いよいよ迫るMIPCOMカンヌの日本発イベント~10月期ドラマから新作バラエティまで日本コンテンツ勢ぞろい~
テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子
10月17日から開幕予定の「MIPCOMカンヌ2022」
世界最大級のTVコンテンツ国際取引マーケット「MIPCOMカンヌ2022」の開催がいよいよ迫る。主催するRXフランス(本社・パリ)が発表した公式プログラムには連日にわたって、日本のイベント計画が組み込まれている。長澤まさみ主演のカンテレ制作ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』の世界初上映をはじめ、TBS新作バラエティ『LOVE by A.I.』の発表会や国際ドラマフェスティバルin TOKYO による恒例のアワードイベントに加えて、総務省の支援で日本の番組フォーマット共同プロモーション「TREASURE BOX JAPAN」やソニー提供コンテンツ制作セッション「Content Creation Now」なども予定する。
■カンテレ制作、長澤まさみ主演ドラマ『エルピス』世界初上映へ
38回目の開催を迎える「MIPCOMカンヌ2022」(2022年10月17日~20日)は関連イベントを含めて約1週間にわたり、フランス・カンヌ市内中心部にある海岸沿いの主会場「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ」で行われる。世界中の主要スタジオや放送局、配信プラットフォームから1万人以上の国際プロデューサーやバイヤー、コミッショナー、クリエーターが集い、300以上の出展参加が見込まれる。
3年ぶりに「完全復活」規模での現地開催が予想されるなか、日本発イベントが続々と計画されている。目玉の1つにあるのが、カンテレ制作による長澤まさみ主演の連続ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(以下、『エルピス』)の世界初上映だ。同ドラマは渡辺あやがオリジナル脚本を手掛け、演出は大根仁が担当、カンテレ所属の佐野亜裕美氏がプロデュースする社会派エンターテインメント作品。10月24日(月)の日本での放送開始に先駆け、カンヌ現地時間10月18日(火)18時30分からアジアン・ワールド・プレミア・TV・スクリーニングとして第1話が上映される。
60年近く続くMIPカンヌマーケットにおいて、日本のドラマが会場内最大規模のメインホール「グランド・オーディトリウム」で世界初公開されるのは今回が初となる。主催のRXフランスが発表した公式リリースではカンテレ作品『エルピス』の上映が単独で取り上げられ、「関西を代表する民放局のカンテレが手掛けるドラマシリーズはこれまで国際的に高い評価を受けている」などと紹介された。
またカンテレ岡田美穂取締役による「『エルピス』はシリアスな社会問題を扱っているが、同時にコミカルな会話劇と、視聴者の感情を揺さぶるようなプロットも持っている。この秋、日本だけでなく世界各国を驚かせる作品になると信じている」(原文は英語)というコメント文と共に、MIPCOMカンヌ参加者に向けて発信されたところである。
■日米共同開発のTBS新作バラエティ『LOVE by A.I.』発表会
ドラマ関連ではほか、日本テレビグループ傘下のHuluジャパンが国際大型プロジェクトに参加する連続スリラードラマ『THE HEAD』シーズン2のトークセッション企画が10月18日(火)12時30分から予定する。シーズン1に続いて、制作を主導したスペイン拠点のヨーロッパ最大手メディア・プロ・スタジオの声がけで出演者、制作者がカンヌ現地に集合し、今作では唯一の日本人キャストとなる福士蒼汰の登壇が発表された。
恒例の国際ドラマフェスティバルin TOKYOによる「MIPCOM Buyers’ Award for Japanese Drama」授賞式は10月17日(月)朝8時から予定する。今年のノミネート作品は『恋せぬふたり』(NHK)、『初恋の悪魔』(日本テレビ)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)、『マイファミリー』(TBSテレビ)、『復讐の未亡人』(テレビ東京)、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ)、『連続ドラマW 正体』(WOWOW)、『アバランチ』(カンテレ)、『オクトー』(読売テレビ)の9作品に上り、海外バイヤーが選んだグランプリ作品が当日発表される。
バラエティ関連イベントも目玉イベントが揃う。10月18日朝8時から予定する朝食付き新作バラエティ発表会はTBSが単独提供し、「SHOWCASE AND BREAKFAST」と題して恋愛バラエティ番組『LOVE by A.I.』のプレゼンテーションを行う。同番組は世界ヒット番組『ザ・マスクド・シンガー』のアメリカ版をプロデュースしたクレイグ・プレスティス氏が率いる制作会社Smart Dog Media社と共同開発したもので、プレスティス氏と共にTBSテレビコンテンツ制作局の松原拓也プロデューサー自ら説明を行う。
またキーノートをはじめ各種セッションの冒頭で今回も日本テレビの海外向け新作バラエティ番組のトレイラー映像が大量に映し出される予定だ。これもMIPマーケットのPR活動の1つにある。
■3年ぶりに復活する番組フォーマットプロモとソニー提供セッション
3年ぶりに日本のバラエティ番組フォーマットのプロモーションイベント「TREASURE BOX JAPAN」が復活することも発表された。総務省の支援により、今回から一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)の主催で計8社の海外向け新作フォーマットがお披露目される。
日本テレビ『Money or Junk』(『錬金バトル KASEGE』)、テレビ朝日『Fund My Fantasy』(『妄想会計』)、TBSテレビ『MEMORIZE THIS!』(『瞬間記憶バラエティー オボエロ!』)、テレビ東京『THE FIRST RECIPE』(『ザ・ファーストレシピ』)、フジテレビ『Battle of Brains and Muscles』(『インテリ&マッスル頂上決戦~パーフェクトワン~』)、読売テレビ『Uprising Kitchen』(『下剋上キッチン』)、カンテレ『Matching House』(『マッチング・ハウス』)、吉本興業『YOU LAUGH YOU LOSE』(『絶対に笑ってはいけない24時』)が並び、各社代表者が生プレゼンするスタイルで売り込む。
TREASURE BOX JAPAN 2022 | Japan Program Catalog (japan-programcatalog.com)
またソニーのカンヌ特別セッションも3年ぶりに復活する。これまで4K/8Kコンテンツなどがフォーカスされてきたが、今回は最新TVコンテンツ制作をテーマに「Content Creation Now」と題した3つのセッションが企画される。
10月17日(月)9時からはヴューアー・エンゲージメント・ツールを使用したインタラクティブTVを紹介する「NEW TELEVISION FORMATS ON DIGITAL STEROIDS」、同日17時30分からはTVスタジオでのXRの活用例を紹介する「HOW TO MAKE LIVE BROADCASTING CONTENT MORE ATTRACTIVE」、19日(水)9時からはヴァーチャル・プロダクションの検証事例などを紹介する「FILM AND TV DRAMA CREATED BY VIRTUAL/ REMOTE/ CLOUD PRODUCTIONS」を予定する。
このほか、現地から日本と海外放送局やスタジオとのディール成立の発表ニュースなども期待される。昨今、国際コンテンツ流通市場は動画配信プラットフォームの躍進などを背景に変革が進み、柔軟性ある海外展開が求められつつある。日本発イベントは果たしてこの新たな流れに乗ることができるのか。現地での様子を踏まえて追って報告する。