日本テレビが考える“eスポーツ事業”参入の意義と今後の構想~担当者に聞く<vol.2>
編集部
日本テレビは、2018年6月29日に記者会見を開き、eスポーツ事業への参入を発表。また、子会社「アックスエンターテインメント株式会社」を設立し、eスポーツチーム「AXIZ(アクシズ)」を立ち上げることも合わせて発表した。
この発表を受け、アックスエンターテインメント株式会社 代表取締役社長 小林大祐氏、チームマネージャー 橋本弘美氏にインタビューを実施。前編では、立ち上げの理由・背景などについて伺ったが、後編では、放送局がeスポーツ事業に参入する意義や今後の構想についてお届けする。
■放送局が取り組むことで、「親世代」が認めてくれる一助になるのでは
――放送局がeスポーツ事業に参入することの意義は、どのような点にあるとお考えですか?
橋本氏:個人的には、ゲームは、若い人がチャレンジすることをまだまだ親が認めてくれない分野だと思います。ただ、地上波でちゃんと番組があって、そこにeスポーツのプレーヤーが露出する(テレビで広く伝える)ことで「親世代」が認めてくれる一助になるのではと思っています。
小林氏:中長期的には、世の中のゲームやゲーマー対する認識を変えていくことが非常に大事になると思っています。「ゲームのやりすぎはよくない」とずっと言われていて、放送局としてもゲームをポジティブなものとして紹介することが難しかった面もありますが、一方で、ゲームを通して人を感動させることができる。感動させるためには(eスポーツのプレーヤーは)心と体も磨いていないといけないという面もあります。そういった点を伝えて、ゲームに対する世間の意識をポジティブにすることが最大のミッションですね。
――eスポーツの国内外で盛り上がりについては、どのように捉えていますでしょうか。
小林氏:アメリカでは、eスポーツに対して奨学金を与える学校が60校ほど存在しているそうです。日本でもeスポーツを教える高校も出てきていて、過去最大の盛り上がりを見せていることは間違いないですよね。とはいえ、ビジネス的にはまだまだこれからのところがあり、新規参入で投資として入ってきているプレーヤーがほとんどです。シーンが根付くためには観戦型スポーツになり、観戦・応援していくことそのものにお金が生まれる構造になることが必要だと思います。
また、これまでTwitchやYouTube Gaming、国内ではOPENREC.tvなど視聴はインターネット中心だったのが、南米では地上波でも大会が放送されているという噂も聞きました。テレビ局としても手がけるべき領域だと感じます。
■カードゲーム以外にも、取り組むゲームを増やしていく
――新会社であるアックスエンターテイメントとして、“今”考えていることは?
小林氏:ゲームをプレーするスキルを持つ選手やチームが、勝つことに向かって努力する姿こそが感動を与える要素ですから、やはり我々としてもチームを持つというところがスタート地点になります。最初にチームとして参加するカードゲーム「シャドウバース」以外のジャンルも含め、取り組むゲーム・選手を増やしていって、チームや選手が戦う姿を届けていけたらと思います。
――日本テレビのグループ会社であるティップネスがコンディショニングパートナーとして、オールアバウトナビがソーシャルメディアパートナーとして参画していますが、どのようなサポート体制となるのでしょうか?
小林氏:ティップネスは様々なスポーツチームに対して行っているアスリート支援があり、「AXIZ」はその支援を受けるチームのひとつになるという形です。海外で活躍しているeスポーツチーム、選手のほとんどが、指先だけではなく、体を鍛えることにかなり真剣に取り組んでいます。eスポーツは、頭もフル回転し、エネルギーもどんどん消費し体力を使いますから、体が大事な競技なのです。
また、ティップネスは、トレーニングだけではなくコンディショニングという概念、食事と休息というところまで力を入れています。自律神経が整っていることはゲームの勝負を左右するので、この面でもeスポーツとティップネスの概念は合致しています。
オールアバウトナビはソーシャルメディアで情報を発信して拡散することを念頭においたコンテンツを作っているので、eスポーツと相性が良いのが明白と言えます。
――最後に、直近の動向を教えてください。カードゲーム部門の選手選考の説明会も先日行われたそうですね。
小林氏:百を超える応募が来ています。かなり実力のある選手からもご応募いただいていて、まずホッとしているところです。現在一次選考を進めていて、8月上旬には二次選考として、実技も見せていただく予定です。