コンテンツビジネスの“その先” ビデオリサーチ・TBSテレビ・電通トップが語る展望 〜VR FORUM 2024特別会談レポート(1)
編集部
左から)株式会社ビデオリサーチ石川 豊氏、株式会社TBSテレビ 龍宝正峰氏、株式会社電通 佐野 傑氏
株式会社ビデオリサーチが、2024年11月27日に東京ミッドタウンホールで「VR FORUM 2024」を開催。5年ぶりのリアルイベント(リアル&オンラインのハイブリッド形式で開催)となった今回は「コンテンツから拡がる“その先”へ」をテーマに掲げ、生活者とテレビメディアの変化に向き合いながら、最前線で活躍するキーパーソンらによる濃密な議論が繰り広げられた。
このうち本記事では、SESSION1「【特別会談】これからのコンテンツビジネスと、“その先”」の模様をレポート。各企業においてコンテンツを軸としたビジネスモデルの多角化が加速する中、その代表的な企業としてTBSと電通の新たなトップ2名を迎え、それぞれが目指すコンテンツビジネスの方向性、自社や業界への変革イメージを通じて、テレビ局・広告会社の枠を超えた日本のコンテンツ産業の盛り上げ方の方向性を探る。
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パネリストは株式会社TBSテレビ 代表取締役社長 龍宝正峰氏、dentsu Japan CEO/株式会社電通 代表取締役 社長執行役員 佐野 傑氏。モデレーターを株式会社ビデオリサーチ 代表取締役 社長執行役員 石川 豊氏が務めた。
■「信頼性あるデータで制作者の意思決定をサポート」ビデオリサーチ社長が挨拶
「コンテンツビジネスは今、かつてないほど複雑化、多様化しており、従来のテレビ放送だけではなく、OTT、イベント、IPビジネス、グローバル展開など、無限の可能性が広がっている」と石川氏は冒頭で挨拶。
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「私たちビデオリサーチは、信頼性のあるメディアデータおよび生活者データを収集し、それを分析・可視化することで、広告主やメディア関係者、コンテンツ制作者の意思決定をサポートしています」と紹介し、「データに基づく意思決定が最終的に生活者に届き、より良い情報や心を動かすコンテンツとして届けられることを願っています」と語る。
「今回の『VR FORUM』には、この時点で、オンラインで1,500名、会場に300名、合計1,800名の方々にご参加いただいた」と石川氏。「これだけ多くの方がコンテンツビジネスの未来に関心を持ち、真剣に考えていることを実感しています」と述べ、「本日の議論が皆様にとって、新しい発見や次のアクションにつながるヒントになれば幸いです」と呼びかけた。
■TBSが取り組む“テレビの再定義” 時間と場所を超えた「Timeless Value」を提供
TBSテレビ龍宝氏は、「テレビの再定義とTimeless Value」をテーマにプレゼン。社長就任時に社員へ送ったメッセージ「テレビを強くする」を掲げ、その意義について語った。
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「テレビは今、かつてない変革期にある。『Television』だけではなく『Total Video』、そして『Timeless Value』という広がりの中で、私たちはテレビの価値を再定義しなければならない」(龍宝氏)
「私たちはテレビを『時間と空間を超越し、あらゆるデバイスで価値を提供するメディア』として再定義する」と龍宝氏。「視聴者がいつでもどこでもコンテンツに触れられる環境を構築することが次世代のテレビ局の使命」と強調した。
龍宝社長は同社の成功事例として、映画『ラストマイル』を紹介。本作はドラマ『アンナチュラル』『MIU404』の制作チームが新しい物語として映画を作り上げ、興行収入58億円を超える大ヒットを記録。映画の成功が過去作品の再視聴やグッズ販売にも波及し、複数の収益軸を確立した。
「この映画は単なる劇場公開にとどまらず、配信やグッズ販売など多層的に価値を生み出しました。これはまさに『Timeless Value』の象徴といえる」(龍宝氏)
続いて龍宝氏は、平日朝帯のバラエティ番組『ラヴィット!』におけるイベント展開を紹介。番組発の大型音楽イベント「ラヴィット!ロック2024」がリアルイベントで1万人以上を動員し、配信を通じて7万人以上が参加するなど大きなムーブメントを巻き起こしたことに触れ、「単なるテレビ番組を超えてファンコミュニティを形成し、新たな収益源を確立した好例」と述べた。
■dentsu Japan「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」で取り組む“エコシステム構築”
dentsu Japan佐野氏は、エンターテイメントを軸としたエコシステムの構築と持続的成長をテーマに、北海道北広島市における球場を中心とした複合施設「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE」の事例を紹介した。
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「『F VILLAGE』は単なる野球場建設ではなく、町づくりそのもの。日本ハムファイターズが本拠地とする球場『エスコンフィールドHOKKAIDO』を軸として、住宅、商業施設、教育施設を含めた複合施設として設計されており、地元経済を活性化するプラットフォームになっている」(佐野氏)
「dentsu Japanは『F VILLAGE』においてビジョン設計から運営支援、施設構想に至るまで深く関わり、出資も行っている」と佐野氏。「地元経済に利益をもたらし、地域コミュニティを強化し、スポーツとエンターテインメントを融合させた新たなエコシステムを構築する」と、プロジェクトの骨子を説明した。
■「エコシステムを回し、才能が報われる環境を作ることが大切」両トップが示す展望
後半は龍宝氏、佐野氏を中心に、コンテンツビジネス業界の未来に向けた展望をディスカッション。両氏は今後に向けた共通課題として、クリエイターへの適切な報酬、制作現場への投資、エコシステムの強化、グローバル市場への展開を挙げた。
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「お金がなければ良いコンテンツは生まれないし、サステナブルではない。制作現場にもっと投資を行い、より良いコンテンツを作り続けなければならない」(龍宝氏)
「クリエイターの適切な評価がなければ、新しい才能が育たない。エコシステムを回し、才能が報われる環境を作ることが大切」(佐野氏)
セッションを振り返り、龍宝氏は「テレビは信頼されるメディアとして情報発信とコンテンツ制作の使命を果たし続け、新しい時代のテレビの価値を創造していく」とコメント。佐野氏も「コンテンツは熱狂を生み、社会や経済を動かす力を持つ」と同意し、「持続的なエコシステムを構築して次世代のクリエイターを育て、世界に挑戦していく」と意気込みを示した。
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