放送局が語る、リアルタイム配信の現状と今後 〜TVer Biz Conference 2022レポート(第3回)
編集部
左から)TVer 須賀久彌氏、日本テレビ放送網 朝倉玲子氏、テレビ朝日 栖原啓明氏
株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2022』が、2022年4月27日に開催。同月1日にフルリニューアルを実施した民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」(以下、TVer)のサービス概況をはじめ、急激な成長を続ける「TVer広告」の戦略方針、広告主や放送局の担当者らを交えたトークセッションなどが行われた。
TVer社からは、同社代表取締役社長・龍宝正峰氏、取締役・須賀久彌氏、プロダクトオーナー室 室長・中島和哉氏、広告営業部長・古田和俊氏、同広告営業部・矢部怜史氏、伊藤有弥氏が登壇。司会進行役はTBSテレビの良原安美アナウンサーが務めた。トークセッションでは動画広告の活用法、リアルタイム配信の現状と今後がテーマに掲げられた。
全4回にわたるレポートの第3回となる本稿では、トークセッション「放送局が語る、リアルタイム配信の現状と今後」の模様をレポートする。パネラーは、日本テレビ放送網株式会社 ICT戦略本部 担当部次長・朝倉玲子氏、株式会社テレビ朝日 セールスプロモーション局 オンラインビジネス部長・栖原啓明氏。モデレーターを株式会社TVer 取締役・須賀久彌氏が務めた。
■先行スタートの日テレ、リアルタイム配信は「ライブ感の強い番組」「ドラマの後半エピソード」で高い再生数を記録
最初に須賀氏がTVerのスマホアプリを用いて、2022年4月11日よりスタートしたリアルタイム配信の画面を説明。在京民放5局(日本テレビ・テレビ朝日・TBS・テレビ東京・フジテレビ)の系列ごとにチャンネルが分けられている点に触れながら、スワイプ操作でのザッピング機能や、シークバー操作による配信中番組の「追っかけ再生」機能(※「TVerID」ログインユーザーのみ対応)を紹介した。
続いて朝倉氏が、日本テレビにおけるリアルタイム配信の利用状況をプレゼンテーション。
同局では他4局に先行し、2021年10月2日より配信をスタート。これまでリアルタイム配信の再生数が多かったのは、2021年10月に放送された選挙特番『zero選挙2021』、同年12月31日に放送された年越しバラエティ特番『笑って年越したい!笑う大晦日』、2022年3月の第45回日本アカデミー賞授賞式中継の3番組だったという。
朝倉氏:ライブ感の強い番組で高い再生数を記録しました。ドラマについても、シリーズ後半の盛り上がりで非常に高い再生数となりました。
■新規ユーザーは“過半数”をキープ。リアルタイム配信が視聴者取り込みに大きく貢献
朝倉氏は、同局のリアルタイム配信における月ごとの新規・既存ユーザー比率の集計データを紹介。「時期が進むにつれて既存ユーザーの割合が増えていくもの」としつつ、実際には「半年経った時点でも53%を新規ユーザーが占めていた」とし、リアルタイム配信によって、新たなユーザーの流入が続いていると語る。
朝倉氏:部屋を移動する最中にもドラマの続きを見たい、電車で帰宅中だが先にドラマを見始めたい、など、いろいろなタイミングでテレビを見たいというニーズがあるんだな、ということを実感しています。
次に朝倉氏は、リアルタイム配信における月ごとの利用者属性を紹介。配信開始から5ヶ月経った2022年3月の時点でも「いまだ15%近くが新規ユーザー」といい、リアルタイム配信が新たなユーザー層の取り込みへプラスに働いていると強調する。
朝倉氏:在京民放5局によるリアルタイム配信開始で「チャンネル切り替え」が可能となり、さらにユーザー数やその属性の幅が一気に増えるのではないでしょうか。5局に配信局が増えることで、パワーは5倍プラスアルファの力が発揮されるものと期待しています。
新たに加わった「追っかけ再生」について、「びっくりするほど便利。TVerのファンを増やすには非常に良い機能だと思います」と朝倉氏。「既存の見逃し配信とリアルタイム配信をふくめ、ユーザーの方々が『自分なりの便利な使い方』をすることによって、TVerが次のステージに行けるのではないか」と、期待を語った。
■デバイス・興味関心別ターゲティングに対応。リアルタイム配信CMは「まずお試しいただきたい」
後半は、在京民放5局が結成する「配信ビジネス検討会」で営業ワーキンググループの主査を務める栖原氏が、TVerのリアルタイム配信におけるセールスの枠組みを紹介。
「地上波にある競合排除や隣接配慮が配信には適用されない」と前提を踏まえつつ、「地上波のレギュラー提供社には、リアルタイム配信における同一番組内のCM枠を媒体費無償で案内している」と語る。
リアルタイム配信については、現在トライアルセールス中。先述の地上波レギュラー提供社向け優先供給枠を除く「番組内CM」枠を新規でセールスしているほか、本編開始前後の「番組外CM」枠、また「追っかけ再生」のCM枠を、2022年4月11日から同年9月末までの期間限定でセールスしている。
配信局のうち、リアルタイム配信の「番組内CM」のセールスを実施しているのは、テレビ朝日・テレビ東京・フジテレビの3局。セールス手法については、リアルタイム配信・追っかけ再生・見逃し配信を個別購入のほか、セットでの購入が可能で、セールス単位はインプレッション単価(CPM)ベース。予約型広告とPMP(Private Market Place:媒体と広告主を限定した取引所)での販売に対応している。
TVerでの広告配信について、栖原氏は「デバイスごとのCM配信や、TVerのファーストパーティデータを活用したターゲティングができる点が特徴」とコメント。地上波と同様の競合排除や隣接配慮はないとしつつも、「性別・年齢のほか、番組のジャンル指定や興味関心などによるターゲティングも可能」と、そのメリットをアピールした。
具体的な広告配信のイメージを伝えるべく、栖原氏は地上波とTVerでのCM配信の違いを説明。「地上波では局が決めた順番で一律にCMが放送されるが、TVerでの配信についてはデバイスごとにランダムで異なる内容のCMが流れる」と語る。
また、リアルタイム配信では、CM枠を途中から見始めたユーザー向けに、余ったCM枠の時間に「スレート(蓋映像)」が挿入される点も説明。具体的な仕様を説明しながら、広告主に理解を呼びかけた。
「2022年6月中をめどに、在京民放5局「配信ビジネス検討会」の営業ワーキンググループで、リアルタイム配信の効果検証を実施する予定」と栖原氏。ユーザー層ごとの視聴傾向や、地上波放送への影響などを調査するという。
「リアルタイム配信の広告を、トライアルセールスの中でまずお試しいただきたい」と栖原氏。「リアルタイム配信においてCMがどのような出方をするのかを実際に体感いただいたうえで、私たち営業ワーキンググループ側でもしっかり検証をしていきたい」と述べた。
■リアルタイム配信で「TVerの視聴目的」が多様化。広告媒体としての価値向上に期待
トークセッション終盤、今後のTVerへの期待について、朝倉氏と栖原氏に伺った。
朝倉氏:使いやすくて、ユーザーに愛されるTVerであることが第一。ユーザーにより良いサービスを提供していただき、スポンサーのみなさんが『ぜひここに広告を流したい』と思える場所になってほしいと思います。
栖原氏:いまのTVerは、ドラマの見逃し配信をご覧になるユーザーさんが多いという印象があります。一方、4月のリアルタイム配信スタートを機に、報道番組の配信も始まりました。これらが今後どのように見られていくかも、注目したいところです。また、バラエティ番組に関していえば、途中からたまたまチャンネルを合わせても、そこから十分に楽しむことができるコンテンツだと思います。
そうした意味でも、今後TVerの視聴目的が多様化していくのではないかと思います。これによって新たなユーザーの方が増え、広告媒体としてのTVerの価値がさらに上がることを期待しています。
「リアルタイム配信や追っかけ再生が始まり、気がついたらこんなにバラエティ番組のラインアップも広がっている、ということは、ユーザーのみなさまにも気づいていただけていると思います」と須賀氏。「広告主のみなさまにも、まずは使っていただき、ご意見をいただければ幸いです」と締めくくった。
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