日テレの最新テクノロジーが集結【クリエイティブテクノロジーラボ レポート】
編集部
日本テレビ技術統括局・日テレラボが主催する“クリエイティブテクノロジーラボ(CREATIVE TECHNOLOGY LAB)”が、2018年3月6日、7日の両日、日テレタワーにて開催された。今年は「魔法(テクノロジー)を操れる人間になろう。」をテーマに、「革命なくして成功なし、最新テクノロジー活用の先駆者になれ!」をサブテーマとして掲げ、AI/ロボット、MR/VR、4K/HDRなど最新テクノロジーを活用したクリエイティブとビジネスについて考える「学びと体験のイベント」となった。
先日、編集部でも一足お先に体験レポートした「日テレ Mixed Reality」の体験ブースも大いに賑わっている様子だったが、今回はそのお隣、日本テレビが開発する制作・放送・配信に関する最新技術の展示エリアから、注目のブースを厳選してお届けしたい。
■情報漏洩防止型SDメモリカード「Mamolica™(マモリカ)」
報道取材現場や情報番組の制作現場では、SDメモリカード記録型のビデオカメラが多く使用されているため、SDメモリカードの紛失や盗難のリスクといった問題を抱えていた。そこで日本テレビでは、東芝メモリ株式会社と共同で、ロック中でも記録は従来通り常時行える情報漏えい防止型SDメモリカード(Read Lockモデル)を開発。セット側のビデオカメラに改造を加えたり、専用のアダプタを装着したりせずに、NFC(近距離無線通信)技術を使ったインターフェースロック機能「Mamolica™」付きSDメモリカードを展示していた。

本製品の特徴は、スマートフォンをカードにかざすだけでロック解除が可能な点と、PC環境がなくても操作ができる点、当初の懸念点であったデータの紛失や盗難リスクも解決している。
同イベントでは、運用時に確実かつ効率化できる専用のガジェットや管理ソフトウェア、マルチファイルプレーヤとガジェットの連携についても初お披露目となった。他にも、同製品のmicroSDメモリカードの開発、Macintosh版の試作も進んでおり、使用範囲の拡大、実用化に向けた検討がなされている。

■画像認識AIによる自動メタデータ作成「Realtime Indexing」
同局系列局で放送される『新春スポーツスペシャル箱根駅伝』では、これまで4台の中継車からの映像を利用し、目視でレースの模様や選手を2日間の約12時間の長時間に渡り、確認していた。そこで同社では、画像認識AI技術を利用した、選手の自動特定、および順位の解析を可能とした「Realtime Indexing」を開発。それにより、CG制作や編集作業の大幅な効率化が図られるようになった。

選手の大学名と氏名のテロップを選手に追尾して自動表示することも局内の確認用には実現していた。今後、さらに精度を上げ様々な現場運用の効率化とサービスの向上が実用化される可能性が高い。コンテンツのメタデータ化は、箱根駅伝に関わらず、さまざまな活用の可能性が早くも社内では議論されていると担当者は語る。
■日本テレビ 新マスター稼働開始!
放送局の心臓部とされる同社のマスターが、昨年秋に新マスターとなり稼働を開始した。およそ13年半ぶりの大規模更新ということで、ブースでは、その特徴的な新機能の紹介や、普段は入ることが許されない内部の様子を360度VRで体験できるコーナーもあった。
==日本テレビ新マスターの注目機能==
1.柔軟なマルチチャンネル機能
メインchとサブchの関係性など数々の制約が存在したマルチチャンネル編成が進化して、新帯域管理手法(番組毎に帯域を設定するのではなく、マルチch開始時にメインchの帯域値を自動計算することで、番組枠に捉われないマルチ編成が可能)や自動EPGデータ生成手法(マルチchを柔軟に編成した結果生じるサブchの番組がない時間帯は、マスターで自動的にEPGデータを生成し、メインchを参照する)によって柔軟に実施が可能となった。

2.別出し副音声機能
主メディア搬入後に副音声制作を行うことが可能となり、副音声素材の制作負担を大幅に軽減させた。これにより、副音声素材はオンエアの直前の搬入でも対応できるようになった。この機能を用いることで、視覚障害者向けの解説放送番組が倍増したとのこと。

3.ファイル化
また、同社が2012年から取り組んできたファイル化が、アーカイブ、ニュース系編集と続き、マスターでも遂に完了。2019年3月末にはXDCAM(ファイル)搬入への完全移行が予定されている。ファイル化が実現し社内が繋がったことで、搬入からオンエアまでの過程がシンプルになったため、作業内容の大幅な効率化が実現し、管理面およびコスト削減といったいくつもの利点が重なり、晴れて完全移行の運びとなった。

■グラチャンでも使用!バレーボールネットカメラ「Net Band Camera」
世界4大大会の1つ「ワールドグランドチャンピオンズカップ2017(以下:グラチャンバレー2017)」から使用されているというバレーボールネットカメラ「Net Band Camera」は、バレーボールのネットの白帯に小型&丈夫なカメラを内蔵し、競技中の選手を至近距離で撮影できるというものだ。

他にも、テレビ中継で使用できる高画質と色再現、衝撃に耐えうる構造、揺れを最小限にし、画角を保持する機構、ネットの中央部に設置した場合は、コート全域も映し出すことが可能となる。
グラチャンバレー2017では片側ネットのみにカメラを内蔵していたが、現在では両面に設置が可能となり、今後のバレーボール中継においてより迫力ある映像での観戦を心待ちにする声が上がっている。
上記以外にも、南海放送株式会社が展示していたスマートフォンを利用した移動中継サポートシステムや、NiTRoが導入したライブ中継サービス、富士通株式会社との共同開発のAI技術を用いた自動キャプション起こし等、およそ24の展示ブースで最新技術の展示や体験を行っていた。


今後の放送では、同イベントの最新テクノロジーを活用した中継や番組が随所で目撃できるのではなかろうか。