OHK、卓球「Tリーグ 2024-2025シーズン 岡山リベッツvs金沢ポート」手話実況付き生中継を実施
編集部
地上波放送画面(左下ワイプに手話実況)
岡山放送株式会社(以下、OHK)は11月4日、イオンモール岡山で開催された「Tリーグ 2024-2025シーズン 岡山リベッツvs金沢ポート」に手話実況を付け地上波生中継を実施した。誰もが当たり前にスポーツ観戦を楽しめる環境を創出しようと行ったもので、約2時間全編にわたり、ろう者の実況者がリアルタイムで手話実況を行った。
手話実況とは、OHKが30年以上継続している手話放送とスポーツ実況中継のノウハウを生かしたもの。多様な人がスポーツ観戦を楽しめる環境にすることを目的に実施されている。一般財団法人トヨタ・モビリティ基金の助成を受け、2022年秋に日本で初めて実施された。音声実況を健聴者が手話通訳し、それを見たろう者が自身の言葉として手話で実況する画期的な取り組みとなっている。
【関連記事】岡山放送、手話放送普及の取り組み“岡山モデル”とは?~さらなる情報バリアフリーを目指して~
■卓球では初の手話実況付き生中継を放送
OHKはこれまで自動車競技(カーレース、ラリー)、マラソン、サッカー、バスケットボール、バドミントンで手話実況を実施してきたが、今回初となる卓球では岡山リベッツと協力し、手話実況付き生中継を放送した。手話は聴覚に障がいのある人にとっての言語で、情報を的確に伝えるコミュニケーション手段だが、ろう者自身が言葉の意味をくみ取り、具体的に表現する手の動きや表情も含めた手話実況はスピード感や臨場感にあふれている。当日の手話実況は、OHKが主催する「OHK手話実況アカデミー」に所属するろう者で自身もアスリートの早瀬憲太郎と3人のコネクター(手話通訳者)、そしてOHKの3者がタッグを組み、世界最高峰を掲げるTリーグの公式試合を伝えた。
■「岡山リベッツオリジナル応援手話コール」を開発
今回新たに声援と手話を交えた「岡山リベッツオリジナル応援手話コール」を開発。選手と観客の距離が近い卓球では、会場にいるサポーターの応援が試合の臨場感を高める要素となっているが、その声援が聞こえないろう者にとっては観戦を十分に楽しめない。
そこでサポーター、チーム、ろう者が事前に意見を交わし、声援と手話を合体させた応援手話コールを開発。当日会場で聴者とろう者がそれぞれの言語で感情のこもった応援を行い、多様な人が同時に観戦を楽しむ新しいイベント体験を創出した。
■イオンモール岡山館内放送「haremachi TV」での観戦も実施
今回の公式戦がOHKの放送スタジオが入るイオンモール岡山で開催されたことから、館内のさまざまな場所から観戦アクセスが可能となった。試合会場となった1階の未来スクエアでは地上波中継を行い、5階にあるOHKの放送スタジオでは手話実況を実施した。
来館者は、可視化されたスタジオからガラス越しに手話実況が行われる様子を見学したり、館内全フロアに設置された約50か所のサイネージで放映されるイオンモール岡山館内放送「haremachi TV」を通じて観戦したり、それをきっかけに来館者が1階の試合会場に足を運ぶ機会が生まれ、館内に新しい回遊を生み出した。
■今回の取り組みについて
当日テレビで観戦したろう者は「手話実況のおかげで選手の心情や試合のリズムが感覚的によく伝わった。実際に試合会場にも足を運んだが、応援コールがあると一緒に盛り上がることができた」と観戦の興奮を話した。
今回の取り組みは単なる情報発信にとどまらず、映像や新しい応援スタイルによって館内を有機的に結び、さらに放送を通じて多様な人がスポーツの興奮や感動をリアルタイムに共有できる環境づくりを目指して行った。OHKは、今後もスポーツ分野におけるアクセシビリティ体験の、より一層の充実を目指す。