フジテレビが考える海外戦略~新セクションでの始動と海外販売事業の現状~【前編】
編集部
多メディアでの競争時代を迎え、各放送局でも広告収入以外の収入源として、海外市場への番組販売もその一つといえる。今回は2017年7月に新セクションでの事業展開がはじまった、株式会社フジテレビ 総合事業局コンテンツ事業センター コンテンツ事業室 コンテンツデザイン部 国際ビジネスチーム企画担当部長の藤沼聡氏(写真右)、同 部長職の久保田哲史氏(写真左)に、同局の海外での番組販売の取組みについてインタビューした。前編となる今回は、同局の成り立ちや事業内容、および現状についてお届けする。
■国内セクションと連携した海外番組販売事業の強化

海外市場への番組販売事業は、1971年に海外番組販売のためのグループ会社を作っていたこともあり、長い歴史を持つ事業の一つで、年々その重要性が高まっている。今回、海外セクションが国際開発局から総合事業局コンテンツ事業センターへ異動する運びとなったのには、「今後伸びしろがあると言われているインターネットと海外市場に注力していくために、国内のセクションとも連携し強化する必要があったから」と藤沼氏は語る。

メンバー構成は異動前と変わらず少数精鋭で業務にあたっているが、「国内セクションとの連携により、海外販売を意識したドラマの制作や、これまではあまり取り扱えなかったFODやCSの番組販売も行えれば」と、久保田氏も続けた。
■フジテレビが行う海外販売3つの柱
同社が海外市場に番組を販売する方法は、主に3つある。
1つは、同局で制作したドラマやバラエティー、アニメーション、ドキュメンタリーといった映像そのものを販売する「番組販売」である。コンテンツ自体はそのままで、買い手の国の言語に吹き替えたり字幕をつけて、現地化した状態で放送する手法だ。海外で人気があるのは月9のドラマで、新しい作品であればあるほど人気があるという。全世界に向けて販売しているが、日本と文化の近いアジア圏と相性が良い。
2つ目は、番組のコンセプトやアイデアを売る「フォーマット販売」だ。これは番組の企画やノウハウを提供する手法で、買う側はそのフォーマットや契約条件に基づいて、自国の制作スタッフ、キャストで現地版を制作する。フォーマット販売も全世界に展開されており、バラエティーの売れ行きが好調だ。
3つ目は、ドラマのリメイク権を売る「リメイク販売」だ。はじめたばかりの頃は、アジア圏で売上を伸ばしていたが、現在では評価や関心が高まり欧米でも市場がある。番組販売同様、新しい作品の方が売れるが、過去に日本で高視聴率を獲得した作品は海外でもウケが良く、リメイク権を購入したがるケースが多い。

他にも、ゼロから企画を持ち込んでの共同制作や、海外の放送局や番組制作会社とアイデアを持ち寄った形での共同制作といった取組みを行っている。そうした中、どの販売方法の売上が伸びているのかを尋ねると、「権利処理の問題を抱えつつも、基本は毎クール制作物が増え販売数も保てる番組販売が現状の主軸である」と藤沼氏は回答。ただし、「価格が一定なことを考えると、フォーマット販売やリメイク販売は当たると大きな収益が見込める」と続けた。
【海外でヒットしたリメイクドラマと共同制作ドラマ一覧】
・『不可思議的夏天』:日本・中国共同制作ドラマ | 2014年8月~配信・iQiyiにて
・『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』韓国リメイク版(ウェブトゥーン)
・『桜に願いを』:日本・インドネシア共同制作ドラマ | 2016年4月~放送・Wakuwaku Japanにて
・『最後から二番目の恋』韓国リメイク版 | 2016年7月~放送・韓国SBS
・『デート~恋とはどんなものかしら』中国リメイク版 | 2017年2月~配信・Tencentにて
・『プロポーズ大作戦』中国リメイク版 | 2017年4月~放送・配信・中国上海東方衛視&Tencentにて
・『問題のあるレストラン』中国リメイク版 | 2017年6月~配信開始・Tencentにて



参考:http://www.fujicreative.co.jp/business/international/tabid/95/Default.aspx
上記以外にも、2018年4月の開始に向けて、リメイク放送が発表される予定だ。とはいえ、海外販売においては、問題や課題が山積みだという。次回は同社が抱える課題に焦点をあてつつ、日本を代表する放送局である強みを生かした今後の展望についてインタビューした内容をお届けする。