『金曜ロードSHOW!』担当Pが語る「境界線を越える仕事・生き方」
編集部
株式会社IPG本社(東京都中央区築地)にて、業界の異なる3人が繰り広げる白熱のトークセッション「シェイク!Vol.16」が3月14日に開催。今回は、編集者、クリエイティブディレクター、アートプロデューサー、京都造形芸術大学教授 後藤繁雄氏、次世代型編集者として活躍中の東京ピストル代表取締役社長 草彅洋平氏、『金曜ロードSHOW!』『映画天国』(関東ローカル)プロデューサーの日本テレビ 編成局編成部 ターニャ(谷生俊美)氏の3名が「境界線を越える仕事・生き方」をテーマにトークセッションが行われた。
MCを草彅氏が務め、それぞれの半生ならびに現在の活動内容や人生観、そして他ではなかなか聞けないような業界の話、スピリチュアルの話といった、非常に幅広く内容の濃い1時間半のトークセッションとなった今回、その中でもテレビ業界で活躍するターニャ氏の「境界線を越える仕事・生き方」にスポットを当て紹介する。
■ターニャ氏の経歴と仕事をする上で必要な“境界線”
映画制作に携わりたいという思いから日本テレビに2000年に入社したターニャ氏は、報道局で外報部や社会部警視庁記者などを経て、2005年4月よりカイロ支局長として中東へ赴任。二度の戦争取材やイラン取材などを行った。そして2010年4月に帰国。2011年エジプト・リビアなど『アラブの春』の取材を経て、2012年から念願の編成局編成部映画班で『金曜ロードSHOW!』担当プロデューサーとなった。
現在の主な活動は、『金曜ロードSHOW!』で放送する作品の検討や契約、編成時期の決定やPR戦略と幅広い業務に携わっており、デジタル関連ふくめ、SNS展開なども担当している。そのことから、トークはジブリ映画放映時に必ずネット上で盛り上がりを見せる“バルス祭り”へと流れ、後藤氏の「編集者に友達はいらない」という発言から、「スタジオジブリの鈴木プロデューサーと宮崎駿監督は何十年も一緒に仕事をされているが、“友達”になることはなく、お互いに敬語を使い続けているのだと思う」という話をターニャ氏が伝え、「良い仕事をするためには、いい意味での線引き(境界線)が必要」という結論に3人は至った。
■ターニャ氏が性の“境界線”を超えたとき
話題がセクシャリティについて及ぶと、「学生時代から周囲には“変”と言われるなど、10代の頃は自分でも“他人からどう思われるか”ということを気にしていた」と語ったうえで、大人になるにつれて、人からどう見られるかを意識しなくなったことや、30代になってトランスの気持ちがつよくなったことが明かされた。中でも、カイロで過ごした5年間の経験は大きく、「年齢的にも30代に入り、日本人は自分一人という状況の中で、これからの人生をどう生きるかといったことを考え、自分と向き合う時間になった」と当時を振り返る場面も。また、中東で戦争やテロの現場取材を重ねたことで、「人はいつ死ぬかわからない」という思いを強くもったという。そして帰国の翌年に起きた東日本大震災によって、「日本でさえも死は絶えず隣り合わせにある」と気づき、「ならば後悔しないように生きよう!」と決意。「40才までは男性として、40才以降は女性として生きる」ことを決めた時が、性の境界線を超えた瞬間だったという。
■大事なのは、積極的に境界を越えていくこと
トークセッションでは後藤氏、草彅氏の「境界線を越える仕事・生き方」についても語られ、後藤氏は、「自分を実験動物だと思って、色々やらせてみてどういう生き方をするかレポートするのが一番面白い」と語り、「人生は実験」という自身の編集者としてのモットーが語られた。草彅氏は、元々は雑誌を制作していたが、時代の流れと共に本を作っても読者の手に届かないイメージを抱いたことをきっかけに、「本を体験させる場所作りや、この世にまだないコンセプトのお店や業態を作りたい」と思いプロデュースした『歌舞伎町ブックセンター』や『文壇カフェ』の取組みについて語った。
そうした二人の境界を作らない仕事に対する姿勢や生き方に感銘を受けたターニャ氏は、自身の人生について「私は、人生はエンターテインメントだと思っている。自分の物語を紡いでいくのが人生だから、自分で描きたいものを描いていけばいいと思い、生きるようになった」と語った。また、「会社員ではあるけれど、2人のようにいろいろな所属、肩書を持ち積極的に境界を越えていくことにある意味で憧れる」という思いがあったことが伝えられ、その1つのチャレンジとして、大好きな映画を、そして『金曜ロードSHOW!』をもっとたくさんの人に知ってもらいたいという思いから、『ターニャの映画愛でロードSHOW!!』というブログを開始し、発信者として新たな境界を越えた体験が伝えられた。
最終的には、3者3様、これからも境界なんて意識せず人生を謳歌して行こうといった前向きなメッセージが届けられ今回の「シェイク!」は終了する形となったが、普段は知ることのできないテレビ業界人としてのターニャ氏の生き方、境界の超え方に触れ、発信者として思いを込め、深いものを届けていく姿勢が垣間見ることができた。