いま、ローカルテレビ局が熱い! 広島テレビがつなぐ地方の絆
編集部
25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島東洋カープによって、大いに「神ってる」広島。その広島で「完全カープ主義」を掲げる広島テレビは、2015年度視聴率四冠を3年連続で達成! 2016年もカープ中継を地元局最多の28試合中継するなど、地元に深く根差した展開をしている。そして、その躍進の裏側には、長年の魅力的な番組づくり、ネットワーク構築の努力を続けていた事実があった。
■チャレンジを続ける集団が、広島テレビの番組を面白くする!
広島テレビは、中国地方の中枢都市、広島市に本社を置く日本テレビネットワークの地上波テレビ局。地方局としてはいち早く24時間放送を始め、番組の自社制作率は14.8%(2016年10月時点)。
看板番組は、夕方のワイド番組『テレビ派』(毎週月~金曜 15:48~18:55)、『進め! スポーツ元気丸』(毎週日曜 23:25~23:55)。地元に密着し、広島東洋カープに焦点を当てたものが人気を集めている。2012年から開局50年の企画として平和のメッセージを世界に発信する「ピースフォーピース」キャンペーンを開始し、オバマ米大統領広島訪問のきっかけとなった活動もすすめてきた。また番組販売を海外に向け展開するなど、ローカル局でありながら、全国・世界を視野に入れた取り組みを進めている。
もちろん、地元の視聴者にむけての番組制作もチャレンジを続けている。2015年10月からは毎月1回、金曜19時のゴールデンタイムに、東京・日本テレビの番組を差替え、自社制作のバラエティ番組『金ぶち』を制作。地元を“ぶち”(広島弁で「とても」の意味)愛する番組つくりを開始した。2017年1月からは放送回数を月2回に増やし、『金ぶち』から、更にパワーアップした新番組バラエティ『よくばりアリス』を放送開始。タレントのいとうあさこさんをメーンの出演者にして、新しい視点で広島の魅力を紹介するものだ。
地元「広島」の視点を忘れず、イノベーションを続ける心意気が「広テレ!」のパワーの源と言える。
「ゴールデン枠に自社制作の番組をぶつけるのは、かなりのチャレンジです!」と答えてくれたのは、イノベーション事業部の益村泉月珠氏。
益村氏は、技術職で広島テレビに入社し、テレビ局の心臓部であるマスターで勤務。その後、報道制作局でカメラマン、制作のディレクターと経験を積み、広島テレビの番組づくりに関しては何でも経験してみたいというバイタリティあふれる方。現在は、番組だけではなく多様なコンテンツをつくりだすイノベーション事業部のチーフプロデューサーとして活躍している。
部局の雰囲気を伺うと、「ほとんど全員が社長みたいな感じです。それぞれが独立して動くすごい集団で、モンスターの集まりと言われています(笑)」と答えてくれた。
「イノベーション事業部が盛り上がると同時に、全社にその波が伝わって、新しいことがいろんなところから始まってきます。全員が、私たちも頑張らなきゃ! と思うように、いい流れができています」
■ローカル局同士のクロスオーバーを主導
活気に満ちた広島テレビの新しい取り組みのひとつとして、他のローカル局とのクロスオーバーが挙げられる。
例えば、広島テレビの夕方のワイド番組『テレビ派』、くまもと県民テレビ『テレビタミン』、山口放送『熱血テレビ』にMCを入れ替えて出演したことがある。放送時間内に、出演者が両方の局に出て同じ映像を流すという取り組みだ。
「以前は中四国のローカル局の間でVTRを渡すようなことはあったようですが、それぞれの局で、それも3箇所同時に出演者が途中で入れ替わって、というのはなかったのではないかと思います」(益村氏)
この取り組みは、広島東洋カープが日本シリーズを戦った相手の地の札幌テレビとも行われた。首都圏に住んでいるとなかなか触れることができないが、地方と地方がエリアを越えてつながって盛り上がったという、魅力的な番組だったようだ。
■密接な関係だからこそ、信頼が大切!
ローカル局の特徴として、視聴者との密接な結びつきが感じられる。例えば、番組とアナウンサーが紐づいて覚えられ、強い親近感を持っているなど、テレビを非常に身近な存在としてとらえている点がある。
「以前、まだガラケー全盛でデコメをDLしてもらうという企画を行いました。ローカル局各局で15秒のPRを流して、どれだけのDL数があがるのか見たところ、鳥取県、島根県、高知県の反応がすごかったのです。アクション率は人口とはまったく関係ないということを知って、すごく驚きました」(益村氏)
首都圏では視聴者とテレビの接し方に変化が出てきていると言われているが、ローカル局はまだまだ地域の人びとに密着し、生活にはなくてはならないもと言えるだろう。
だからこそ、「信頼が大切」と益村氏は続ける。
「ローカル局の一番の強みは、地域の人たちに信頼していただけている、ということだと思います。多くの人が視聴しているというのは結果であって、信頼があるから視ていただけるのだということを忘れずに、これからも番組づくりを続けていきたいと思います」(益村氏)
ご当地の美味しいものを食べるのもいいが、ローカル局のテレビ番組を観るのも旅の楽しみのひとつ。地域に密着した番組から情報をもらって、地域独特の空気を感じるにはもってこい。さらに深く広く展開する広島テレビの取り組みに注目したい。