アジアに商機、香港発エンタメ見本市シーズン迫る 【「香港フィルマート2025」事前レポート】
ジャーナリスト 長谷川朋子
アジアを代表するエンターテインメント・コンテンツ見本市「香港フィルマート2025」の開催が来週に迫る。香港貿易発展局(HKTDC)が主催し、3月17日(月)から20日(木)までの期間、香港コンベンション&エキシビションセンターで行われる。日本をはじめ、香港、中国本土など世界中から約750社が出展を予定し、30を超える国や地域のパビリオンブースが展開される。今年の目玉は共同制作を促進する「プロデューサーズ・コネクト」とAI活用に焦点を当てた「AI Hub」の集中プログラムにある。アジア発マーケットトレンドを抑えたセッションも多数企画される。今年の香港フィルマートの注目ポイントを紹介する。
■日本から全36社の出展見込む
アジア発エンターテインメント・コンテンツ見本市シーズンのスタートを切る「香港フィルマート2025」は今年で29回目の開催を数える。例年通り香港島北部の灣仔地区にある香港コンベンション&エキシビションセンターのホール1を会場にアジア最大級の映画とテレビのトレードショーとして行われる。今年のイベント内容について主催する香港貿易発展局から発表されたところだ。
「香港フィルマート」は。「香港国際映画祭」など全9つのイベントで構成される「エンターテインメント・エキスポ香港」(期間:3月16日から4月27日)の主要イベントの1つにある。今年は過去最大級のイベントとして香港のエンタータイメント業界を盛り上げようと、エキスポ香港主催の香港貿易発展局をはじめ、後援する香港特別行政区政府の文化・クリエイティブ産業発展局(CCIDA)、映画発展基金、文化・スポーツ・観光局が地域間連携やデジタル変革を意識した内容を盛り込んでいる。

香港フィルマート初日の3月17日に開催される開会セレモニーでは、香港エンターテインメント大使を務める俳優のレオン・ライが香港の映画およびエンターテインメント文化促進の継続を改めて宣言する場となる。また今年はエキスポ香港に「香港映画音楽祭」が組み込まれ、3月18日には「秩序と混沌の響き」をテーマにコンサートの開催を予定する。

アジアクリエイティブ産業のビジネスハブの構築を目的とする「香港フィルマート」には日本を含む30を超える国と地域から750社・団体以上の出展者の参加が見込まれ、30の国と地域パビリオンが設けられる。新たなパビリオン参加はオーストラリア、カンボジア、フランス、インド、マレーシア、サウジアラビア、ベトナムが並び、チェコ共和国やカザフスタンなど新興国も初参加する。日本からの出展は、ユニジャパンおよび民放連がとりまとめた大型パビリオンをはじめ、TBSテレビや東宝、東映などによる単独ブースで構成され、出展社数は36社を見込む。昨年は40社が参加したが、今年の日本参加は縮小される。
■集中プログラム「プロデューサーズ・コネクト」新設
昨年の参加人数7500人を維持した規模が予想されるが、香港フィルマートを象徴する会場入り口正面の顔ぶれに昨年は変化も起こった。地元の香港メディアのブースはラム香港貿易発展局会長が創設した制作スタジオのメディア・アジア・エンターテインメントがブースを構える一方、これまで会場を盛り上げていた香港最大手の民放テレビ局TVBはブースを大幅に縮小したのが印象的だった。「VIPラウンジブース」をスポンサードするかたちで香港フィルマートの活用を変えていた。
地域間連携とデジタル変革をテーマにコンテンツ制作、配給、共同制作、投資のビジネスチャンスを促進する場としてマーケットの価値を高める動きも見られる。今年は目玉の1つとして文化・スポーツ・観光局、香港貿易発展局、香港映画発展協議会、香港貿易発展局の共同事業で、映画発展基金の資金提供が行われる「プロデューサーズ・コネクト」が設けられる。
この集中プログラムではパネルディスカッション、トークイベント、ワークショップ、ビジネスマッチングなどが予定され、香港および世界各国のプロデューサー同士のネットワークを構築し、共同制作を促進するとともに、新たな企画を支援するものとなる。
3月18日15時30分から予定されているセッションでは「Pitch in: Opportunities and Challenges of Europe-Asia Co-productions」と題し、欧州とアジアの共同制作を探るパネルディスカッションが行われる。韓国CJエンターテインメントの国際フィルムプロダクション責任者のJustin Kim氏や中国やトルコとの共同制作作品を手掛けるフランスのLes Petites LumièresのプロデューサーNatacha Devillers氏らが登壇する。
■映画・テレビのAI活用を促進させる「AI Hub」

デジタル変革に対応することを目的に映画ポストプロダクション専門家協会と香港映画プロデューサー・配給者協会が共同で「AI Hubパイロットプログラム」の新設も今回の目玉にある。展示ゾーンやカンファレンスなどで構成され、映画およびテレビ制作プロセス全体におけるAI活用を促進する内容が展開される。
展示ゾーンでは香港演芸学院(HKAPA)映画テレビ学部、レノボ、ソニーなどによるAIソリューションにスポットライトが当てられる。カンファレンスでは業界をリードする著名人やAIのパイオニアが集まり、AIの可能性を追求する専門知識が共有される。3月18日12時00分スタートの「Gearing up for the AI Opportunities」セッションは要注目である。香港のアニメーションスタジオHong Li Animation StudiosのプロデューサーであるYu Zhixin氏らが登壇し、AIを活用したグローバルヒットの作り方を考察する。
期間中、セッションプログラム「EntertainmentPulse」ではアニメや動画配信のアジア市場の展望を議論する場も設けられる。3月19日12時00分からは「Digital Entertainment Summit] Unlock Opportunities of the Dynamic Animation Market and Productions in Asia」と題し、アジアのアニメ産業の課題と展望が語られる。日本からはアニメプロデューサーでARCH代表取締役/創業者の平澤直氏が登壇する。
これらオフライン開催のほか、「FILMART Online IP Catalogue」では4月27日まで出展者とバイヤーのためのオンラインサポートシステムが用意されている。今年も「香港フィルマート」からアジアのエンターテインメント業界ビジネスの現在地が見えてくるだろう。