今どきの大学生が考える、若者に向けたテレビコンテンツの届け方【産学連携PJ】(後編)
編集部
日本の未来を担う学生とScreensによる産学連携プロジェクトがこのほど立ち上がった。“テレビ” (※1)の「新しい価値」を発見・発信していく企画の第一弾「大学生のリアルな“テレビ”視聴」をテーマに追究していく。若者のテレビコンテンツ視聴の実態を明らかにすることで、放送業界が抱えている「若者の“テレビ”離れ」の課題解決に繋げていくことが目的にある。10月10日に調査発表会が行われ、その模様を全3回にわたってお伝えする。
(※1)“テレビ”…放送、インターネット配信で届けるテレビコンテンツを総称して“テレビ”と表現。
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■若者の“テレビ”視聴の鍵となる「TVer」
これまでの調査結果でみえてきた「大学生のリアルな“テレビ”視聴の実態」(前編)や「SNSの使い方」(中編)から、“テレビ”離れをしてしまった若者の視聴を促すには、キャッチアップサービスの「TVer」と「情報発信」が鍵を握るとまとめたところである。まずは、「TVer」が担う部分だが、
スマホアプリでも利用できるTVerは手軽に使うことができ、スマホを長時間利用する(※前編「大学生のスマホ利用状況」参照)大学生の生活スタイルに合っているはず。では、彼らが期待するテレビコンテンツの視聴スタイルとは、どのようなものなのだろうか。
「面白い部分だけ、好きなタレントが出ている部分だけ見られたら嬉しい」「コンテンツに対する評価を事前に知りたい」(=TVerでレビューなどが見られたら嬉しい)といった意見が並んだ。これらの点を踏まえて、「TVerに期待する機能、コンテンツの例」が提案された。
キーワードは「分冊する」「配信期間」「好きな作品に出会いやすくする」の3つ。
1つ目の「分冊する」とは、コンテンツを短い尺で視聴できることに重きを置いたもので、「例えば、(ドラマの)第1話の第一部といった分冊のような形で、大事な部分だけ見ることができると効率が良い」と説明。
2つ目の「配信期間」については「(ドラマの)1話だけ配信期限を設けないでほしい」「途中で話題になった作品を半クールまとめて配信してほしい」という意見。これは「SNSで話題になったことを知った場合、1話を視聴することができれば、後からでも追いつくことができる」「半分まとめて見ることができれば続きに興味を持つ」といった理由からだ。
3つ目の「好きな作品に出会いやすくする」については「ユーザーのレビューの書き込み、閲覧を可能にする」といったものや「コンテンツの内容(恋愛、ミステリー、タレント)ごとに細かくカテゴリーを作ってコンテンツを探しやすくする」というものだった。
■SNSを使ってTVerの認知度をアップ
ゼミ生へのアンケートで「TVerを知らなかった」と答えた学生が数名いたことから、「映像系のゼミにも関わらず、TVerについて知らなかった人がいたため、一般の大学生もTVerを 知らない人がいるかもしれない」と「TVerのプロモーション施策のアイデア」も披露。
アイデアとして、「SNSでの宣伝」「若者向けの雑誌などによる特集」といった案が出された。「SNSでの宣伝」案については、中編でお伝えした「大学生のSNSの使い方」を踏まえ、Instagramのストーリーの活用を提案。「Instagramではストーリーをよく利用するため、流れでストーリー広告も見るが、テレビ番組自体のストーリー広告はあまり見ない」のが理由だという。また、TVerの視聴人気ランキングをSNSで通知するのも、今盛り上がっているものが可視化され、“他人の意見が気になる”大学生には届くのではないか」とまとめた。さらに提案された「若者向けの雑誌などによる特集」は、ゼミ生に女性が多いこともあり、「non-no」などの雑誌モデルによる放送中の番組レビューやオススメ番組の紹介などがひとつの例に挙げられた。
■Instagram、Twitterを使ってテレビコンテンツの情報を届ける
■若者の“テレビ”視聴を促すための「情報発信」
続いて、「情報発信」について。これは、中編でも述べているが、SNSで情報検索を頻繁に行なっている学生から「テレビコンテンツについての情報がない」という声をもとに出されたものだ。
こちらもInstagramを使った案から披露された。実際、各局すでにInstagramで番組公式アカウントを持ち、様々な情報を発信している。しかし、ゼミ生にアンケートしたところ「番組の公式アカウントがあるのは知っているが、番組を見ていないとフォローしようと思わない」といった厳しい意見もあり、これらの声をもとに『インスタライブ』の活用が挙げられた。
インスタライブとは、Instagramで動画をリアルタイムで配信できる機能で「出演者によるインスタライブはドラマの出演者と一緒にドラマを視聴しているかのような時間の提供を行うことができる」「視聴者もコメントでき、他の視聴者のコメントも見ることができ、他人とドラマについて共有できる」といった可能性を示唆した。
また、大学生の利用頻度が高いTwitter上で、公式による番組の「ダイジェスト版の作成」が提案された。バラエティ番組であれば30秒ぐらい、ドラマであれば話題になったシーンやセリフを抜粋した公式のショート動画として流すことで「短い期間でこの番組は面白いかもという情報を発信できる」と。
そして、最後に挙げられた「イベント展開」は「大学生は忙しくても、ライブやイベントには時間を作る」という意見が出たことから「テレビを視聴する時間をイベント化することでコンテンツを共有する」といったものだった。
具体例の場所にはカラオケや飲食店などを挙げ、その参加店舗でドラマを放送し、さらに「コラボメニュー」や「インスタ映えする空間」が提供されることで盛り上げ効果を狙うというのだ。
大学生の発表は以上となったが、会場の参加者から主にSNSの使い方についてや、動画広告に対する率直な意見を求める声などが寄せられていた。
記事:編集部
協力:長谷川朋子