大泉洋も参加する『私たちの道』、道内テレビ6局合同キャンペーン実施の理由(前編)
テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子
北海道内のテレビ6局(NHK札幌放送局、北海道放送、札幌テレビ放送、北海道テレビ、北海道文化放送、テレビ北海道)は共同プロジェクト「One Hokkaido Project」を実施している。北海道命名150年を迎えた昨年からスタートし、これまでTEAM NACSら北海道ゆかりのアーティストらが参加する北海道の唄「私たちの道」を発表した。なぜ今、オール北海道で放送局の垣根を超えた共同事業に取り組んでいるのか?One Hokkaido Project実行委員会事務局の電通北海道に理由を聞いた。
■北海道命名150年を機に50年先の未来へ向けてキャンペーン始動
北海道内のテレビ6局共同プロジェクト「One Hokkaido Project」は昨年5月にNHK札幌放送局で行った記者会見で、北海道内テレビ6局の合同キャンペーンとして活動していくことを宣言した。初年度の事業コンセプトは「伝えていこう」。北海道命名150年を機に50年先の未来へ向け、「北海道のローカルテレビ局だからできること」を目指すものだ。実行委員長はNHK札幌放送局の若泉久朗放送局長が務める。民放5局の代表者もメンバーに入り、電通北海道および音楽イベント事業者のWESSを含めた全8社で構成される実行委員会形式で運営されている。
地域のメディアが一体となって取り組むプロジェクトは、北海道内はもとより、全国的にも珍しい。共同で取り組むことになったきっかけについて、企画・立案した電通北海道は「北海道を元気づけたい、という思いが一致した」と説明する。
今回は『北海道命名150年の年にローカルのテレビ局が地元を元気づけるために何をすればいいのか?』ということが主題にありました。オール北海道を打ち出していくことが必要です。『一緒にできることはないか』と、普段、仕事をご一緒できないNHKさんとも想いが一致したこともあって、今回を機に6局共同プロジェクトが実現しました」
■プロジェクト第一弾は初めて作られた「北海道の唄」
そして、第一弾の取組みとして制作されたのが「北海道の唄」だった。電通北海道が6局合同のプロジェクトとして相応しい取り組みを探っているなかで、全国の都道府県にはそれぞれ地域の『唄』が存在していることがわかったという。
「これまで北海道民の老若男女に共通する『唄』がありませんでした。何より『唄』は後世に残しやすいもの。プロジェクトのコンセプトに相応しいという理由から、北海道の唄を制作することにしました」
そこで、道民から「未来に伝えていきたい北海道」をテーマにメッセージを募集し、集まった道民の声から、北海道ゆかりの作詞家・なかにし礼氏、札幌市出身の作曲家蔦谷好位置氏のタッグで『私たちの道』が完成された。なかにし礼氏はどのような思いで『私たちの道』を制作するに至ったのか。このようなメッセージを寄せている。
「幼少期に生まれ故郷の満州から、北海道の小樽へと渡りました。北海道で暮らしていた経験や望郷の想いというものが、私の作った『石狩挽歌』や『北酒場』などの曲に少なからず影響を与えていたのは間違いありません。このたび、北海道命名150年という記念すべき年に、このようなお話をいただき、二つ返事で快諾いたしました。自分の道を探し当て、歩み始めた、自分の青春時代を思い出しながら、いまを生きる若者たちに向けて書き上げました。私が書いた詞に、蔦谷さんによる若々しい曲がつき、世代間を満たしたような作品になったような気がします。この曲の歌詞の言葉を信じ、この歌を愛していただけるのであれば、意義のある人生を歩める人間になり得るのではないか、そういう願いを込めて作り上げました」
歌詞には「世界は私たちを待っている」というフレーズがある。これについて電通北海道は「なかにし礼先生には『北海道から世界へ』という未来志向の歌詞を反映してくださるよう、お願いさせていただきました。プロジェクトに携わっている我々の想いを反映していただいて、感謝しています」とコメントする。また蔦谷氏には「50年先、100年先も歌い継がれていく合唱曲」をイメージする唄を依頼し、作られた。蔦谷氏本人のコメントも発表されている。
「20年ほど前に札幌を出て、音楽を生業に東京で20年ほど駆け抜けてきました。そんな北海道出身の自分にとって、なかにしさんからいただいたこの歌詞には、特別な感情を抱きました。その時に自分が感じた感情は、きっと多くの人が分かち合える感情なんだろうと思います。この曲には北海道に生まれ育った、もしくは住んでいるということを誇りに思い、自分の可能性を閉ざさず、突き進んでほしいという願いが込められています」
■総勢30組38名の「著名人バージョン」をYouTubeで公開
『私たちの道』の「合唱バージョン」
完成した楽曲『私たちの道』の「合唱バージョン」は昨年11月に発表された。市立札幌旭丘高校合唱部の歌唱による模範音源が制作され、その模範音源と楽譜はプロジェクト公式Webサイトからダウンロードできるかたちで配布されている。これまで40校から問い合わせを受け、反響を得ているという。道内の小・中・高校生が入学式、卒業式などの各種学校行事や昼休みなど校内放送に活用されていくようだ。
今年に入り、『私たちの道』の「著名人バージョン」のミュージックビデオも完成したところ。北海道出身やゆかりのアーティスト、俳優、タレント、アスリートが参加している。鈴井貴之、TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)など、総勢30組38名にも上る。
「NHKをはじめテレビ局各局がいろいろな方にお声がけさせてもらいました。皆さん趣旨にご賛同いただき、チャリティで参加していただいています。依頼させてもらった時期に北海道胆振東部地震の被害を受けていたこともあり、『北海道をより元気づけよう』と思いも高まっていました」
なおチャリティソングとして、著作権使用料や原盤印税などを「ほっかいどう未来チャレンジ基金」と日本赤十字社「平成30年北海道胆振東部地震災害義援金」に寄付される。
そして、キャンペーンソングとして「多くの道民にこの曲を知ってもらうこと」が目的にある。立体的な展開を心掛け、テレビCMをはじめ、各局の番組などでも紹介し、先日開催された『さっぽろ雪まつり』会場でも流れている。「著名人バージョン」のミュージックビデオはYouTubeでも一般公開されており、「予想以上の反響」という。
「記者会見後、テレビでキャンペーンCMを流したところ、YouTubeのアクセス数が増えていきました。テレビの影響力はまだまだあると思っています。記者会見の際、『テレビは終わったコンテンツと思われているところもあるけれど、そうではない。テレビそのものの元気のコンテンツを示したい』という思いを伝えました。唄の展開に続いて、2月には集大成として、6局合同の特別番組も予定しています」
6局合同の特別番組は2月23日(土)午後2時から1時間の同時生放送特別番組『みんなで道フェス!2019』の放送を予定している。後編はこの特別番組の制作背景や今後について引き続き電通北海道の担当者から聞いた話をお伝えする。