地域の社会貢献活動や地元企業を応援!テレビ新広島が独自のクラウドファンディング・プラットフォーム「TARUBO」開設した理由
編集部
株式会社テレビ新広島 事業開発部 副部長 森星嘉氏
株式会社テレビ新広島(以下、TSS)は8月23日、独自のクラウドファンディング・サイト「TARUBO」を立ち上げた。テレビ局がクラウドファンディングのプラットフォームを立ち上げるのは異例のこと。第一弾として地元企業などと連携した3つのプロジェクトがスタートした。
TSS事業開発部の副部長・森星嘉氏に、自ら起案者となって同サイトの立ち上げに至った理由や経緯、テレビ局がクラウドファンディングを行うことの意義、今後の展望などについて伺った。
テレビ新広島、TSSクラウドファン ディング 「TARUBO」を開始 地域や地元企業を応援
■困難な状況の中、地域メディアとして行動を起こしたいという思い
――クラウドファンディング・サイト立ち上げのきっかけを教えてください。
森氏:コロナ禍の影響でイベントやコンサートなどが開催できなくなってしまったので、私が所属する事業開発部では新しいチャレンジを模索していました。さまざまな案を検討する中で、テレビ局としては珍しいクラウドファンディングが良いのではないかという流れになりました。
――起案者となられたそうですが、どういった理由で発案されたのですか?
森氏:いろいろなところでクラウドファンディングを見かけるようになり、広島でも大手企業などが資金調達の場として活用しているという事例があり、テレビ局としても関わっていくのが面白いのではないかと純粋に思いました。
――テレビ局としてクラウドファンディングに取り組む意義は?
森氏:人口減少などで地方都市経済の厳しさが増していることに加えて、コロナ禍や西日本豪雨を始めとする大きな災害が起こった影響で、非常に困難な状況に置かれている生活者の方々や事業者がたくさんいます。地域メディアとして社会貢献や地域振興のために、何か行動を起こさないといけないと考えました。
――これまでと違う形で地域住民や企業との接点を持つということですね?
森氏:私たちの本業であるCMをいただいたり、番組で取材を行ったりするのとはまた違った、プロジェクトが終了した後も引き続き支援や協力ができるのではないかという思いもありましたね。
■広島県民に馴染みの深い「たる募金」から名付けられた「TARUBO」
――このプラットフォームの名称を「TARUBO」とした背景を教えてください。
森氏:創立間もない広島カープが資金難で経営危機に陥った1951(昭和26)年に、県民がカープ存続への思いから樽を募金箱にして支援を募りました。これは通称「たる募金」として知られていて、広島では「大切にしたいものをみんなで支える」ことの象徴です。この思いをいただいて「TARUBO」と名付けました。
――広島では「たる募金」をみなさん知っていらっしゃるのですか?
森氏:最近でもサンフレッチェ広島の新スタジアム建設に向けた募金や、西日本豪雨からの復旧支援金なども「たる募金」で募られています。「応援する」=「たる募金」のようなイメージは根付いていますね。
――第一弾の3つのプロジェクトについて、簡単に教えてください。
森氏:まずはTSSが出品者(発起人)になっている「『医療従事者に感謝のお花を届けたい!』広商高校生の思いを応援するプロジェクト!」。これは県立広島商業高校の高校生たちの企画を応援するプロジェクトです。
次に、広島県では「餃子家 龍」で有名な井辻食産さまによる「小麦アレルギーの方も安心して食べられるグルテンフリー餃子普及促進プロジェクト」。そして平岡工業さまの「Made in Hiroshima 広島の職人がこだわり手掛けた抗菌マスク/フェイスシールド」(こちらのプロジェクトは2021/09/13に終了)の3つです。
――TSSが発起人となるプロジェクトの基準は決まっていますか?
森氏:現状、広島もコロナ禍の緊急事態宣言状況下で当面厳しい状況が続きますので、そのプロジェクトが本当に社会貢献や地域振興につながるのかどうか、そういうメッセージが出せるかどうかが基準となっています。コロナの状況を見ながら、県民に喜んでもらえるテレビ局ならではエンタメ的なものも開発していけたらと考えています。
――個別企業からのプロジェクトは、どのようにして発掘するのですか?
森氏:TSSには地元企業を紹介する『情熱企業 新たなる価値の創造』という番組があります。今回のプロジェクトは、ここで取り上げる形でお付き合いがあった企業にも相談させていただきました。
■テレビ局ならではの告知や情報拡散が期待できるクラウドファンディング
――起案者が「TARUBO」でクラウドファンディングを立ち上げる利点は何ですか?
森氏:通常のクラウドファンディングでは、プロジェクトを告知し支援者を募るのは起案者が基本自力で行わなくてはなりません。しかし「TARUBO」ですとサイトの周知につながるCMなどでの広報をTSSがどんどんしていきますので、そこで起案いただいたプロジェクトをたくさんの県民の方に目にして頂くことが可能になります。
――TSSの番組で紹介することはありますか?
森氏:はい。自社番組の『ひろしま満点ママ!!』『TSSライク!』『西村キャンプ場』『全力応援スポーツLOVERS』『釣りごろつられごろ』など、若年層、主婦層から中高年、アウトドア好きといった、幅広いジャンルの番組を制作放送していますので、ターゲットに応じた最適な形で番組でも応援できればと思っています。
――実際にプロジェクトがスタートして、反応はいかがですか?
森氏:ある程度は想像していましたが、そんなに簡単ではないということを実感しています。コロナ禍の影響でプロジェクトの開発や告知などが予定通りに進んでいないこともありますが、今後の課題として改善していきたいと考えています。
■新しい形で地域住民や地元企業と接していきたい
――今後の展開について、お考えのところを教えてください。
森氏:ありがたいことに、CMでの告知を流して実際にサイトを公開してから、自社でプロジェクトを立ち上げてみたいとうお問い合わせをいただいています。これらの企業とは、真摯に商品開発やアイデアのところから相談して進めていきたいと考えています。
――これまでの地元企業との関わりとスタンスが変わってきますね?
森氏:プロジェクトに関わるということは、商品開発のスタートから一緒に協力して進めることにもなりますので、これまでと違った接し方になります。社内的には新たな知見を得ることができ、テレビ局が地域のビジネスパートナーのようにもなれます。
――SNSなどでの告知の活用も視野に?
森氏:今の若者が“テレビ”から離れていっているという危機意識を持っています。eスポーツやVTuberを盛り上げるプロジェクトなど、エンタメを絡めた発信ができれば、ネット世代の方々に「TARUBO」を知っていただけます。そこからテレビに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
――最後に、メッセージをお願いします。
森氏:クラウドファンディング・サイトの運営は、日々感度を高くしていろんな情報を集め、さまざまな企業と話をするからこそ続けられるのだと思っています。「TARUBO」をなんとしても成功させ、地域に役立てていけるように、そして全国に誇れるようなものにしていきたいと考えています。応援よろしくお願いいたします!