたので、この度見つけていただけてとても嬉しいです。私が初めて台本を書いたのは高校生のときで、友達に「漫才やろうよ」って誘われて台本を書きました。その後コントの台本を書いたり、演劇の台本を書いたりして今に至ります。
私は人間のかわいいところが書かれた作品が大好きです。人間のかわいいところとかわいくないところをじっと見つめて、かわいいところを多めに集めて脚本にしていけたらなと思っています。へりくだり過ぎず伸び伸びと、チームの一員として面白い作品を追求していける脚本家になります。これからどうぞよろしくお願いいたします。
■総評(選考委員・TBSスパークルエンタテイメント本部ドラマ映画部 新井順子氏)
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」は企画書、全体構成、1話の脚本の提出というなかなか難易度の高いコンクールではないかと思いますが、応募いただいた皆様に感謝申し上げます。
選考過程のなかで、大賞、優秀賞、佳作以外にもこれは落としたくないという作品があり、激論の末、今回は特別賞を設けることになりました。特別賞の2作は企画書や脚本の随所に未来への可能性が感じられました。「隣りのオロチ」はいい意味でバカバカしい企画の発想力、コミカルなセリフとキャラクターがよく、竹上さんのコメディセンスに今後も期待しております。
「持田くんの実家は太い」は独特の世界観があり、セリフも上手く、主人公の描写も丁寧で、すごく斬新だと思いました。その将来性を見込んでの受賞となりました。佳作である「悪い種」はセリフ・構成が本当によくできていて、現代のネットワークビジネスの実態を細かくリサーチされており、脚本の総合的な完成度の高さが評価されました。
同じく佳作の「ザ・カウンセラー」は安楽死を扱った作品。重いテーマですがセリフやキャラクターがライトでとても読みやすく、思いがこもった作品だと感じました。優秀賞である「アジ屋のリヒト」は企画の発想力、脚本の構成力が高く評価され、特に若い世代の選考委員が強く推していました。大賞とは僅差で優秀賞になりましたが、大賞に勝るほどの勢いがありました。
そして大賞の「たかが3分」は企画性、テーマ性、脚本が全て高水準に達していたため、大賞に選ばれました。登場人物の心情が丁寧に描かれており、掛け合いのテンポ感も良く、ラストのあたたかな展開も素晴らしかったという意見がこの結果につながりました。
今回は若い方も受賞された一方、最後だと思ってチャレンジした結果受賞された方もいらして・・・何歳だろうが、関係ないですね。(昨年大賞を受賞した)「フェイク・マミー」のように連続ドラマ化という夢のある舞台が用意される可能性もあります。TBSにいるクリエイターたちとともに、一緒に良い種を育てていってください。みなさんにはまだまだ可能性を伸ばしていってほしいなと思います。ありがとうございました。