TVerは、なぜ初の完全オリジナル番組を制作したのか? 〜見逃し配信サービスの次の可能性へ〜
編集部
TVerのユーザー数が大きく伸長している。2022年7月には累計ダウンロードが5,000万を超え、2022年10月には月間ユーザー数が2,300 万を突破した。そのTVerが、今回初の完全オリジナル番組『最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』を、2022年12月9日より配信開始し、映像監督OSRIN氏がKing GnuのPV制作の裏側を、ドラマプロデューサーの村瀬健氏がドラマ『silent』の裏側を語り、SNSで話題になっている。
テレビ番組の見逃し配信サービスであったTVerが今回なぜ完全オリジナル番組を制作するに至ったのか? その狙いと本企画意図などについて、株式会社TVer 配信プロデューサーの清水飛翔氏と、今回制作を担当したMBSプロデューサーで、『日曜日の初耳学』や『プレバト!!』などを手がける木米英治氏に話を聞いた。
*『最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜』
この番組では、さまざまな業界のトップランナーが講師として登場し、高校生やこれから社会に出ていく学生、若手社会人に向けて「働き方のヒント」につながる講義を展開。“生徒”の若者たちとともに、サポート役としてラランド(サーヤ、ニシダ)、櫻坂46の山﨑天、田村保乃なども出演。毎週金曜日、半年にわたって全24エピソードを配信する。
■TVer = 放送局の業界の才能がその能力を遺憾なく発揮する場へ
――なぜ、TVerが完全オリジナル番組を制作することになったのでしょうか?
清水氏:TVerにとって様々な放送コンテンツをしっかり提供することは、まず何よりも重要であると思っております。それを前提にした上で、今後はより作り手の方々を引きつける場になっていく必要があると思っています。ネットサービスであるTVerにおいては、地上波では表現しきれない、様々な表現の可能性があると思います。これは規制だけの話ではなく、時間的制約・視聴環境の制約がないこと、また他の媒体と比較してもユーザーの専念視聴が非常に高いというTVerのサービス特性などに由来しています。これらの魅力を今後最大限拡張し、クリエーターを十全に刺激するプラットフォームでありたい、そのように私達は思っています。そして、そのまず第一弾として、まずは自分たちが先陣を切る形で、MBSとタッグを組み、オリジナル番組を立ち上げました。
――今回はTVer独自コンテンツとして、TVerが全体プロデュース、制作はMBSが担当しています。このような座組みは当初から想定されていたのでしょうか。
清水氏:TVer社には様々なスキルを持った社員がいます。今回の企画も、人気番組のプロデューサー、映画監督、マーケター、広告営業など様々なキャリアを歩んできたスタッフがTVer社員だけでも多く関わっております。さらにそのチームとMBSの制作チームが連携することで今までない切り口・観点で番組を創ることができるのではないかと思っておりました。特に今回は、『日曜日の初耳学』の人気コーナー「インタビュアー林修」で数々のインタビューコンテンツを制作するなど多くの知見を持つ木米氏にチーフプロデューサーとして担当していただいており、木米氏のおかげで番組のクオリティーが想像よりまったく異なるものになりました。まさにTVerにしかできない強みを活かし、テレビ局が持つスキームの解放と共存を志向しました。
――依頼された時はどんなお気持ちでしたでしょうか?
木米氏:MBSでは全国ネットの番組も多数制作していますが、放送エリアである関西以外の地域ではMBSの名前をご存じないという方も多くいらっしゃいます。その点、全国にあまねくユーザーを抱えるTVerの知名度は特に若い層に抜群ですし、「普段テレビは見ないが、TVerは知っている」という方にも届けることができます。誰にでも通じるプラットフォームで番組をやれるというのは「作り手・MBS」として特に魅力に感じるところです。
これは裏側の話ですが、普段は越えることができない“系列の壁”がTVerでは越えられるという点も大きな魅力です。地上波の場合、TBS系列であるMBSの社員が他の系列の番組に関わったり、まして出演するなどということは基本的にありませんが、さまざまな局の方たちが集まるTVerであればこうした制約もありません。また、社会現象にもなった話題のドラマ『silent』のプロデューサー村瀬健さんにも出演頂いているのもTVerならではと言えるでしょう。
■「安心安全なプラットフォーム」として、人生の“良質な”ヒントを提供したい
――「プロフェッショナルが若者に授業する」という今回のコンセプトに至った経緯をお聞かせ下さい。
清水氏:私は現在30代ですが、自分が学生だったころに比べて今の大学生、高校生のみなさんは、考えや行動がとても進んでいると感じます。今や、高校生で起業することすらも珍しくなくなりました。その一方で、これまで常識とされてきた多くの事柄が覆され、昔以上に自らの生き方の選択に悩むことも多いのではないかとも感じていました。私自身も今もなお、様々なトップランナーの方のお話を聞いていろんな壁を乗り越えています。
木米氏:私自身の話で恐縮ですが、自分は中学、高校、大学と「これをやりたい」という夢がありませんでした。「学校ではそれなりに勉強を教えてもらったけれど、社会に出てからのことは何も教えてもらわなかったな」という思いが自分の中にはあって、当時、何かそういうヒントをもらっていたら、いろんな選択肢が自分の中に早い段階で生まれていたのではないかと思うことがあります。そんな経験から少しでも生き方のヒントにつながることを若い方々にお届けできる番組がいいのでは?と清水氏と相談して決めました。
清水氏:また、TVerには他媒体と違って違法コンテンツがなく、ブランドセーフティの観点でも安全かつ安心して見られるものが集まっているという自負があり、ブランドセーフティを重要視する広告主の皆様は非常に多くなってきております。他の媒体でも教育に関するコンテンツや情報発信は少なからず見受けられますが、さまざまな情報が飛び交う現在だからこそ、安心して上質な学べるコンテンツをTVerで見ていただきたいと思っています。
■内容に即した番組尺・・・ 作り手として感じる「TVer限定」の強み
――TVerオリジナル番組として制作するにあたり、特に意識したところはありますか?
木米氏:地上波とは異なる、配信だからこその目線を意識したかもしれません。一定の面白い話がつむげるという確信を持てたら、その純粋な思いだけでチャレンジしてもいい。スタッフ全員とてもワクワクした雰囲気で番組作りに臨んでいます。地上波では決してスポットの当たらないようなトップランナーの方々にも講師として是非出演いただきたいと思います。
清水氏:TVerの場合、再生数という実数で反響を計れることはもちろん、具体的にどのような属性の方たちにどのくらい刺さったかということも高精度に可視化されるため、内容をターゲットに特化させた番組作りが可能です。こうした特長を制作や演出の過程に活かすことも意識しています。
――「TVer完全オリジナル番組」には、作り手としてどんな魅力を感じていますか?
木米氏:届ける相手を明確に定義できるので、少しでも多くの視聴者の気を引くために入れていたような過剰演出を廃し、自分たちにとって適切なトーンで演出が行えるという点は非常に大きいです。事実、この番組の画面は本当にシンプルな授業風景のみでテロップも最小限、音楽も少なめです。地上波では怖くて行えないような演出も、配信ならばトライ出来ることがあるのです。
また、ユーザーの皆さんにとって最適な尺、内容は考えた上での話ですが、地上波では必ず何分何秒にしなければならないという放送枠の制約がありますが、TVer完全オリジナルにはありません。これまで放送尺の都合で泣く泣くカットしていたシーンを全て盛り込むことができるし、逆に尺を持たせるために入れざるをえなかった冗長なシーンも全てカットできる。もっとも気持ちの良い長さで視聴者のみなさんにお届けできるのは、作り手として非常に大きなアドバンテージを感じます。
――この番組の広告スキームはどのような形なのでしょうか?
清水氏:番組を制作するにあたってもちろん制作費が必要です。そんな中、このTVerとしての初めての取り組み、そして番組の想いに最初に賛同頂いたのが、日経電子版様でした。若者の皆さんに何かヒントやきっかけを作ってあげたい、そんな想いに共感頂き、その後アイ工務店様、荏原製作所様、明光義塾様も一緒に応援したいと言って頂き、CMスポンサーとして提供を頂いております。半年間ではありますが、仲間として一緒に番組作りをしていけたらと思っています。
――最後に
木米氏:「この番組に出会ってなかったら交わることのなかったような切り口や考え方に出会うことができました」そんな感想が視聴者の方々から頂けたら、とても幸せだと思いますし、作らせてもらって厚かましい話ですが、この番組を通して私自身に新たな人生の目標が見つかってしまうような気がしてドキドキしています。
清水氏:OSRINさんもおっしゃっていましたが、最終的に決めるのは自分だと思っています。全く考えを押し付けるつもりはなく、肯定しても良し、否定してその反対の道を行くのも良しと思っています。是非この番組を通じて、視聴者の方々の今後の人生にとって、良いきっかけになれればと思っています。
〜テレビ局のプロが作った番組に最適なタイミングで配信〜
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