テレ朝がAKB48総選挙の“延長戦”特番を放送した裏側に迫る!
Takeo Tsukiyama
今年の6月18日に、国民的アイドルグループ・AKB48による年に1回のスペシャルイベント「第8回AKB48選抜総選挙」が、新潟県のHARD OFF ECOスタジアム新潟で開催された。指原莉乃が2年連続1位を獲得したこの選挙の模様は、例年通りフジテレビで生中継。さらに、激しい順位争いが展開された余韻を届けるべく、テレビ朝日が“延長戦”を放送し、戦いを終えたメンバーたちの表情やコメントを紹介した。
AKBファンにとってはうれしいリレー放送だが、なぜフジテレビからテレビ朝日へという変則的な中継が行われたのか? 総選挙の“延長戦”に携わったテレビ朝日・総合ビジネス局 デジタル事業センター所属の杉山登氏と松尾健司氏に、番組制作のきっかけや中継の裏側、今後のビジネスに関する展望について伺った。
テレビ朝日のAKB48総選挙“延長戦”誕生秘話
テレビ朝日でドラマ「AKBラブナイト 恋工場」を制作している杉山氏は、この“延長戦”の企画について、「総選挙に絡めて面白いことをやろうと試行錯誤した結果、生まれた施策です」と振り返る。
「せっかく総合ビジネス局という部署なのでネットなどを使って“新しいことをやろう!”ドラマ連動で何かできないかなと。秋元(康)先生との打ち合わせの中で“無茶をしなくちゃダメなんだ”と次々と新しいアイディアを提案され、先生についていくのに必死だったんですけど(笑)、とにかく新しいことをやってみたかった。とは言え、総選挙を見てねというだけの分かりやすい形にはしたくない。 そこで、今回の総選挙では何かが起こりそうだという雰囲気をうちの番組やネットなどで盛り上げていきながら、その後にAmazonで配信されるAKBのオリジナルドラマにつなげていくことを企画。もちろん、ドラマの制作費はAmazonからいただくわけだからビジネスとして成立するし、今までとは違う面白い流れができるかもしれないなと思いました」
何かを仕掛けることに関しては天才的なひらめきを発揮する秋元氏が総合プロデューサーを務め、杉山氏はドラマ部分を担当した。
「ドラマは、アイドルの秘密が隠されている文書が流出しそうだ、というような仕掛けを。ちょうど『パナマ文書』事件が騒がれていた時期だったので、タイトルは『アキバ文書』にしました。どんな風にクスッと笑えるようなネタを入れていけるか。秋元先生と何度も話し合いながら試行錯誤を繰り返して。ギリギリのタイミングでネタを変えたりしました。 リアルとフィクションを織り交ぜた構成なので、1話分はある程度先に収録しましたけど、2話以降は総選挙が終わってから撮るシーンがほとんど。指原の『スキャンダル成金』発言が面白かったので、脚本を書き換えてセリフに入れたりして、臨機応変に対応しました。かなり大変な作業でしたけど、ある程度想定したものからは大きく外れませんでしたね」
松尾氏は、総選挙の“延長戦”という新たな試みを盛り上げるネット戦略のリーダー。本番に向けて、いろいろな仕掛けを試みたようだ。
「6月の頭から事前盛り上げの企画をやらせていただきました。『お願いランキング』ではスタジオの卵に一つずつ、『全力坂』では走っている女の子の服などにキーワードを仕掛けたり、握手会の時に謎のポスターを貼ったりして。全部集めていくと番組を見てくださいねという告知になっていて、最終的にはAmazonのドラマにつながるような工夫をしました。総選挙の開催が6月18日というのは最初から決まっていたことなので、時間との戦いが勝負。余裕はありませんでしたけど8〜9個ぐらいは仕掛けることができました」
特番の反響は想定内!?
「今回はリアルとフィクションのバランスやさじ加減に気を遣いました。しかし、攻めるところはとことん攻め……。ちょっとミステリアスすぎたところがあったかもしれません。結構、ついてこられなかった方が多かったみたいです。『お願いランキング』の仕込みも、告知なんだけど告知っぽくやっていなかったこともあって“あれは何だ?”で終わってしまった感じ(笑)」と杉山氏は振り返る。
それでは、仕掛けに対する反響や効果についてはどうだったのだろうか。
「握手会のポスターも気付く人は気付くけど、それはほんの一部だったりして。もう少し、分かりやすくやっても良かったかなと反省しています。それでも、AKBファンの中には見事に解き明かした人がいましたね。ツイッターのコメントもそうですし、放送中にメンバーが発言したワードが急上昇トレンドに上がったりと、盛り上がり方がすごい。あらためて、総選挙は国民的大イベントなんだなと実感しました」
今回の“延長戦”は来年以降、テレ朝で総選挙を中継する布石なのか
AKB48の総選挙中継に“延長戦”という特番で新たに参加したテレビ朝日。もしかすると、来年か再来年あたり、本番の中継をやる可能性はあるのだろうか。
「秋元先生の真意は分かりませんけど、常に新しいことや面白いことをやりたいんだろうなと思います。いろいろなところにボールを投げて、その反応を見ながら仕掛けているんじゃないですか」と語る杉山さん。しかし、来年も特番を放送するとしたらどんなことをやってみたいかという問い掛けには「それは考えているけど、言えないかなぁ(笑)」と、気になるコメントを残した。まだまだ挑戦したいことが数多くある様子だ。
「システムが1つできれば、人を変えたりちょっとしたアイデアを加えるだけで、ずっと続けていくことができる。応用が利くんですよね。今回の特番で上手くいったところ、失敗したところを精査しつつグレードアップしていくことも可能だし、そこから全く違うものに変えて新しいものを作ることだってできる。どうせやるなら毎回チャレンジしていきたいし、秋元先生からもアイデアがたくさん出てきますから」
今回の特番に関しては、もう少し視聴率が欲しかったというのが本音だそう。テレビ朝日全体で新しいこと、面白いことをやろうと、一丸になって取り組んだということは評価の対象となるかもしれないが、数字を稼がないことには納得がいかないようだ。
「僕も含めてプロジェクトメンバーはこれだけのことをやったんだから、もっと結果が欲しいと心の中で思っているはずですよ。そういうみんなの気持ちが次につながれば、より面白い番組が作れるんじゃないかなと思います」と意気込む杉山氏。次回も引き続き、お二人にテレビ朝日の作品作りについて伺いたい。