テレビでセールスプロモーションからコンテンツマーケティングまで!? ~テレビ番組のコミュニケーション実効果と価値~
編集部
左から)テレビ高知 村山まや氏、ビデオリサーチ 吉田正寛氏
テレビ番組の中でも視聴者に人気の情報番組。数々の興味深い店舗やスポットが番組で取り上げられるが、これを見た視聴者は実際にそこを訪れるのだろうか?
これまで可視化しづらかったテレビの来店・来訪の効果は、昨今行動ログで可視化できる。株式会社unerry(以下、unerry)とビデオリサーチグループのResolving LAB株式会社(以下、Resolving LAB)のソリューション「log-BLS(ログ・ブランドリフト)」だ。
この「log-BLS」を用いて、株式会社テレビ高知と株式会社ビデオリサーチは共同で、テレビ番組で取り上げられた店舗への視聴者の来店実態を可視化した。今回は、テレビ高知の村山まや氏とビデオリサーチの吉田正寛氏にインタビューを行い、テレビの新たなコミュニケーション価値に迫った。
■テレビ番組のコミュニケーション価値を可視化したい
――今回の取り組みですが、きっかけはどのようなものだったのですか?
ビデオリサーチ 吉田氏(以下、吉田氏):コロナ禍でテレカンが浸透して遠方の方ともお話できる機会が増え、テレビ高知さんとデータ活用に関してディスカッションさせて頂いたことがきっかけです。
テレビ高知 村山氏(以下、村山氏):その中で「log-BLS」のお話を伺って。これまで感覚的に効果を実感していた部分が、実際のデータで表現できるのではと。テレビ高知では、夕方のニュース番組「からふる」の中の企画コーナー「シェアふる」で、地元高知の飲食店などを紹介しています。スタート直後にコロナ禍となり「飲食店の応援」テーマに続けてきましたが、だんだんと「テレビを見たというお客さんがたくさん来てくれた」とおっしゃっていただくことが増えてきました。では実際、どれだけの人が番組を見てその店舗を訪れているのか、「log-BLS」であれば可視化できるのではないかなと思いました。
――その中で「シェアふる」をテーマに選ばれたということですね。
村山氏:はい、このコーナーは平日毎日、18時30分ごろからOAしているものでして、公式Instagramとも連動して地元の「飲食店応援」をテーマに店の歴史やオーナーの思いを紹介するコーナーです。位置情報で来訪効果を示すという点と、OAは基本的に1回、1時点ですから、そこの視聴者と非視聴者で比べることができるというので、ぴったりだなと思いました。
吉田氏:「log-BLS」はとにかくID数が多いので、1時点での視聴者を対象にした分析は得意分野です。今回も「シェアふる」の各回視聴者を1,000ID前後確保できています。
■取り上げることでOA後1か月の来店は非視聴者の1.6倍に!
――具体的にどういう分析をしたのですか?
吉田氏:OA後1か月でその店舗に行ったかどうかを、そのコーナー視聴者と非視聴者で比べました。21回分の「シェアふる」で分析したところ、非視聴者に比べて視聴者は平均1.6倍そのお店を訪れていました。
村山氏:この結果にはびっくりしました。こんなにきちんと結果が出るものかと。当初はちょっと半信半疑だったものですから。
吉田氏:もちろん結果はOA回によって濃淡があり、非視聴者とあまり変わらない回もありました。でも、ある回では非視聴者と比べて視聴者が3.4倍来店するというお店がありました。平均1.6倍ですので、やはり「シェアふる」を見てそのお店に行きたくなって、実際に行くということはあるんだなと。
村山氏:その3.4倍のお店は、高知では老舗のお店なんです。おそらく高知の皆さんならご存じのお店で、きっと放送を見て思い出して行ったんじゃないかと思いました。
■テレビのセールスプロモーションにおける価値
――今回の結果からどういうことが言えそうでしょうか?
吉田氏:テレビの行動喚起力ですね。従来、テレビはリーチ獲得やブランド認知といった部分に強みがあると言われていましたが、実際の行動にも影響することが示されています。
村山氏:実際の来店に結果が出ているというのは、リーチの先の効果ですよね。
吉田氏:店舗に呼び込むセールスプロモーションのような役割を果たしているといえます。CMの例になりますが、他でもそうした活用が始まっています。
村山氏:「飲食店応援」がテーマなので、当然店舗誘引につながればという気持ちはありましたが、数字でみることで確信しました。取り上げ方や取材先検討の参考にもなります。
吉田氏:効果を上げるための施策がみえますよね。それがあると、取り上げられる店舗の方にとって大きなソリューションになるなと。地元商店の活動のお手伝いといいますか、地域貢献の側面もより強くなる気がしますね。
■テレビでコンテンツマーケティングまで!
――セールスプロモーション以外にも活用できそうな場面はあるのでしょうか?
吉田氏:はい、全然違う観点だと、ブランドのファン化やロイヤルティ形成で注目されるコンテンツマーケティングですね。その要はオーディエンスです。コンテンツ上の情報に好反応を示すオーディエンスを集めるには良質なコンテンツが必要で、それがオーディエンスの共感・信頼感を生み、コミュニケーション効果が生まれるわけです。「シェアふる」もそれがあるから効果が出るんじゃないかと思います。
村山氏:ありがとうございます。「シェアふる」では 公式Instagramとも連動させて視聴者の熱量を高めるようにしています。こうした仕掛けも功を奏しているんだろうなと。テレビのコミュニケーション価値といいますとテレビCMですが、別の側面で番組コンテンツを活用するということができるのかもしれないです。
吉田氏:番組はもちろん広告ではないですが、番組コンセプトや視聴者の体験・期待の範囲内でコミュニケーションが可能ですよね。今回はその効果がしっかり示されたと思います。
村山氏:これは視聴者にとっても、取り上げられるお店にとってもいいことですし、それで視聴者が増えるとわたしたちもうれしいです。
■可視化された効果をどうビジネスに活かすか?
――「シェアふる」のコミュニケーション価値を今後どう活用できそうでしょうか?
村山氏:取材を受けて頂くお店の方も、どういうメリットがあるのかと疑問を持たれる方もいらっしゃいます。そこをきちんとお伝えし説明できる結果なので、取材班も心強いと思います。
吉田氏:「シェアふる」で取り上げられると来店に繋がるというエビデンスをもとに、新たなビジネスが展開できるかもしれないですね。
村山氏:そうですね、先ほど仰っていたコンテンツマーケティングというのはマスメディアのテレビとしてはすごく新鮮な視点だと思いました。
吉田氏:テレビ局さんの強みですね。夕方のニュースワイド枠は各エリアで地元情報を軸に展開され、各局の色が出ますよね。ここに視聴者がついてきている。番組単位でみるとテレビはマスに留まらず、セールスプロモーションやコンテンツマーケティングを実現できる「場」が生まれているのかなと思います。
村山氏:夕方に限らず他の時間帯もそうかもしれないです。視聴者との絆が価値を生み、地元の商業活動を活性化させることで地域貢献ができるなと改めて感じます。次は公式Instagramの影響も一緒に可視化できるとうれしいです。
吉田氏:そうですね、これは「log-BLS」のこれからの課題です。我々も、今回テレビ高知さんにご協力いただき番組1回のOA効果も可視化できたので自信が持てました。今後ともよろしくお願いいたします。
今回のインタビューを通して、テレビメディアの新たなコミュニケーションアプローチが見えてきた。マスリーチの強みが語られるテレビ。リーチだけでなく実際に行動を喚起することが明確になった今回の分析では、それに留まらないことが示された。
番組単位で見るとそこに熱量を持った視聴者が存在し、発信された情報に強い反応を示す。この熱量が、セールスプロモーションやコンテンツマーケティングといった新たな価値の根源なのかもしれない。テレビは、従来のマスメディアの側面だけでなく様々な側面で捉えることで、また新たな役割が期待できると感じた。
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