初のバーチャル開催「CES2021」で見た“次世代テレビ”まとめ
IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志
2021年1月11日から14日(日本時間)にかけて、世界最大級のエレクトロニクス関連見本市「CES 2021」が開催された。20年1月から世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス禍によって、今回は初のバーチャル開催となり、プレスカンファレンスも展示もすべてオンラインで行われた。これまでのように会場のブースのサイズや展示方法などでメーカーの意気込みを感じ取ったり、取材に訪れる記者たちの盛り上がりで注目度を肌で感じることはできなかったが、日本など海外にいながら最先端技術に触れられる初のチャンスになったと言える。
CES 2021ではテレビ・ディスプレイ関連でどのようなトレンドが垣間見られたのか、紹介していこう。
■CES 2020に引き続き、ミニLED搭載テレビが続々登場
CES 2021では、2020年に引き続きミニLED搭載テレビの最新モデルが続々と登場した。ミニLEDは液晶テレビのLEDバックライトを細分化して敷き詰め、数千以上に分割したエリアごとに明るさをコントロールする"ローカルディミイング"と呼ばれる技術を採用することで、従来の液晶テレビよりも高コントラストな映像表現を可能にするというもの。1個1個の画素をコントロールする「マイクロLED」は自己発光タイプ有機ELテレビと同じような映像表現が可能になるものの、フルハイビジョンから4K、さらに8Kと高画素化するほどにコストがかなり高くなってしまうため、大画面と高画質を両立する最適解としてミニLEDが注目されている状況だ。
LGエレクトロニクスはCES 2021で初の「QNED Mini LED TV」を発表した。量子ドット技術とナノセル技術、ミニLED技術を用いることで、従来の液晶テレビよりも明るさとコントラストを大幅に改善したという。
最大約3万個のミニLEDを最大約2500個の調光ゾーンに分け、ローカル調光技術を組み合わせることで、高いピーク輝度と100万:1のコントラスト比を実現するとのことだ。
TCLは9万個以上のミニLEDと数千カ所に分割したコントラストコントロールゾーンによって明るさと高コントラストを両立した第2世代ミニLED技術「OD Zero mini-LED」を発表。「OD Zero」というのは、従来は10~25mmが一般的だったバックライトと拡散板との間隔をほぼ0mmまで近付けたというもの。これによって超薄型設計を実現した。
■サムスンはミニLEDに加えてマイクロLEDも発表
サムスン電子は、従来のLEDの約40分の1の高さに設計した「Quantum Mini LED」を採用したテレビを発表。レンズを使用してLEDの光を分散する手法の代わりに、多くのミニLEDを敷き詰めた非常に薄いマイクロレイヤーを備えているのが特徴となっている。これをQuantum Matrix Technologyによって正確にコントロールすることで、より高コントラストな映像表現が可能になったとのことだ。
さらに同社は、2021年内に110インチと99インチ、88インチのマイクロLEDテレビを発売すると発表した。有機ELテレビと同様に2400万個(1画素はR(赤)、G(緑)、B(青)それぞれの色のLEDで構成。4K解像度の場合およそ4000×2000=800万画素なので、合計2400万個となる)ものマイクロLEDを個別制御することで、驚くほどリアルな色と明るさを生み出すとしている。画面と本体の比率が99%を超える“モノリスデザイン”になるとのことだ。
インテリア性を高めたテレビとして注目される「The Frame」は2017年の発売以来100万台以上の販売実績を重ねており、最新バージョンはよりスリムでよりカスタマイズ可能になったという。
フレームは従来よりも約半分にまで薄くなっており、5つのカラーオプションと2つのスタイルが選べるようになった。さらにアート作品を自動的に表示するサブスクリプションサービスも用意しており、1400以上の厳選された作品の中からユーザーの好みをAIが分析して表示してくれるとのことだ。
ソニーはマイクロLEDの先駆けとなった「Crystal LED」の最新モデルをCES 2021で発表した。2017年に発売した企業向けモデルに新モデルが追加された形になる。
高コントラストが特徴のCシリーズと、高輝度が特徴のBシリーズをラインアップ。Cシリーズは「ディープブラックコーティング」を採用することで、100万対1という高コントラストを実現。Bシリーズは明るい環境でも見やすい1800ニトの高輝度を実現しており、表面は反射防止コーティングを施した非光沢仕上げになっている。
一般家庭向けではなく企業の施設などに用いる製品だが、より明るい空間でも使えるもの、より映像表現にこだわったものが登場したことで、さらに導入場所が増えそうだ。
■ステイホームで注目される!? ハイセンスの「レーザーテレビ」
ハイセンスは新開発したRGBレーザー光源を用いた超短焦点プロジェクター部と大型スクリーンで構成するレーザーテレビ「TriChroma Laser TV」を発表した。プロジェクター部にスピーカーを内蔵しており、360度サラウンド音響を実現するというもの。画面サイズは75インチから100インチまで用意する。
同社はLaser TVシリーズを2014年から展開しているが、2020年の海外売上高は前年比288%増加し、米国やメキシコ、オーストラリアなど世界17カ国で大きく売れたという。
「レーザーテレビ」と名が付いているものの、超単焦点プロジェクターと専用スクリーンを組み合わせたもので、かつて製品化されたリアプロジェクションTVにも似たコンセプトの製品だ。とはいえ一般的な液晶テレビに近い430ニトの明るさと、最新のテレビカラー規格(BT.2020)を最大107%カバーする色再現性を実現している。
最新モデルではAIスマートカメラを搭載しており、オンラインカラオケやフィットネスなども楽しめるという。
ハイエンド液晶テレビでは1000ニトを超えるモデルも出ている中で輝度はもう少しほしいところではあるものの、プロジェクターを昼間のリビングなどで使うというのはなかなか面白い。ユニークなコンセプトなだけでなく、十分に実用性もありそうだ。
■ステイホーム時間が延びたことでテレビへの注目も高まる?
2020年初頭に発生し、全世界に蔓延した新型コロナウイルス禍は、未だに終息の兆しが見えてこない。三密の回避、不要不急の外出自粛の要請といった状況下でステイホーム時間が延びたことで、我々の生活も大きな変化が求められている。
そんな中で注目度が高まったのが、ホームエンタテインメントであることは間違いない。テレビの販売台数が大きく伸びたという数字は特にないものの、設置がとても簡単なLEDシーリングライト一体型プロジェクターが大ヒットしており、ステイホーム時間をより快適に、楽しく過ごすソリューションの注目度は高まっている。
こうした中で筆者が魅力的に感じたのがハイセンスの「TriChroma Laser TV」だった。レーザーテレビ自体は以前から販売しているが、家の中のエンタテインメントの王様であるテレビをより大画面で楽しめる製品のニーズはさらに高まるのではないかと思われる。日本では販売されていないが、今後日本国内での展開も楽しみにしたいところだ。