【MIPCOMカンヌ2023プレ特集②】日本の注目ドラマ、バラエティをカンヌで今年もプロモーション
ジャーナリスト 長谷川朋子
MIPCOMカンヌ会場
世界最大級のTVコンテンツ国際取引マーケット「MIPCOMカンヌ2023」の開催日が迫る。テレビ業界の次のトレンドを決定づけていく場に、今年は1万2000人の参加が見込まれる。今回は中国が主賓国を務めることが決まり、4年ぶりに中国メディア企業の参加が完全復活することが話題の1つにある。日本からも恒例企画をはじめとするドラマ、バラエティ番組の海外への売り込みが行われる予定だ。
【MIPCOMカンヌ2023プレ特集①】業界トレンドにある今年のMIP注目シリーズ「FAST」とは何か
■日本のHuluドラマ「コンコルディア」ワールドプレミア上映
フランス・カンヌ市現地で開催される今年の「MIPCOMカンヌ」は恒例のプレイベントから始まる。MIPCOMに向かう週末の10月13日からJWマリオットを会場にキッズ専門マーケットMIP JUNIORが行われ、15日までの3日間、キッズコンテンツの世界向けプロモーションや業界最新事情が語られる。
グローバルIP戦略の成功はキッズ分野においても関心度が高く、「KEYS FOR A SUCCESSFUL MULTIPLATFORM IP STRATEGY(マルチプラットフォームIP戦略の成功のカギ)」は注目セッションの1つにある。登壇者の1人であるMoonbugエンターテイメントのアメリカ地域担当マネージング・ディレクターAndy Yeatman氏は以前、Netflixにおいて2014年に2本だったNetflixのキッズ向けオリジナル作品を、3年間で40本にまで成長させた実績を持ち、現在はあらゆるプラットフォームにおいてIP展開を広げることにも成功させているという。このほか、業界トレンドのFASTについてもキッズコンテンツの観点から語られる「Digital Distribution / FAST Kids」も話題性の高いセッションとなりそうだ。
10月15日からは「MIPCOMカンヌ」の前夜祭として、ヒーローキャラクター「マスク・オブ・ゾロ」の新たなストーリーを開発したAmazonプライム・ビデオの新作ドラマシリーズ「Zorro」のスクリーニングイベントが行われる。同作の世界配給権を保有するフランスの大手メディア企業Mediawan Rightsが企画し、スペインの大手スタジオSecuoya社長で同作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めたSergio Pizzolante氏のトークセッションでは国際的な座組みについて語られる。
スクリーニングイベントはMIPCOMにおける主力のプロモーション展開にあり、今回は期間中、日本のHuluが出資し、日本人で唯一のキャスト起用となった中島健人(Sexy Zone)が出演する「コンコルディア」のワールドプレミア上映も目玉の1つにある。上映が開催される17日には、出演するドイツ俳優のクリスティアーネ・パウルとアイルランド俳優のルース・ブラッドリーによるQ&Aセッションが予定されている。
■ダイバーシティTVアワードでNHKドラマがノミネート
10月16日からは19日までの4日間にわたり、「MIPCOMカンヌ2023」に40か国以上から260社以上が出展する見込みがあると、主催するRXフランスから発表されている。参加者数は110か国から1万2000人、内バイヤーは3000人が参加する予定だ。
また今年は中国が主賓国を務めることが決まり、中国から300人以上、40社近くの企業がカンヌに集まるという。過去の主賓国には日本をはじめ、トルコ、メキシコ、フランス、韓国が並び、中国は2018年以来、2回目の主賓国となる。
コロナ禍を経て国際展開に再び注力する中国にフォーカスが当たり、新作コンテンツを紹介する「フレッシュ・コンテンツ・チャイナ」セッションや中国の国際共同製作、配給戦略をテーマとしたプログラムが用意される。さらにテンセントのヴァイス・プレジデント兼テンセントオンラインビデオCEOであるSun Zhonghuai氏の基調講演が16日に予定されている。
第7回目の開催となる業界唯一の賞「ダイバーシティTVアワード」の授賞式もMIPCOMカンヌにおける注目のプログラムの1つにある。MIPCOMカンヌと、創設プレゼンティング・パートナーのA+Eネットワークスおよびデータ・プレゼンティング・パートナーのグレースノートが共同で主催し、イギリス系ナイジェリア人のジャーナリスト、フェミ・オケ氏が司会を務める。
同アワードは多様性のあるコンテンツやこれを推進する人物にスポットライトを当て、人種・民族部門、障がい者部門、LGBTQIA+部門、キッズ部門別に受賞コンテンツが発表される。今回、LGBTQIA+部門にてNHKドラマ『作りたい女と食べたい女』がファイナリストに選ばれ、日本からは唯一のノミネートを果たしている。
■日本ドラマ10作品ノミネート、バラエティ6作品プロモーション
日本の国際ドラマフェスティバル in TOKYO 実行委員会が主催する恒例の「MIPCOM BUYERS’AWARD for Japanese Dram」受賞式も予定されている。16日朝8時から会場のホテルマジェスティックで、ノミネートされた10作品【『大奥』(NHK)、『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ)、『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日)、『VIVANT』(TBSテレビ)、『ブラックポストマン』(テレビ東京)、『silent』(フジテレビ)、『フェンス』(WOWOW)、『何曜日に生まれたの』(朝日放送テレビ)、『罠の戦争』(カンテレ)、『勝利の法廷式』(読売テレビ)】からグランプリおよび奨励賞が当日発表される。
また恒例企画となる日本の番組フォーマットのプロモーションイベント「TREASURE BOX JAPAN」(トレジャー・ボックス・ジャパン)が一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)主催、総務省の後援で開催される。16日14時15分からMIPCOM会場内で日本テレビ、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、読売テレビ、朝日放送テレビの6社が新作の番組フォーマットを発表する機会を得る。
今回は新たな試みとして、BEAJ会員社に発表作品を募り、審査員の元ソニー・ピクチャーズで現在スモール・ワールド代表のティム・クレセンティ氏と、元エンデモルで現在エンパイア・オブ・アルカディアのファウンダーであるフォティニ・パラスカキス氏、BEAJシニアマネージャーのマチュー・ベジョ氏、BEAJ事務局が厳選なる審査の上、6社の作品が選ばれた。
発表される日本テレビ 『5 Friends, 5 Favours!』 (『5 ライフセイバーズ』)/TBSテレビ 『THE MUSCLE DOOR』 (『マッスルドア~ガリガリからの脱出~』)/テレビ東京 『Dont Laugh at My Song!』(『ゴッドタン・マジ歌選手権』)/フジテレビ 『Let me tell your fortune』 (『突然ですが占ってもいいですか?』)/読売テレビ 『Child’s Play』 (『超懐古心理遊戯 チャイルドプレイ』)/朝日放送テレビ 『Money Seconds』 (『一刻千金』)は作品やその企画力を世界に向けて売り込む。
世界各国の強力作品が集まり、新たなストーリー、新たなコンテンツ流通トレンド情報が発信される「MIPCOM カンヌ2023」現地の模様については開催後、リポートする。