VR/AR、ロボット/AI、4K/HDRが導くテレビの未来【クリエイティブテクノロジーラボ レポート】
編集部
日本テレビ技術統括局・日テレラボの主催の“クリエイティブテクノロジーラボ”。今年は特にクリエイターへの訴求力を高めたものとなり、参加者が実際に技術を体感しイメージできる「学びと体験のイベント」として開催された。日本テレビ注目の展示をレポート!
最新テクノロジーを分かりやすく体感
2017年3月7日、8日の両日、日テレタワーで行われたクリエイティブテクノロジーラボ(CREATIVE TECHNOLOGY LAB)は、副題の「最新テクノロジーが生み出す、クリエイティブ革命の先駆者になれ!」の通り、最新テクノロジーを展示しながらも、クリエイターたちが十分にイメージを高めることができるイベントだった。その狙いを、日本テレビ技術統括局技術開発部長の三浦勝志氏はこう語る。
「実際にクリエイターたちがどのように最新テクノロジーを利用できるのか、どうビジネスに役立てられるのかに気づいてもらうことを狙いとしています。そのため、難しい技術を説明したパネルは極力排除しました。興味や疑問点があれば説明員に直接尋ねて、接点を持ってもらうことも大切だと考えています」
その狙いの通り、クリエイティブテクノロジーラボは、VR/AR、ロボット/AI、4K/HDRなど最新のテクノロジーを展示しながらも、ほとんどすべてのブースで実際に技術に触れることができる「学びと体験のイベント」となっている点が特徴的だった。
ロビー展示となったロボット/AIのコーナーでは、実際にアンドロイド“ERICA”やロボットに話しかけることができたほか、VR/ARコーナーでは身体を使って最新技術を体験。
そして4K/HDRコーナーでは日本テレビグループ初の4K/HDR番組「LPGAツアー2016・最終戦」における経験を踏まえ、プロゴルファーのスイングを実際に映し4K/HDR映像の制作手法を見ることができた。
これまでにないホログラム(立体透過グラフィック)視聴を可能にするテオミルン
VR/ARコーナーにおいて日本テレビが出展していたのは「MRピアノ演奏視聴システム『テオミルン(teomirn)』」だ。これは次世代のピアノ演奏の視聴・練習システムで、VRとARを組み合わせたMR(Mixed Reality)の技術により、これまでにないホログラム演奏視聴や直感的な練習体験を可能とするものだ。
体験者は最新デバイスのヘッドセット(Hololens)を装着し、ピアノの前に立つ。没入感が得られるVRとは違い、MRではピアノの鍵盤の見える、閉塞感がないタイプのもの。そして、視野の中に指先を入れ動かすことによりシステムを操作する。
起動させると体験者の目には立体ホログラムが現れ、ピアニストがピアノを弾いている姿を見ることができる。そしてどのような角度から見ても、実際にそこにピアニストが演奏しているように見える。ホログラムのデータは、電子ピアノとモーションキャプチャ装置を組み合わせた独自システムで記録した、実際にプロのピアニストが演奏したものだ。
さらに広がるVR/ARの活用。未来のテレビは?
テオミルンは、後ろからでも横に座っても立体ホログラムがその位置のままで見えるため、部屋にあるピアノでライブを楽しむことも、横に座って直感的・効率的なピアノ練習をすることもできる。プロのピアニストの指運びをスローで確認することも可能で、楽譜を読むのが苦手な人でも手本をすぐ横で見ることができる。コンサートホールに行かなくては見られなかった実際のピアニストの動きを、家の中で、そして横に座った視野で再現可能となるのだ。
しかしテオミルンには、ヘッドセットが重く視野角が狭い、ホログラムがまだ粗いなどの問題点がある。これに対し開発担当者は、「これは開発のまだ第一歩という段階です。数年後には満足のいく形にしていきたい」と意気込みを語る。
この手指の動きを正確に記録できるテオミルンの技術を活用すれば、他の楽器はもちろん書道や手話などの習得ツールとして、あるいは伝統芸能のアーカイブ保存などにも応用可能だという。
また、スポーツ中継において選手がテレビの前に現れる、リビングでアイドル歌手のコンサートが開催されるといった、未来的なテレビの楽しみ方も提供可能な技術だ。このイベントでより魅力あるコンテンツやデザイナーと出会い、テレビの未来が拓けることを期待したい。