今どきの大学生がSNSを利用する理由とは?【産学連携PJ】(中編)
編集部
日本の未来を担う学生とScreensによる産学連携プロジェクトがこのほど立ち上がった。“テレビ” (※1)の「新しい価値」を発見・発信していく企画の第一弾「大学生のリアルな“テレビ”視聴」をテーマに追究していく。若者のテレビコンテンツ視聴の実態を明らかにすることで、放送業界が抱えている「若者の“テレビ”離れ」の課題解決に繋げていくことが目的にある。10月10日に調査発表会が行われ、その模様を全3回にわたってお伝えする。
(※1)“テレビ”…放送、インターネット配信で届けるテレビコンテンツを総称して“テレビ”と表現。
【関連記事】今どきの大学生のリアルなテレビ視聴の実態【産学連携PJ】(前編)
「大学生のリアルな“テレビ”視聴の実態」をお伝えした前編に続き、中編は大学生が日常で最も時間を割いているというSNSの使い方を調査した結果を報告したい。
■Instagramは投稿より「ストーリー」機能を重視する大学生
前編で「大学生のリアルな“テレビ”視聴の実態」を調べたところ、普段、テレビコンテンツの視聴習慣がない大学生はInstagramやTwitter、YouTubeといったSNSに時間を割いていることがわかった。では、大学生はどのようにSNSを使っているのだろうか。
藤田ゼミ生にインタビュー調査した結果、「大学生のInstagramの使い方」に次のような特徴があった。
まず、大学生は「フィード投稿よりもストーリー機能を重視」する。ストーリー機能は24時間で投稿が自動的に消去されるため、「軽い気持ちで投稿でき、他人の投稿もよく見る」という。それに対して、フィード投稿は、24時間以降も写真が残り続けるため、「アルバムのような感覚で、イメージの統一感を崩さないよう慎重に写真を選定する」という。結果、「ストーリー機能よりも利用頻度は少なく、他人のフィード投稿もあまり見ない」そうだ。
Instagramを使ったプロモーションを検討する際、参考になる利用実態ではないだろうか。
また「大学生のTwitterの使い方」については、インタビュー調査の結果、「伝達速度が最も早い情報収集ツール」「リアルタイムで他人の意見がわかる」「趣味など利用目的に合わせて複数のアカウントを作ることができる」「世の中でバズっているショート動画をチェックする」といった利用目的があることがわかった。
Twitter上ではリアルタイムで他人の意見がわかるため、「放送中の『金曜ロードSHOW!』などを視聴しながら利用するケースもある」という意見も出た。
これらのインタビュー調査結果から、大学生がSNSを頻繁に使う理由をまとめると、「リアルタイムでだれが何をしているのかすぐにわかる」「自分の趣味や好きなことに共感してほしい」「世間の最新の流行がわかる」という3つのポイントにまとめられた。
以上のことを踏まえ、大学生に何か情報を届けるには、SNSでも「大学生が使っている機能を使って情報発信を行うと、より効果的ではないか……」とそんな意見も出た。
■YouTube、動画配信サービス系アプリをよく使う
大学生のSNSの使い方に続いて、「よく使っているSNS以外のアプリは何か?」というアンケート結果(複数回答可)では、「視聴習慣あり(88人)」の大学生、「視聴習慣なし(72人)」の大学生共に「YouTube」と「動画配信サービス」が 上位に上った。その他、「ソーシャルゲーム」や「音楽、漫画アプリ」の利用も票を集めた。
この結果から「テレビコンテンツの視聴習慣がある人は動画をスマホで視聴する傾向が高い。興味深いのはテレビコンテンツの視聴習慣の有無にかかわらず、YouTubeは比較的に見ているということ」とまとめた。
さらに、テレビコンテンツの「視聴習慣のなし(72人)」の大学生のYouTubeの利用を調査したところ、「YouTubeを選ぶ理由」には「スマホでいつでもすぐに見られる」「テレビコンテンツと比べると比較的短尺が多いから、スキマ時間で視聴でき、中断することも容易にできる」「おすすめ機能が優秀。レコメント機能で次から次へと見てしまう」「コメント欄で他人の意見がわかる」「視聴履歴がわかる」「自分の好きなコンテンツがどんどん上がっていく」といったものが集まった。
これらの理由に対して「忙しい大学生にとって、コンテンツを見る時間を避くべきかどうかを事前に判断することはできることは重要視される。そういった意味でもレコメンド機能は利便性が高いものだと考えられている」と解説された。
また「視聴習慣なし(72人)」の大学生を対象に調査したYouTube動画のジャンルや内容も明かされた。
結果は「YouTuber」が15票、「お笑い、おもしろ動画」が12票、「アニメ、ゲーム実況、アイドル関係」が各5票を獲得し、「スポーツ、ダンス動画」は各4票、「動物の癒し動画」は3票、「音楽番組、洋画」は各2票だった。
■コンテンツに時間・エネルギーを支払う価値があるのかを常に判断している
ここで、これまでの調査結果から「大学生の“テレビ”離れの実態」を3つの観点から考察された。
1つ目は「大学生は忙しい」という点に注目したもので、「アンケートを行なった上で『時間がない』『忙しい』という意見が最も多かった。理由は『家にいたとしても1時間もテレビ(受像機)の前に座ることがない』『自分の興味のあるもの、好きなものだけ見たい』『スマホでYouTubeを見る方が気軽に楽しめる』『SNS(InstagramやTwitterの投稿)を見るような流れで視聴できる』といったもの。またバラエティ番組については、放送回によって面白さに差があり、『YouTubeなどのまとめ動画や面白い場面を切り取ったもの、話題になった回だけを見た方が面白い』という意見があった。これは『“テレビ”を見る』という行為そのものの優先順位が低いということなのではないか。時間がない中で面白くない、無意味だと思うものに時間を割きたくないといった、コンテンツに対してかなり厳しい目で見ているように感じた」と意見が述べられた。
続く2つ目は「他人の意見が気になる」という点。これについては「調査の結果、『SNSで繋がっている友人が面白い、といった動画が気になって見たりする』、『評価が高い動画はチェックする』、『SNSでいろいろ調べてから見るかを判断する』といった意見が多く、事前に判断できないものに時間を割きたくない傾向がある」と説明した。
また「大学生は忙しい」と「他人の意見が気になる」という意見の背景には「忙しいがゆえにスマホで視聴できる動画の方が視聴しやすく、コンテンツに対して時間などのコストが小さく気軽だから。忙しい時間の中で面白いとわかるものだけ選択しているのはコンテンツにコスト(時間・エネルギー)を支払う価値があるのかをどうかをいつも自然と頭の中で判断しているから」といった考えがあることを説明した。
そして3つ目にあたる「テレビコンテンツについての情報がない」という意見にも注目し、「大学生が頻繁に使うSNSツールにはテレビコンテンツの情報が降りてきていない。アンケート調査で高校1年生や大学1年生のなど生活が変わる進学のタイミングで可処分時間の価値が上がり、テレビコンテンツではなく他のことに時間を費やすようになっていることがわかった。さらに、テレビコンテンツに関する情報にも触れなくなり、さらに“テレビ”から離れていく傾向があるが、『テレビコンテンツに面白いものがあるとわかれば(SNS経由などでそういった情報が届けば)視聴する』という意見もあった」と報告された。
以上の考察から、「3つの意見をまとめると、“テレビ”離れを防ぐためには2つの必要な要素がある」と結論づけた。
1つは、いつでもどこでもテレビコンテンツを楽しめるようにするための「時間と場所の解放」。具体的には「“忙しい”大学生でもスマホにはよく触れているということがわかっため(前編「大学生のスマホ利用時間」を参照)、スマホアプリである『TVer』が担う部分が大きい」と。そして、もう1つの要素としては、「情報発信」。テレビコンテンツに関する情報は、エンタメニュースとして様々なメディアで取り上げられているが、SNSで情報検索などしている大学生からは「テレビコンテンツについての情報がない」という声も。これを踏まえ、「大学生のメディア接触に合わせた情報発信がポイントになってくるのではないか」とまとめた。
これらを踏まえ、学生視点で、大学生がよりテレビコンテンツに触れるためにはどのような施策が効果的であると考えたのか、後編でお伝えする。
今回、中編では大学生の日常に欠かせないSNSの利用の実態がみえてきた。報告会では実際にゼミ生が日常で頻繁に利用しているInstagramの「ストーリー」機能を披露する場面もあり、仲間と日常を効率的に共有できるツールとして利用されている様子を垣間見ることができた。
記事:編集部
協力:長谷川朋子