これからの『テレビ』はどうなるの?? 日テレラボ田代室長に聞くテレビの未来
編集部
日本のテレビ番組を代表するほどの人気を博す「世界の果てまでイッテQ!」を始め、軒並み高視聴率を押さえている日本テレビ。そこにこの夏発足した「日テレラボ」は、テレビの未来をどのように考えているのでしょうか? 日テレラボの田代室長にお伺いしました!
■時代の変化とともに、テレビはどう変わった?
「確かに変わった部分はありますが、変わらない部分だってあります。結果的に、それでもテレビにしかできないことがきっとあること、そして、これまでと同じように放送やテレビの必要性があることを感じてもらうのが重要です」
つまり田代室長は、これまで培った力を上手に活かし、柔軟に連携し合う姿勢が大切だと考えているのです。
「それでも、日テレラボが研究機関として調査した結果から、これまで価値があると言われた物事にその価値が見出せないという判断が出たときは、日テレとして、勇気を出して終わりを告げる場面が出てくるかもしれません」
■現在のテレビマーケティングに不足しているのは情報
「テレビ業界では、まだ世帯視聴率のデータを使っていますが、これだけ個人のライフスタイルが確立されて、家族の在り方も多様化しているのに、世帯データだけで正確な判断はできないはずです。また、私たちはどうしても東京を中心にした視点で情報を送りがちなところもありますから、意識改革をする必要があると思います」

田代室長は、データ不足がマーケティングに大きく関わっているという見解とのこと。それではAIやVR、360度カメラなどの新しいテクノロジーについてはどう考えているのでしょうか。
「こういう業界ですから、これまでのように、新しい技術や流行りモノには積極的にタッチすべきですし、利用するなら、我々ならではの知見で何かを加え、オリジナルな展開をしていきたいですね」
同じAIでも、いろいろな使い方があると語る田代室長。テレビ局という報道機関の使命として、正確な情報を伝えたり、番組を届けたりすること自体は、時代が変わっても必要です。だからこそ原点に戻って、見ている人をどう楽しませられるかに注力し、新しい技術をどう役立てていけるかを考えるのが、今後の課題であり挑戦だと教えてくれました。
■10年後のテレビは人が欲する形に変わる
テレビがファーストチョイスではなくなり、ユーザーが欲するものに応じてデバイスが選択される時代が訪れています。その中で、テレビはどのような動きをしていくべきなのでしょうか。
「いずれにせよ、人が欲する形にテレビの求められ方も変わっていくと予測されます。だからこそ、求められているものをいち早く察知し、作った方が勝ち!私はそう考えます」。
ネット上でプロ・アマが混在する時代だからこそ、これからはテレビ局が特権でやってきたという前提は意味をなしません。事業会社である日本テレビ放送網が何をやるか、プロ意識を持ち対抗していくことが肝要だと力強く語ってくれました。
■最後にScreensをご覧の皆様にメッセージをお願いします。
「日テレラボの研究発信先は事業現場です。基礎研究と自由研究を重ねながらそれを現場に展開すること。コンテンツメーカーという、コミュニケーションの場で仕事を頑張りたい人を支え応援するのが日テレラボの使命です。『テレビ』は単なる受像機ではありません。テレビが“みんなにとって良いこと(もの)”というところに帰結できるよう、素晴らしい人材を集めて育成し、皆さんに応援してもらえるようにしていきたいです」。
田代室長ありがとうございました。謎の多かった日テレラボのことが理解できたと共に、今回の取材を通じてたいへん親近感を抱きました。これから日テレがどう進化を遂げていくのか、日テレラボの影ならぬ活躍を見守っていきたいと思います。

――日本テレビ放送網株式会社 日テレラボ室長 田代早苗氏プロフィール――
幼い頃、日テレの子ども番組に2度ほど出演した際にテレビの裏方の仕事に興味を持つ。就職活動時、四大卒の女子を受け入れている会社が少ない中で日本テレビに入社。趣味は音楽とスポーツ観戦で、夏場は野球の生中継を観ることが多い。
座右の銘は特にないが、会社生活で得た教訓として、「人を見上げたり、見下ろしたりしない」。真っ直ぐに、いろいろな角度から物事を見るよう心がけている。
プライベートでは高校生の子どもが2人おり、テレビを観ている子供たちを観察しながら現代の若者の傾向を探るのが面白いと語る。