マル研若手メンバー考案「もしも僕たちが、今テレビを発明するなら?」~Connected Media Tokyo 2018
編集部
「Connected Media Tokyo 2018」が2018年6月13日~15日に千葉・幕張メッセにて開催。モバイル、ソーシャル、クラウド、ビックデータで変わるデジタルメディアビジネスを支える総合イベントは、昨年度の来場者を上回る大盛況のうちに幕を閉じた。連日様々な講演が催された中、Connected mediaで行われた専門セミナーにおけるパネルディスカッション「未来のテレビを若者が考える ~もしも僕たちが、今テレビを発明するなら~」をレポートする。
■マル研若手WGメンバーがゼロベースで考える「もしも僕たちが、今テレビを発明するなら」
本セミナーは、マル研こと“マルチスクリーン型放送研究会(放送局61社を含む87社が参加する、放送局の次代のサービスモデル作りを共同して進める会)”の事務局長の株式会社毎日放送 経営戦略室 メディア戦略部長 齊藤浩史氏と事務局長補佐のテレビ大阪株式会社 経営戦略局 メディア戦略部長 西井正信氏がモデレーターとなり、マル研若手WGメンバーの3名(株式会社広島ホームテレビ 襟立大貴氏、株式会社毎日放送 橋本龍氏、福井放送株式会社 宮本崇広氏)がパネリストになって、ゼロベースで「もしも僕たちが、今テレビを発明するなら」をテーマに意見を出し合う催しだ。
各自、自己紹介をした後、モデレーターの齊藤氏より3つのお題が提示され、ディスカッションがスタート。アジェンダは下記となる。
【テーマ】「もしも僕たちが、今テレビを発明するなら??」
1.「技術」を作るなら何がやりたい?
2.「商売」はどうやってやるか?
3.「視聴体験」をどう提供する?
<モデレーター>
株式会社毎日放送 経営戦略室 メディア戦略部長 齊藤浩史氏
テレビ大阪株式会社 経営戦略局 メディア戦略部長 西井正信氏
<パネリスト>
株式会社広島ホームテレビ 襟立大貴氏
株式会社毎日放送 橋本龍氏
福井放送株式会社 宮本崇広氏
■1.「技術」を作るなら何がやりたい?

挙手制のディスカッションでまず手を挙げたのは、襟立氏。「いつでもどこでもどんな態勢でもテレビが見られる世界ならいいと思う」と述べ、具体的には、「仮想空間にテレビがあり、好きなタイミングで、屋内外問わず、どんな環境でもMRのようにテレビがあって、視聴はもちろん、操作できる、予約もできるテレビがあったらいい」と発言。
これに対し西井氏から、「最近出たヘッドマウントディスプレイOculus Goみたいなやつ?」と問われると、「ヘッドマウントディスプレイ等、装着するものは利便性が悪く生活の質も落ちるので、例えばARコンタクトがあって、デバイスが全部並んでいるようなイメージです」と回答。西井氏も、「網膜に直接描画できるようなものも開発されているようですね」と納得した。

続く宮本氏は、今のデバイスは放送方式的に作られているため、「クラウドで管理して、タイムラインで過去の番組がいつでも見られるようにしたい。名前、地名等、検索するとすぐ見られて停止も可能だとなおいい」と発言すると、橋本氏も「クラウドの全録がほしい」と同意を示した。
すると西井氏は、「クラウドはみんなほしいと思っているが、著作権とか権利の問題がクリアにならないと難しいのでなかなか進まないと思う。そういうところはどうするか?」と問うと、「大変なのは重々承知しているが、やるしかない」と橋本氏。以前、音楽配信は難しいと思われていたが、「いつのまにかiTunesが登場した例もある」と補足した。

それを聞いた齊藤氏が、「ゼロベースでテレビを作ったらの話なので、今のテレビの状況は忘れてもらいたい」と軌道修正を測り、襟立氏が提案したARコンタクトについて触れ、「お茶の間でご飯を食べているときに、それぞれがARコンタクトで違う番組を見ながら一緒にご飯を食べるって嫌じゃないのか?」と問うと、襟立氏は「みんなでご飯を食べているというイメージはない」と否定し、「現代の若者が寝る前に様々なデバイスを利用して動画を見たり、音楽を聞いたり、SNSを利用したりといった場合にARコンタクトがあれば便利だと思った」と意見した。西井氏は「今後、単身世帯が増加傾向にあるとは聞いていたが、サザエさんのようにお茶の間で家族と過ごすといったイメージを若者が持っていないことに驚いた」とコメント。
齊藤氏は、「もしARコンタクトができたら、放送はIPで飛ばさないといけないのか?」と疑問を投げかけると、「現状、放送は電波で飛ばしているが、すべてIPでまとめられた方が拡張性が広がるし、色々なところを巻き込んでサービスが一つになるのは理想だと思う」と襟立氏が回答し、第1テーマの「技術」を作るなら、放送もIP化した方がいいというのが若者の意見としてまとまった。
■2.「商売」はどうやってやるか?
「技術も大事だが、お金儲けも大事である」と齊藤氏が発言し、第2テーマの「商売」について問われると、ここでも襟立氏が一番に挙手し、「CMの見せ方を、ユーザーの好きなタイミングでできたらいい」と発言。例えば、番組中にCMが流れるのではなく、番組の前後にまとめてCMを見られるなど、「ユーザー側でCMを視聴するタイミングを選択できるイメージ」と続けた。
それに対し西井氏から、「もし後でCMを見ると言って、ユーザーが見なかったら?」と質問すると、「その場合は強制的に見るような仕組みを作ればいい。AR、VRの世界で、MR空間上にCM視聴カウンターみたいのがあって、CMを見る毎にポイントが貯まるような仕組みがあればいい」と発言。例えば、自分の好きな番組を見るにためには8ポイントが必要で、CMを見ることでポイントが加算される仕組みを作れば、番組を見るためにCMを見て8ポイント貯め、やっと番組が見られるという仕組みを考案した。この意見に齊藤氏は頷いて見せ、「CMをどうやって見てもらうか、スキップ問題もあるから、事前にCMを見てもらえるのはいいかもしれない」とコメントした。
橋本氏は、「テレビ局で番組を社内評価する軸は視聴率にあるが、クライアントにとって視聴率は参考程度のもので、やっぱりクライアントの商品が売れないと意味がない」と発言、そのためにも、「テレビ局が何かしら物を売るためのサイクルをまわしてあげられる存在になりたい」と述べ、「ログを見てもらって、視聴者層がわかる、どの時間にどこで見られているか、そういったデータをフィードバックしてあげなければダメだと思っている」と意見した。
すると齊藤氏から、「本当にすべてのデータをさらけ出すことがいいのか?」と疑問を投げかけると、「現に視聴率ランキングがテレビでも新聞でも表示されているが、やっぱり気になるし面白い」と橋本氏。「誰が見た、どんな人が見ているかという情報は大事だ」と続けた。これに対し齊藤氏は、「CMを見た人がいくら買ったというところまでいくと販促に近いから面白みがないように思う。でも、ある程度データを提示することで、出稿するクライアントもCM制作でターゲットを絞り仕掛けることができれば、もっとテレビCMが魅力的になるということ?データがあれば、コンテンツ制作にも生かされるということ?」と質問し返すと、橋本氏は、その通りだと回答。Yahoo!の取組みで、Twitterのランキングでは良し悪し問わず、“バズリ”が可視化されている例を挙げ、「この取組みをテレビでもできないのかと考えていると発言した。西井氏は「僕はリターゲティングされるのが嫌。気持ち悪くないか?」と問うと、宮本氏は「僕は個人的にはリターゲティング商品を見てみたいと思うタイプ。バーナー広告とは違うので、そこがテレビCMの信頼性かなと思う」と意見し、第2テーマは終了した。
■3.「視聴体験」をどう提供する?

テレビ局はスポンサーとともに視聴者あってのテレビという観点から、「視聴者にどういうテレビを提供したいか」と齊藤氏が第3のお題を提示すると、宮本氏が挙手。「テレビはインターネットやSNSに比べると一方通行の放送に感じるので若者の趣向に合わせて行くべきではないか」と主張。また、「視聴データ活用をするなら、婚活アプリを制作すると面白いのではないか」と提案。例えば、テレビ番組の視聴データから、同じ番組を見ている人をマッチングして、見ている番組の量が多いほど精度が上がり、「ゆくゆくは結婚相手と出会える」といった構想が語られた。

西井氏は、個人情報の観点から懸念を示すと、横から橋本氏が、「婚活アプリでの結婚は増加傾向にあり、今や当たり前」と若者の結婚事情をコメントした。
その流れで、橋本氏が考える視聴体験を、「どこでもテレビ局のコンテンツに接していてもらいたい」と発言。例えば、ワールドカップをライブビューイングし、一緒に盛り上がり共有していたのに、帰宅時間が迫り帰らざるを得ないときに、「電車に乗っている間も見られて、家に帰ってテレビを付けたら続きが見られる」。そういったシームレス構造で、「自分のタイミングでテレビを見たい」と述べた。西井氏は、現在は番組表に基づいてテレビ番組が放送されて、基本的には屋外では見られないことを指摘。橋本氏も、「その点インターネットは自分で見たいタイミングで見られる」と同意を示し、齊藤氏も「コンテンツの連続性を色々なところで提供できるテレビになったらみんなにとって楽しいだろう」と続けた。
また、橋本氏は、現代の若者はYouTubeを好むことを例に挙げ、「YouTubeにもテレビを流したい」と希望を語ったが、「YouTubeやニコニコ動画にしても、プラットフォーム毎の流儀がある。それぞれのプラットフォームの流儀に合った、みんなが一番、受け入れやすい形で流せるようにしたい」と話した。
続く襟立氏は、スポ―ツ観戦が好きなことから、「カメラを自分の好きな画面に切り替えられたら何て楽しい中継になると思う」と発言。例えばサッカーでは、ボールを持っている人にカメラをズームするのではなく、ボールを持っていない人が裏からどう攻撃に絡んでくるのかといった、「別の視点のカメラを自由自在に操作したい」と言い、「それこそIPの世界、スマホもカメラもIPでクラウドスイッチャーがあれば実現すると思う」と意見した。西井氏は、「これからテレビ局は、通信の能力をフルに使って新たなコンテンツを作って行かなければ」と語り、齊藤氏は、「技術的には実現に近づいている。もしかすると未来のテレビ作りの乗り越えるべき壁は、物理的な話ではないのかもしれない」とコメントし、第3テーマが終了した。
■放送の世界で生き抜く若者たちの夢とは?
最後に、今後30年以上、放送の世界で生きていくであろうマル研若手WG3名の未来の放送の夢を語ることになった。

宮本氏:昔はテレビが権威を持ち、三角形の社会構造があったが、スマホやSNSの普及により、今は一対一の通信ができ、フェイクニュースが出てくるといった様々な変化を感じる。もちろんその良さもあるが、バランスをいい感じにして、放送局も長い間続けていきたいと思う。
襟立氏:真のプレミアムコンテンツプロバイダーになるのが夢。全部のデバイスにおいてそうなることが最高にカッコいいなと思う。そのためにはIPや先進技術は絶対に無視できないし、そういう世界をテレビ局でも作っていきたい。いずれテレビデバイス以外でもテレビのコンテンツが見られている未来が夢だ。
橋本氏:先ほど、プレミアムコンテンツプロバイダーと言ったが、それほど押しつけがましくなくて、自然にテレビのコンテンツが流れていて、「あ、これもテレビでやっていたんだ」と、情報を取るときはテレビを介しているみたいな、気づけば視聴者が感じるイメージ。そのためにも、我々がもっとクリエイティビティ―を発揮できる存在になっていきたいと思う。
齊藤氏からは、今回のディスカッションは「未来のテレビをゼロベースで作るなら」という仮説であり、「今のテレビに関するコメントではない」点を留意しつつ、今後のマル研に期待してほしいという若手に向けたエールと、「テレビ業界にこんな若者がいて良かった」という感想が語られた。そして西井氏は、「世の中は世代交代で続いていくと思う。彼らが次のビジネスを作っていく存在」と言い、バトンタッチするときではあるが、「自らもテレビ業界の1人としてまだまだ頑張っていきたい」とコメントし本セミナーは終了した。
これからのテレビを本気で考え、変えて行こうとするマル研若手WGの今後の動向を見守っていきたい。