竹内結子主演のオリジナルドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』の狙いとは~Hulu於保社長に動画配信サービス戦略を聞く【後編】
ジャーナリスト 長谷川朋子
ドラマやバラエティ、ドキュメンタリーなど、動画配信サービス各社がこぞってオリジナルコンテンツの開発に注力しているなか、Huluも配信ならではの自由度の高い表現や刺激性にこだわったラインナップを増やしている。4月27日(金)【日本時間】にはHBOアジアと共同製作したオリジナルドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock(以下:ミス・シャーロック)』を国内配信・世界19カ国で放送する。これにはオリジナルコンテンツの差別化競争を勝ち抜くための施策でもあるという。前編に続いて、Huluを運営する日本テレビの子会社であるHJホールディングス株式会社代表取締役社長の於保浩之氏に話を聞いた。

■居ても立っても居られないほど、観たいと思わせるオリジナルがカギに
尾野真千子主演の『フジコ』(2015年)、小栗旬主演の『代償』(2016年)、玉山鉄二、佐々木希出演の『雨が降ると君は優しい』(2017年)と、Huluが手掛ける完全オリジナルドラマは注目度の高い作品揃いである。日テレとの共同製作企画『THE LAST COP/ラストコップ』や日テレとWOWOWとの大型プロジェクト『銭形警部』など話題作もあり、2018年冬ドラマ『トドメの接吻』と連動する『トドメのパラレル』など地上波で放送中のドラマのスピンオフ企画も好評だ。またドラマに限らず、安室奈美恵に密着したドキュメンタリー『Documentary of Namie Amuro “Finally”」やキッズ向けに『だい!だい!だいすけおにいさん!!』なども展開している。

オリジナルコンテンツの戦略について於保社長はこのように説明する。「多様なユーザーに合わせて、オリジナルコンテンツの幅を広げています。キッズコンテンツは子どもを取り込むことができるだけでなく、その親の利用にも繋がっていきます。また地上波のスピンオフドラマは入会の大きなきっかけになる効果が大きいです。居ても立っても居られないほど、観たいと思わせるコンテンツがあれば、入って頂けるはず。完全オリジナルドラマは大きく宣伝活動をするので、HuluそのもののPRにもなります。」
つまり、乱立する動画配信サービスのなかで、いかに観たいと思わせるオリジナルコンテンツを揃えるかが会員獲得のカギになっている。そこで4月から投入する竹内結子主演の完全オリジナルドラマ『ミス・シャーロック』は、誰もが知っているシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンのふたりを日本人女性に置き換え、現代の東京に設定を変えたもの。新しさと親しみやすさを兼ね備えた連続ミステリードラマになる。

『ミス・シャーロック』の狙いはまだある。「これまでの『フジコ』や『代償』、『雨が降ると君は優しい』は完成度が高いものの、1シーズンで完結するものでしたが、今回はシーズン2、3と進めることができることをコンセプトにスタートしています。海外ドラマは当たると、シーズンを重ねていきます。例えば、FOXチャンネルの『ウォーキング・デッド』は続きが観たいがために入会してくれます。長く会員でいてもらえることにも繋がっていきます。観たいドラマ一本のために入ってくれる、こうした海外の成功例に習って、以前からやりたかったことがようやくできます。」(以下コメント、於保社長)
HBOアジアとの共同製作の座組も新しい試みである。HBOアジアにとっても日本のオリジナルドラマを共同製作するのは初。日本国内ではHuluが独占配信し、アジア19カ国ではHBOが独占放送し、世界20カ国で同日公開される。これまで『CROW’S BLOOD』、『代償』など海外でも展開されている作品もあるが、世界同日公開は初である。
こうした新たな展開はドラマの人気を左右するキャスティングにも功を奏することに期待しているという。「配信ドラマに対する出演交渉は以前より楽になりましたが、世界展開はさらに価値を感じてもらえるきっかけになるはずです。」
完全オリジナルドラマの開発企画は社内からも上がり、『雨が降ると君は優しい』は日テレグループ全体で企画募集をかけ、アックスオンが企画制作した。また、外部からの提案も受け、『フジコ』と『代償』は共同テレビが、『ミス・シャーロック』はロボットが制作した。今後も間口を広く、開発に力を入れていく方針に変わりはないが、課題もある。「制作力がまだ十分にありません。コストだけでなく、人手の問題もあり、正直なところ、年1本ペースで手一杯です。それでも、リソースを割きながら年間2本ぐらいを目標に投入していきたいと思っています。」
■移動の新幹線でもHuluで海外ドラマを
コンテンツのラインナップ戦略はオリジナルドラマだけでなく、バランスをみながら、バリエーションを増やすことにも注力している。「地上波番組のキャッチアップもニーズが高いです。見逃し配信サービスとして『TVer』もありますが、使い慣れたUIであれこれと視聴する流れのなかで、観ることができるのは便利ですからね。それから、アジア売り場にも力を入れています。昨年末から韓流ドラマの作品数が一気に増えました。」
於保社長自身は個人的に普段はどのようなコンテンツを視聴しているのか、そんなことも尋ねると、「今はSFサスペンス『ヒューマンズ』など海外ドラマにハマっています。出張の時に、新幹線の中で視聴するのも楽しみの一つです。移動時間が苦にならなくなりました。名古屋ですと移動時間は1時間半くらいですから、海外ドラマを1本~2本観られます。海外ドラマ好きになったきっかけは、『プリズン・ブレイク』と『フリンジ』。海外ドラマは日本人にとって食わず嫌いの作品が多いと思いますが、面白い作品は観れば一発で夢中になりますよ。」と答えてくれた。

最後に今後のHuluの展望についても聞いた。まもなくTBSと日本経済新聞社、テレビ東京、WOWOWらがタッグを組む大型動画配信プラットフォーム「Paravi」の開始も控えるが、先行事業者としてどのように攻めていくのだろうか。「戦略はたくさんあります。『Paravi』さんが増えるので今後の市場の動きはもちろん気になります。今後も閉じていく事業もあれば、新しく始まるところもあるでしょう。こうした状況だからこそ、考えた結果、奇をてらわずに、基本に返ってやっていくことにしました。Huluとして、有料の動画配信サービスとして、基本的なことをきっちりやっていこうと思っています。」
動画配信市場において今、増加するリアルタイム配信とオリジナルコンテンツ開発に目が向けられがちだが、Huluに限らず各社の課題である経営黒字化が市場を形成させていく上で不可欠なものになっていくことに間違いないだろう。