成長し続けるTVer、サービス・セールスの最新概況 〜TVer Biz Conference 2023レポート
編集部
株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2023』が、2023年4月27日に開催。民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」(以下、TVer)のサービス概況をはじめ、TVerにおける新たなタイアップ広告事例やTVer広告の開発ロードマップの紹介、さらに広告主や放送局の担当者らを交えたトークセッションなどが行われた。
この中から本記事では、株式会社TVer 取締役 薄井大郎氏による「TVerサービス概況」、同執行役員 古田和俊氏による「成長し続けるTVer広告とは?」の2セッションをレポートする。
■【TVerサービス概況】ユーザー数、再生数ともに右肩上がり堅持。直近ではM1層が増加
2023年3月のTVer月間再生数は3億2000万回、MUB(月間ユニークブラウザ)も2700万を突破し、いずれも歴代最高を記録した。アプリのダウンロード数も4月に6000万回を超え、堅調な右肩上がりを継続している。
上昇要因として薄井氏は、「ドラマ・バラエティコンテンツの人気に加え、最近はアニメコンテンツも徐々に伸長している」とコメント。さらに「直近ではスポーツのライブ配信数増加もあり、M1(男性20〜34歳)層が増加傾向にある」とした。
■【サービストピックス(1)】開始から1年、リアルタイム配信が新規ユーザーの獲得に寄与
続いて薄井氏は、2022年におけるサービストピックスを紹介。
在京キー局5系列によるGP帯を中心とした地上波リアルタイム配信のスタートから1年が経過した。2022年7月に発生した安倍晋三元首相銃撃事件の報道、10月にTVer初の全試合リアルタイム配信を実施したプロ野球日本シリーズ、年末年始のスポーツ・バラエティ特番の配信などが注目を集め、再生数・ユーザー数の増加につながった。
「2022年10月期の『silent』(フジテレビ系)など、話題のドラマをいち早く見たいと思うユーザーがリアルタイム配信でドラマを見ているという傾向も見えてきた」と薄井氏。「ドラマ、バラエティ、スポーツ、ニュース、それぞれのジャンルにおいて『場所を選ばずに今見たい』というニーズにリアルタイム配信が応えている様子が見て取れた」と語る。
リアルタイム配信に加えてスタートした「TVer ID」では、複数のデバイス間を横断して番組の追っかけ再生やお気に入り登録が可能に。こちらもリアルタイム配信における視聴習慣との相乗効果を生み、登録数を大きく伸ばした。
■【サービストピックス(2)】大型スポーツを中心に注目を集めるライブ配信、TVer完全オリジナル番組もスタート
スポーツジャンルでは、プロ野球日本シリーズを始め、箱根駅伝、ニューイヤー駅伝、全国高校サッカー選手権大会など、注目度の高いコンテンツを配信。2023年3月には春の選抜高校野球大会の配信も行うなど、その存在感を高め続けている。
このほか、『M-1グランプリ』(ABCテレビ/テレビ朝日系)など大型番組のライブ配信や、既存番組に関連するイベントのライブ配信も新規ユーザーの獲得に寄与。人気ドラマ・バラエティの「TVer独占スピンオフ」配信も大きな注目を集めている。
2022年度からは、TVerでしか見ることのできない完全オリジナル番組もスタート。2023年4月現在、『あちこちオードリー』(テレビ東京系)など数々のヒット番組を手掛ける佐久間宣行氏プロデュースの『褒めゴロ試合』、『日曜日の初耳学』『プレバト!!』(MBS/TBS系)などを手掛けるMBS・木米英治氏プロデュースの『最強の時間割』の2番組が配信中だ。
■【サービストピックス(3)】「TVerの特長を最大限に活かす」局横断企画の推進
系列を横断したコンテンツが集まるTVerの特長を最大限に活かす取り組みとして、注目の俳優が出演した過去作品をまとめた『俳優特集』や、バラエティ・ドラマの新番組予告をまとめてチェックできる特集など、放送局と連携したさまざまな施策も活発化している。
2022年9〜10月に実施した「サウナ特集」では、キー局に加えて各地のローカル局も多数参加し、サウナをテーマとした番組を200エピソード以上配信。昨今のサウナブームをベースに、TVer独自の目線でユーザーとのコミュニケーションを構築した。
さらに2023年4月には、全国のキャンプ番組100本以上を網羅した「キャンプ特集」がスタート。薄井氏は「さらに多くの人に楽しんでいただける企画を目指していく」と意気込みを見せる。
3回目を迎えた「TVerアワード2022」では「ドラマ大賞」を『silent』(フジテレビ系)が、「バラエティ大賞」では『水曜日のダウンタウン』(TBS系)が受賞。また、ローカル局制作番組において全国1位の再生数を記録した『いろはに千鳥』(テレ玉)など、多くの「特別賞」も発表された。
「局を横断した形で様々な取り組みを行い、ムーブメントを作っていくことがTVerの大きな役割であり、強みでもあると自負している」(薄井氏)
■【サービストピックス(4)】コネクテッドTV経由の視聴が30%を突破。「Fire TV」等デバイスへの「TVerボタン」設置も推進
ネットに接続されたテレビ「コネクテッドTV」を経由してTVerを視聴する割合も、この1年でさらに急増。TVer全体におけるデバイスごとの再生比率のうち、コネクテッドTVの占める割合は2022年から2023年にかけて24%→31%と成長し、大台に達した。
「コロナの巣ごもり需要が落ち着いた後でもコネクテッドTVでの視聴比率は高まり続けており、良質なテレビコンテンツを大画面のテレビで楽しみたいというユーザーの行動が見てとれる」(薄井氏)
かねてよりTVerではリモコンへの「TVerボタン」搭載を進めてきたが、2023年4月からはAmazonのストリーミングデバイス「Fire TV」のリモコンにも「TVerボタン」が搭載。薄井氏は「搭載デバイスの販売開始時にキャンペーンを実施するなど、プロモーションを強化し、さらなる伸長を目指していきたい」とした。
■2023年は「コネクテッドTV対応」「ローカル局連携を含むコンテンツ拡充」に注力
TVerにおける2023年の注力領域として、薄井氏は「成長著しいコネクテッドTVへさらなる対応を強化する」とコメント。リモコンにおける「TVerボタン」設置の獲得戦略やプロモーション施策を含めて積極的に実行し、ユーザビリティを追求したサービスの拡充を図る」とした。
「ローカル局との連携も含め、コンテンツのさらなる拡充にも積極的に取り組んでいく」と薄井氏。TVerのミッション「テレビを開放して、もっとワクワクする未来を―TVerと新しい世界を、一緒に。―」を掲げ、「このミッションに少しでも近づくことができるよう、サービスを成長させていきたい」と語った。
■【2022年度セールス実績】売上215%・キャンペーン数 前年比244%を達成 。売上・クライアント数ともに大幅続伸
古田氏のセッション「成長し続けるTVer広告とは?」は、TVerセールス実績の振り返りからスタート。TVer広告においてはクォーターごとに売上・キャンペーン数ともに順調だった2021年をさらに上回り、2022年は売上が前年比215%、キャンペーン数は前年比244%と大幅に成長した。取引社数も広告主で前年比201%、広告会社で前年比186%と右肩上がりを継続している。
古田氏は「ファーストパーティデータを使ったターゲティングは引き続き多くのお客様にご活用いただいている」としたうえで、「ターゲティングデータとしてこれまでのデモグラ、コンテンツジャンルに加え、興味関心データの拡充も図っている」と説明。「TVer ID」との組み合わせにより、クロスデバイスでのフリークエンシーコントロールも可能になっているとアピールする。
■TVerオリジナルのタイアップ企画も積極展開。“一社提供”の完全オリジナル番組も
続いて古田氏は、TVerオリジナルのタイアップ企画セールスについても説明。
2022年秋の「サウナ特集」では、大塚製薬「ポカリスエット イオンウォーター」が冠協賛。TVerの運営するWEBメディア「TVerプラス」では同社マーケティング担当者のインタビューを掲載し、外部メディアからの誘導を図るなど、TVerのメディア特性を最大限に活かした取り組みが行われた。
テレビコンテンツが“サウナ”業界に与えた影響とは?『サ道』P×「北欧」支配人×TVer特別対談
2022年12月より開始したTVer完全オリジナル番組の提供セールスも積極的に展開。第1弾『最強の時間割』では、「日経電子版」をはじめ複数の広告主がスポンサーとして参加したほか、第2弾『褒めゴロ試合』では自動車サブスクサービス「KINTO」による“一社提供”をTVerで初めて実施。回ごとに変わるアニメーション形式の提供クレジットや番組タイアップによるオリジナルインフォマーシャルが話題を呼んだ。
■ドラマの世界観とマッチした「オリジナル長尺CM」で高い完視聴率を記録
さらに古田氏は「タイアップの新たな試み」として、ドラマコンテンツの広告枠における「世界観に沿ったオリジナルCM」の事例を紹介した。
1997年に地上波で放送されたドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)のリバイバル配信では、ドラマ本編後のCM枠(ポストロール)にて、同ドラマのW主演を務めた木村拓哉、松たか子が出演する日産自動車の長尺CMを配信し、大きな反響となった。
「通常、本編後のCMは完視聴率が非常に下がる傾向があるが、このCMではドラマの世界観と広告が非常にマッチし、高い完視聴率を記録した」と古田氏。「CM秒数に決まったフォーマットがないTVerだからこそ生まれた事例だった」とし、SNS上でもポジティブな感想が相次いだと語る。
■ドラマ『silent』では「地上波・TVer同時CMジャック」を実現。リーチを最大化
2022年10月期に放送され、TVerの累計見逃し配信再生回数が最多記録を更新するなど話題となったドラマ『silent』(フジテレビ系)でも、ドラマの登場人物が登場し、世界観をそのまま受け継いだCMを放映。SNSには好評の声が相次いだ。
さらに『silent』では、地上波・TVerをかけあわせた“オンオフ統合型”施策として、地上波で放送される番組連動CMをTVerでも並行して配信。さらに最終話ではTVer見逃し配信のミッドロール(本編中CM枠)ジャックを並行して行い、1つのコンテンツでのリーチ最大化を図った。
■入稿〜レポートまで可能な「セルフサーブ機能」を提供予定。サーベイ・効果検証機能も
続いて古田氏は、TVerの視聴手段として存在感を高めつつあるコネクテッドTVでの広告について言及。「平均で1.5人に視聴されている」という高い共視聴率を活かしてセールスを伸ばすことができていると語る。
「マーケターにおける想起率で『コネクテッドTV広告といえば』といった質問に対し、純粋想起で『TVer』とお答えいただいた率が36.4%。2番手を大きく引き離してナンバーワンとなっている」(古田氏)
「TVer広告」2023年の展望について古田氏は、「ターゲティング、レポーティングの充実と、商品メニューの強化を図る」とコメント。これまでTVer側の担当者によって行われてきたフルマネージド型のサービスに加え、入稿から配信、レポーティングまでと広告会社側ですべて行うことのできる「セルフサーブ機能」を提供予定だと語った。
さらに、ファーストパーティデータを活用した「TVerサーベイ」や、「TVer ID」を利用したコネクテッドTV向けの効果検証、その他機能のアップデートを予定しているとコメント。「皆様のプロモーションにお役立ていただくべく、今後もどんどんプロダクトを強化してまいります」と述べた。
〜テレビ局のプロが作った番組に最適なタイミングで配信〜
「TVerの運用型広告」
民放の番組を楽しめる「TVer」では、TVを始めとした様々なデバイスで最適な広告を配信することができます。