放送局がTVerポストロール広告に見出す“訴求力” 〜フジテレビ『この素晴らしき世界』担当者インタビュー(前編)
編集部
フジテレビ 迫本竜治郎氏
テレビコンテンツならではの特色を活かせる広告施策として、テレビと同等のCMフォーマットを持つ民放公式テレビ配信サービス「TVer」の広告枠を利用した「世界観連動CM」の試みが実施された。具体的には、SNSを中心に話題となることが多いドラマを舞台として、作品の登場人物やトンマナ、設定を取り込んだミニドラマ形式の長尺CMを配信するといったもので、本編と地続きの世界観が視聴者に対して高いブランドリフト効果をもたらしている。
今回はその直近事例として、フジテレビで2023年7〜9月クールに放送されたドラマ『この素晴らしき世界』にて行われた、TVer見逃し配信のポストロール(本編後CM枠)広告施策を前後編にわたり紹介。前編となる今回は、株式会社フジテレビジョン 営業局 営業推進室 デジタル営業部 迫本竜治郎氏に施策の概要を伺う。
■純広告で表現しきれない商品の魅力を「ドラマと地続きの長尺CM」で訴求
──今回の施策の概要についてお聞かせください。
迫本氏:『この素晴らしき世界』は、女優の若村麻由美さん演じる主婦・浜岡妙子がある日突然ひょんなことから大女優・若菜絹代になりすまし、普段の平凡な生活とスターとしての生活を行き来する様子を描いた完全オリジナルストーリーのドラマです。
今回の施策では、中川大輔さん演じる妙子の息子・あきらと永瀬莉子さん演じる学生起業家・蒼井蛍の2人がスポンサー商材の自動車に乗りながらデートするという内容で、約4分にわたるミニドラマ仕立てのCMをTVer見逃し配信のポストロール枠で配信しました。
──どのような背景から「長尺CM」というアプローチに至ったのでしょうか?
迫本氏:TVerのポストロールは、プリロール(本編前CM)、ミッドロール(本編中CM)と比べてCM秒数の自由度が高いのが特長です。今回、本編直後の番組連動CMという形式を取ることによってドラマ本編から地続きの世界観を作り、視聴者の方にコンテンツとして楽しんでいただける仕組みにすることで、関心を落とすことなくブランドの訴求点をしっかりとご理解いただけるのではないかと考えました。
──今回のCMにおける訴求ポイントについてお聞かせください。
迫本氏:今回は商材である自動車が走行する際の静粛性と、搭載するカーオーディオの音質の高さに的を絞り、それぞれを訴求する2バージョンのCMを制作、配信しました。
いずれも15秒〜30秒を中心とした純広告CMではなかなか訴求しきれないところ、長尺CM、かつポストロールであればしっかりと視聴者の方々にお伝えできるのではないかという狙いがありました。
■「見る人で画面が違う」独自技術によるクリエイティブ出し分けで訴求力をアップ
──ドラマの世界観との連動にあたり、演出面で注力した点をお聞かせください。
迫本氏:長尺とはいえ、商品の訴求ポイントをあれもこれもと盛り込むのではなく、ドラマ本編の世界観をしっかりと踏まえることを意識しました。その上でクライアント様と入念にすり合わせを行わせていただき、視聴者の方々へ特に印象付けたい「静粛性」「カーオーディオの音質の高さ」に特化させることにしました。
──独自技術による「画面内リプレイスメント」の取り組みも行われたと伺いました。
迫本氏:今回のCMでは、フジテレビとイギリス・ロンドンのデジタルプレイスメント専門企業・MIRRIAD社の共同開発技術「iCADs(in-Contents Ads)」を用いた「画面リプレイスメント」を行いました。
本来この技術はAIで映像を解析し、本編中の映像に広告を掲示する箇所を提案するものですが、今回は逆の活用法として、CM中の看板に異なる3種類のクリエイティブを入れ込む演出に使用しました。具体的にはユーザーごとに3パターンのクリエイティブを訴求ポイント別の2バージョン分作成し、合計6パターン「見る人によってシーン中の看板が違う広告」とすることで、より興味を持って認知していただく仕掛けを作りました。
続く後編では引き続き迫本氏に加え、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 戦略二部 ビジネスプロデューサー・文屋賢大氏にインタビュー。TVerポストロール枠と長尺CM、CTV広告の相乗効果によって生まれたブランドリフト効果について詳しく伺う。
【後編】「番組連動長尺CM×ポストロール広告」がコンテンツ軸の深いファネルを生む 〜フジテレビ『この素晴らしき世界』担当者インタビュー
〜テレビ局のプロが作った番組に最適なタイミングで配信〜
「TVerの運用型広告」
民放の番組を楽しめる「TVer」では、TVを始めとした様々なデバイスで最適な広告を配信することができます。