多様化する接触実態を定量的にとらえる〜博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所『メディア生活フォーラム2019』レポート(2)
編集部
2019年7月11日、東京都渋谷区の恵比寿ガーデンプレイスのザ・ガーデンホールにて、博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所(以下、メディア環境研究所)によるカンファレンスイベント『メディア生活フォーラム2019』が開催された。今回はサブタイトル「新しい『メディア満足』のつくり方」を掲げ、生活者におけるメディア態度の変容と実態について、最新の定量調査データとインタビュー映像が紹介された。
その中から、プレゼンテーションプログラムの後半として、新美妙子・博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所 上席研究員によるプレゼンテーション「多様化する接触実態を定量的にとらえる」をレポート。生活者のメディア接触スタイルに注目し、メディアコンテンツをどんなデバイス・サービスを通じて接触しているかに迫る。
メディア接触400分時代のメディア生活〜博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所『メディア生活フォーラム2019』レポート(1)
■デジタルが従来を「侵食している」わけではない
新美氏は冒頭、2018年11月から12月にかけて実施された同研究所の「メディア接触スタイル把握調査」について紹介。メディア発のコンテンツに生活者がどのようなデバイス・サービスを通じて接触しているかを調査したもので、東京都在住の15歳から69歳の男女1,236人が回答した。
デジタル化以前、メディアコンテンツは「テレビコンテンツをテレビ受像機で見る」「ラジオコンテンツをラジオ受信機で聴く」「新聞や雑誌コンテンツを紙で読む」というのが「従来」のメディア接触スタイルであった。その後、スマートフォンなどのデバイスの普及やインターネットサービスの発達により、さまざまなデバイス・サービスを通じて接触される機会が増えた。それが「デジタル」のメディア接触スタイルである。この実情をふまえ、同調査ではメディアへの接触スタイルを「従来」「従来・デジタル両方」「デジタルのみ」の3つのスタイルに分類。メディアごとに3つのスタイルの人がどのような構成になっているのか、接触者の実態を探った。
テレビコンテンツの接触者のうち、最も多くを占めたのは「従来のみ」の人で67.2%。「従来・デジタル両方」の人は30.6%で、テレビコンテンツを「デジタルのみ」で接触する人にいたっては、わずか2.2%という結果だった。
ラジオコンテンツにおいては「従来のみ」の人が最も多い41.6%であったが、「デジタルのみ」の人が31.3%、「従来・デジタル両方」の人が27.1%とテレビほどには差がつかず、3つのスタイルが拮抗する結果に。
雑誌についてはテレビコンテンツ同様「従来のみ」の人が多く、65.1%。一方で「デジタルのみ」の人はテレビコンテンツより多く18.9%だった。
続いて新美氏は3つの接触スタイル別の接触時間を紹介。すべてのメディアにおいて「従来・デジタル両方」の人がもっとも多くの時間、各メディアに接触していることが明らかとなった。
このグラフの内訳からは次のような“実態”も見えてきた。新美氏はこう語る。
「『従来・デジタル両方』で接触する人々の『従来』の接触時間は『従来のみ』の人と同程度。『従来』の時間を保持したままデジタルでの接触 が“上乗せ”されていることがわかる。デジタルが従来の時間を“侵食している”わけではなかった」
■デバイスごとに求められるコンテンツの「価値」を意識する
新美氏は調査対象者の自由回答結果より、生活者がメディアに見出す価値がデバイスごとに異なる点を指摘した。
「同じテレビコンテンツでも、テレビ受像機での接触は『ひとときの癒し』。パソコンでの接触は『片手間』、タブレットでの接触は『気楽』、そしてスマートフォンでの接触は『それでしか見られないときの最終手段』とデバイスごとに価値が異なる回答が得られた」(新美氏)
ラジオコンテンツについては、ラジオ受信機での接触は「集中しながら耳をすませる」、パソコンでの接触は「作業しながら楽しむ」、スマートフォンでの接触は「スキマ時間に耳を癒やす」など、やはりデバイスごとに異なる価値を感じている回答が得られたという。
新美氏は「(生活者の)『メディア満足』はデバイスによって異なる」とあらためて強調した。第一部のまとめとして、「情報過多時代、生活者はメディア接触時間を増やしたいわけではない。生活者の欲求は一日の中の『いい時間を増やす』ことである。そのためのメディア生活設計が求められる」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。