福島中央テレビ『1Fリアル あの日、原発の傍らにいた人たち』が第59回ギャラクシー賞テレビ部門 大賞を受賞
編集部
放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体を表彰する「ギャラクシー賞」(放送批評懇談会)2021年度テレビ部門で、福島中央テレビ制作のドキュメンタリー『1Fリアル あの日、原発の傍らにいた人たち 』が大賞を受賞した。
福島中央テレビは、原発の水素爆発映像を撮影した唯一の地元テレビ局として、福島で取材・報道を続けてきた。本ドキュメンタリーでは、10年にわたる取材活動から辿り着いた自衛官や消防隊員、作業員たちなど、当時を知る人たちの貴重な証言や映像をもとに、決死の覚悟で原発の暴走を食い止めた彼らの思いに迫った。
ギャラクシー賞 テレビ部門 審査委員長の古川柳子氏は、「沈黙する時間と向き合って、初めて聞くことができる、知ることができる事実があると教えてくれた作品です」と評価した。
■作品概要
作品タイトル:「1Fリアル あの日、原発の傍らにいた人たち」
放送:2021年9月11日(土)16:00~17:00
制作:福島中央テレビ
ディレクター:岳野高弘(報道局報道部 部次長)
プロデューサー:木村良司(報道局報道部 部長 兼 福島報道部 部長)
2011年3月に歴史上最悪の事故を起こした福島第一原発・通称「1F」。その原発のすぐ傍らにいた人たちがいる。原発の安全神話、日本の技術力神話が崩壊する瞬間を目の当たりにした人たち。そこで何が起きていたのか。その謎を10年経った今、トップが福島中央テレビに答えてくれた。
原発と地域、人間のおごり、危機に立ち向かった人たち…。あの日、原発の傍らにいた人たちの証言は後世に伝えるべきものばかりだった。
プロデューサー:木村良司(報道局報道部 部長 兼 福島報道部 部長)
原発事故当時、私は小さな2歳の娘と給水所に並んでいました。あのとき、福島第一原発で何が起きていたか。当時は単なる不安を感じていましたが、今、この仕事に携わることで、県民に伝えることができます。
当時こんなことがあったんだと、10年目に形として放送することができ、評価していただいたことをうれしく思います。弊社の報道に携わるスタッフの中には、震災後に入ってきた者も多くなりました。これから先、当時のことを語り継いで多くの方に、何があったのか、何を伝えなければいけないのか、日々取材を通して積み重ねていくことが大事だと改めて思います。
廃炉には途方もない時間がかかります。処理水の海洋放出も迫る中で、日々取材しながら語り継ぐことが地元メディアとして大切なことだと思います。
ディレクター:岳野高弘(報道局報道部 部次長)
原発事故当初の取材は、被災した住民の方の取材からでした。そこから10年経って、事故当時、原発でどういうことが起きて、誰がどう動いていたのか取材してみようと思いましたが、時間が経過しているので、該当者はどこにいるのか、探すのにも相当の時間がかかりました。
私自身、長崎出身で、こどものときから長崎原爆資料館を訪れて、核に対する恐れは小さいころからもっていました。今回の取材のきっかけにもなったのではないかと思います。
今、テレビ以外の発信メディアはたくさんあります。「福島の今」を伝えていくには、実際に取材して、足を運んで、話をきいて、事実を確定していくことが大切だと思います。さらに、地元メディアとして長期的・歴史的観点から、例えば戊辰戦争、終戦、原発事故、という歴史的な流れから福島の今をとらえることが大切だと思います。
長い視点で見ないとわからないことがあるということを、今回の番組制作を通して改めて気づきました。福島の人がなにを考えているか、という視点を持って今後も取材をしていきます。