TVer広告、コネクテッドTVでも高精度なターゲティングに強み〜TVer Biz Conference 2021レポート(後編)
編集部
株式会社TVer代表取締役社長・龍宝正峰氏
株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2021』が、2021年6月9日に開催。現在の民放公式テレビポータル「TVer」(以下、TVer)サービス概況をはじめ、昨年11月より開始した「TVer広告」の最新トピックなどが発表された。
前編では、現在の「TVer」のサービス概況についてのプレゼンテーションを中心に紹介。中編では、「成長するコネクテッドTV市場 -広告活用の展望と課題-」と題しトークセッションの模様をお届けしたが、この後編では、2020年よりスタートした「TVer広告」におけるトピックスと開発ロードマップ、さらにセールスアワード「TVer SalesAwards2020」発表の模様をレポートする。
TVer、ユーザー増加が加速で月間再生数1億8305万回到達 サービス認知率は63.2%に〜TVer Biz Conference 2021レポート(前編)
急成長するコネクテッドTV市場 TVerの視聴比率も昨対比3倍超に〜TVer Biz Conference 2021レポート(中編)
■TVer広告概要:長尺CMでも「音声あり」で90%以上の完視聴率
最初に、TVer社 広告営業部長・古田和俊氏がプレゼンテーション。TVerでは昨年11月より、DSP(Demand-Side Platform:広告主プラットフォーム)の提供パートナーに向けたプログラマティック広告「TVer PMP(Private Market Place)」と、運用型広告「TVer広告」のテストセールスを開始しているが、今回はこのうち「TVer広告」に照準を絞って説明が行われた。
「TVer広告」ではTVerに加え、各放送局サイトや「GYAO!」などのシンジケーション(提携)サイトで配信される放送局コンテンツを配信対象とすることにより、直近でMAU(月間ユニークブラウザ数)2300万以上を記録。「半年前の時点では1900万であったことからも、順調に成長していることをご理解いただけるかと思う」(古田氏)と語る。
まずは「高い視聴完了(最後までコンテンツを視聴する)率」を示すデータとして、「TVer広告」における秒数ごとの平均完視聴率を紹介。
「15秒素材では96.2%、30秒素材では95.2%。60秒素材でも93.2%と、長尺CMでの高い完視聴率を示している」と古田氏。さらに「TVerでは基本的にコンテンツが『音声あり』で再生されており、ビューアビリティ(実視聴率)が守られている」とした上で、「音声ありの完視聴率が約85%」と説明。「無料動画投稿サイトの46%、SNSインフィード広告の2%と比較しても、非常に高い数値を記録している」と強調する。
「TVerは『見たいコンテンツがあって視聴する』ユーザーが多いため専念視聴率も高い」と古田氏。「TVer広告は、音声ありの完視聴率と高い専念視聴率によって、CMメッセージを確実に届けることができる媒体である」と語る。
■「広告前提のフォーマット」と「放送局基準の業態考査」で高いアドセーフティを担保
「(TVerの配信コンテンツは)広告が入ることを前提に作られているため、コンテンツの途中に突然CMが入ってくるというようなことがない」と古田氏。
「(コンテンツの展開に関わらず、突然CMが挿入される)無料動画投稿サイトと比較しても違和感なく広告が受け入れられており、広告に対する嫌悪感が少ない。また、地上波の放送基準を守った安心安全なコンテンツだけが配信されており、権利処理がされていない違法動画は配信されていない」(古田氏)
「TVerへご出稿いただいている広告主様については放送局基準に準じた業態考査をさせていただいており、クリエイティブについても人の目による素材考査を行っている」と古田氏。「皆様の大切な広告が権利やコンプライアンスに違反したコンテンツに流れることはなく、大切な広告主様のCMが不適切な広告と隣接して配信されることもない」とし、「ブランドセーフティの観点からも安心してご出稿いただきたい」とアピールした。
■「TVer広告最大の特徴」コネクテッドTVでの高精度ターゲティング
「TVer広告の最大の特徴は、コネクテッドTVにおいても高精度なデモグラ(属性)ターゲティングができること」と古田氏。「コネクテッドTV(のTVerアプリ)においては、生年月、性別、郵便番号に加え、『1人で使うのか、みんなで使うのか』もユーザーに(起動時アンケートで)お答えいただいている」と、その強みを語る。
「『1人で使っているユーザー様』にターゲティングすれば高精度なデモグラターゲティングが可能。『みんなで使っているユーザー様』にターゲティングすれば、複数の方に同時に広告を届けることができる」(古田氏)
「コネクテッドTVについては、非常に注目度が高まっている」と古田氏。「コネクテッドTVでの(ユーザー)属性データが取れている媒体は、国内では大変珍しいと言われているので、ぜひご活用いただきたい」と述べた。
■「TVer広告・テレビCM合わせての出稿」で高水準のリフトアップ効果を実証
続いて古田氏は、冒頭でも触れた「TVer広告」テストセールスの実績を報告。昨年11月から今年3月までのプレセールス期間において、「広告主数は139社、キャンペーン数で232件と、目標を大きく上回る結果を出すことができた」といい、業種では「外食・各種サービス」「自動車関連品」「不動産・住宅設備」を中心に、全1019業種の広告主が出稿したという。
「3月に大規模にキャンペーンを実施いただいた情報通信業界者様の事例では、広告認知がプラス51.5ポイントと大きくリフトアップ。サービス認知についても31.5ポイントのリフトアップ効果が出た」(古田氏)
「サービス・広告の認知にとどまらず、サービスの特徴理解についても高い結果が出た」と古田氏。「TVer広告の専念視聴度、視聴完了率の高さによってCMメッセージの内容までしっかり届いている」とし、「認知のみならず、興味関心、比較理解まで幅広いパネル(母集団)において、TVer広告が有効だという結果を指し示している」とアピールする。
さらに古田氏は「各種サービス」業種のクライアント事例を用いて、テレビとの重複接触効果を説明。
「『TVerのみ』『テレビCMのみ』の接触者については純粋想起(ヒントを与えない自由回答形式)におけるブランド認知の割合が5%程度だったのに対し、『TVer・テレビCM両方』への接触者については、倍近い効果が出た」(古田氏)
「知っているブランド名を選んでいただく純粋想起についても、同じく『TVerのみ』『テレビCMのみ』の接触者より、『TVer・テレビCM両方』への接触者のほうが高いリフトアップ効果が見られた」と古田氏。「テレビCMと合わせてTVerへ出稿いただくと、より高い効果が出る」とした。
■「TVer広告」の強力アップデート:番組ジャンル別&“1歳刻み”年齢ターゲティング、任意秒CM対応
締めくくりに古田氏は、「TVer広告」における4月以降の商品アップデート情報を紹介。「ドラマ」「バラエティ」「アニメ」など、TVerの配信コンテンツジャンルによるターゲティングが3月に実装されたと発表した。
「今後はより粒度を絞り、ドラマの中でも『恋愛ドラマ』だけに配信したり、バラエティの中でも『グルメ番組』だけに配信したりするなど、サブジャンルへの対応を進めていく」(古田氏)
従来は6秒・15秒・30秒・60秒に限られていたCM素材についても、4月からは「60秒までの任意の秒数」に対応。WEB用に制作されたイレギュラーな秒数の動画をそのままTVerのCM素材として活用することも可能となった。「15秒素材に“ぶら下がり”をつけて17秒素材にしたものを配信することも可能」(古田氏)
さらに古田氏は「TVer広告、一番の武器」として、アンケートデータによるモグラターゲティングのアップデートを発表。
「TVer起動時、ユーザーに対して行っている属性アンケート(生年月・性別・郵便番号)のデータをビデオリサーチ社のパネルデータと突合したところ、約94%という高い“正解率”を記録した」(古田氏)
昨今、iOS14.5のリリースに伴うIDFA(Identifier for Advertisers:広告識別用ID)の欠落や個人情報保護の厳格化といった流れを汲み、「精度の高いファーストパーティーデータ」を使ったターゲティングの重要性が高まっているが、TVerでは、従来の「5歳刻み」の年齢ターゲティングから、「1歳刻み」でのターゲティングが可能になったという。
「例えば、『成人式を控えた19歳の女性』だけに絞ったターゲティングなど、きめ細やかなご要望にお応えできるようになった」(古田氏)
これまで課題であった、コネクテッドTVの広告効果検証についても、インテージ、青山学院大学と共同研究を開始。「次回のカンファレンスでは、その効果についてもご説明ができるかと考えている」(古田氏)
民放キャッチアップ広告における出稿社数について、「2015年度に約60社からはじまり、2019年度に1200社、2020年度には1600社以上の広告主様にご出稿いただいている」と古田氏。「より多くの広告主様にご出稿いただけるよう、皆様のご意見を伺いながら、よりよい商品開発を進めてまいります」と挨拶し、プレゼンテーションを締めくくった。
■TVer広告トピックス・開発ロードマップ:新広告枠、ファーストパーティーデータ活用広告のリリース計画を発表
続いて、TVer社 広告営業部 広告開発グループリーダー・矢部伶史氏が、TVer広告のトピックスと開発ロードマップについてプレゼンテーション。
まず矢部氏は、「音声ありで専念視聴率が高い」TVer広告が持つ特徴の背景として、「地上波コンテンツと同じ箇所にCMを流し、かつ非常に厳格な入稿規定を定めさせていただいていること」と説明。
「CM素材の音量が本編と異なったり、画質が粗かったりした場合、ユーザーのCMに対する視聴体験に少なからず影響が出てしまう」と矢部氏。「CM素材のクオリティを標準化することで、CM視聴者の視聴体験を阻害せず、CMへのエンゲージメントも高めることができる」と呼びかけた。
さらに矢部氏は「サードパーティーCookieやIDFAに頼らないテクノロジーに対する対応を含めた開発方針」として、「新しい広告枠の開発による商品メニューの強化」「コンテンツメタデータ等、ファーストパーティーデータを利用したDMPの構築、ターゲティングおよびレポーティング」と言及。
これらを踏まえた施策として、動画広告に付随した静止画を入稿できる新たな広告枠「コンパニオン広告」のリリースを発表。さらに今後、「コンテンツのメタデータの拡充を行った、サブジャンルターゲティング」「ファーストパーティーデータを利用した新しいマーケティング施策」を予定していると明かした。
■新広告枠「コンパニオン広告」で、動画広告に付随した静止画を入稿可能。「サブジャンルターゲティング」「デバイス横断ターゲティング」も予定
矢部氏は、新広告枠「コンパニオン広告」について、「インストリーム広告と同じ広告主の静止画を表示する広告枠」と説明。画面イメージを紹介しつつ、「今まで以上に高いブランド認知効果、広告効果が期待できる」とアピールした。
「サブジャンルターゲティングでは、TVerにおける番組コンテンツを36のサブジャンルにクラスタリング化。ドラマやバラエティといった、従来のジャンルターゲティングでは行えなかった『コンテンツの内容に沿う詳細なターゲティング』が可能となる」(矢部氏)
さらに矢部氏は、データを活用した広告配信の開発に関して、「まずはPCブラウザ・スマートフォンアプリ・コネクテッドTVを横断した、クロスデバイスターゲティングの開発を進めている」と説明。「あわせてユーザーデータのリッチ化を進め、ファーストパーティーデータを利用したターゲティング精度の向上、ならびにデバイスをまたいだレポーティング機能に関しても強化をしていく予定」と述べた。
最後に、TVer社 代表取締役社長・龍宝正峰氏より、日本を元気にするためには広告の力が必須。広告を1人でも多くの方に届けることがわれわれメディアとしての使命。
テレビの安心安全なコンテンツを開放し、ユーザーの皆様に広げ、広告主の皆様にも、一緒にワクワクする未来を作って届けようという思いをご理解いただけたら、と述べ、カンファレンスを締めくくった。