国内初!TBS×NTT、離れた撮影現場に制作設備を持ち込まない映像プロダクションDX「フルリモートプロダクション」を実証
編集部
株式会社TBSテレビ(以下、TBS)と日本電信電話株式会社(以下、NTT)はスタジアムやスタジオ等でのライブイベントの映像制作におけるフルリモートプロダクションを実証した。今後、中継現場への中継機材発送や制作スタッフの現地派遣を極限まで減らせる可能性がある。
■概要
・フルリモートプロダクションで必要とされる複数カメラの大容量映像伝送、リアルタイムの遠隔カメラコントロール、および遠隔拠点の映像機器間のPTP時刻同期を大容量・低遅延・ゆらぎなしのIOWN APNによって実現。
・TBS赤坂の『ひるおび』制作スタジオから、国内で初めて生放送と同タイミングでの映像プロモーションを実証。
・Jリーグからの映像協力で、スポーツ中継を想定したフルリモプロを実施。
・台湾とIOWN APNでつなぎ、映像の国際伝送を実現。
■背景と取組み
撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作を行うリモートプロダクションは、「大量の機器を現地に設置し、多くのスタッフを派遣するというコストの問題」「映像系技術者不足といった社会課題」という映像制作上の問題解決に寄与することが期待されている。これらの実現に向けては、映像制作装置や技術の標準化・集約化が進んでいる一方で、以下のような課題も存在していた。
・従来のネットワーク容量では、撮影場所から映像制作を実施するリモート制作拠点に向けて、複数のカメラ映像を同時に伝送することができない。
・従来の遅延の大きいネットワークでは、映像制作を行う拠点から遠く離れた撮影場所に向けて、カメラの制御信号(タリー等)や、インカムの音声情報を高品質かつリアルタイムに送ることができず、撮影者と制作者の意思疎通を図るコミュニケーションが円滑に行えない。
・従来のゆらぎの多いネットワークでは、安定した通信環境を維持することができない。スイッチャーやモニタ、カメラなどがそれぞれ離れた場所に設置されていると、PTP等の時刻同期をとることができず、正常な映像伝送が維持できない。
今回の取り組みでは、TBS赤坂のスタジオ、NTT蔵前局、NTT武蔵野研究開発センタの3拠点を大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を持つIOWN APNで接続。カメラやVTRを赤坂TBS、機器本体をNTT蔵前局、スイッチャーのコントロールパネルをNTT武蔵野研究開発センタ内に配置し、フルリモートプロダクション環境下で大規模な映像制作が可能であることを実証した。
IOWN APNが解決した技術課題
■大容量
拠点間で1波長あたり100Gbps以上の大容量の光伝送パスを通し、各撮影拠点の複数台のカメラやVTR・CG素材を同時にスイッチャーに接続。非圧縮の映像を大容量かつ低遅延で伝送することで、通常の映像制作と変わらない操作を実現した。
■低遅延
映像制作に必要なカメラへの制御信号や、リモートでのカメラコントロールなどの制御情報を光伝送パスに送出し、物理限界に迫る超低遅延のリアルタイムコントロールを行い、まるで現地で映像制作しているかのような環境を実現した。
■ゆらぎなし
ネットワーク遅延の時間変動がない遅延ゆらぎほぼゼロの伝送環境を用いて、国内の遠隔拠点や国外の接続に対しても、PTPの時刻同期信号をネットワーク上で透過させ、高品質な装置間の継続的な同期を実現した。
成果
■リモートプロダクションに成功
HD品質のカメラ映像の非圧縮(放送規格SMPTE ST2110に準拠)・リアルタイム伝送によるリモートプロダクションに成功。従来ネットワークでは難しかった生放送要求レベルの安定的な拠点装置間のPTPロック維持を、1μs未満のジッタにより確立した。
■実フィールドでのフルリモートプロダクションが可能
TBS(赤坂スタジオ)の情報番組『ひるおび』と連携して、生放送と同タイミングですべての映像を分岐。制作プライベートクラウド(蔵前)を介して、NTT武蔵野研究開発センタ内の制作拠点と接続し、実フィールドでのフルリモートプロダクションが可能であることを実証した。また、JリーグのISO映像を赤坂から伝送し、スポーツ中継を想定したリモートプロダクションも実施。台湾とNTT武蔵野研究開発センタの映像をお互いに送りあい、国際通信でもクロストークにストレスがないことを確認している。
※本取り組みは、2024年11月25日~29日に開催されるNTT R&D FORUM 2024IOWN INTEGRALに展示予定。