【第2回】映像媒体における広告の“モノサシ” 今だから求められる視聴質とは?~ViewThrough CV~
電通 データ・テクノロジーセンター データ・プラットフォーム開発部 前川 駿
テレビ、新聞、雑誌、OOH、ラジオといういわゆる「オフラインメディア」の広告にはデータが足りない、と言わることがあります。
実は、単純にメディアを販売するために活用できるデータの種類で言えば「オフラインメディア」は決してデータがないメディアではありません。視聴率、閲読者数、視認者数、聴取率など様々なデータを分析することが可能です。そういったデータをもとに、これまで「オフラインメディア」はメディア露出に対するアカウンタビリティを説明してきました。テレビで言えば、GRP、TRP、CPM、%コスト、全てテレビCMの露出(到達の広告効率)とその費用対効果を示す指標です。
しかし、クライアントの売上やウェブコンバージョンというKPI(到達した結果の広告効果)にアカウンタビリティを担保できるデジタルメディアが登場したことで、広告のアカウントアビリティの変質が起こってきました。デジタルメディアは、これだけ投資すればこれだけのKPIがあげられる、この実感があるからこそ、広告主が投資しやすいという背景があります。その点、「オフラインメディア」は、価値があると今までの経験則ではわかってはいるものの、相対的にKPIに対する貢献が実感を伴って分からないから投資しないというケースがあると感じております。
一方で、「デジタルメディア」も、これまでは成り立ちとしてCPC/CPAといった獲得に対するROIのみが重視されていたため、実は広告露出に対するアカウンタビリティは「オフラインメディア」よりもあまり整備されていなかったのが実態です。
特に2012年ごろからアドフラウド(広告詐欺)やアドベリフィケーション(広告品質検証)といった広告露出に対する最低限の担保の話がDSPで注目されてきた流れの延長で、ここ数年でようやく、動画広告に対するビューアビリティや有効フリークエンシーという考え方が浸透してきたと言えると思います。
そのような経緯を考えると、「オフラインメディア」が露出に対するアカウンタビリティが強いという機会に加え、クライアントのKPIまでアカウンタビリティを持つという課題を解決できれば、きっと強力な価値向上に繋がると確信しています。
そのひとつが、DCM(※)等の第三者配信の技術を活用することで可能となるViewThoroughCVという指標です。(※DCM:Google社の第三者配信ツール,DoubleClick Campaign Manager)
動画を完全に視聴(View)した人が、その場でClickする以外に検索したり他の広告に接触してサイト来訪した場合、そのおおもとのViewに対してもサイト来訪に寄与したとするアトリビューションの考え方です。(図1)
このような測定によってClickではなく、Viewベースでのサイト来訪や広告主のコンバージョンといったKPIに対する貢献度を測定することが可能となっています。
第三者配信を活用したViewThoroughCVという指標は、もともとは「オンラインメディア」に対する指標なのですが、大規模なシングルソースパネルと接続したDMPを第三者配信と連携させることで、「オンラインメディア」で使われ始めているViewThoroughCVと同じ定義で、テレビCMの視聴有無(Viewの有無)に対してサイト来訪やCVへの貢献度を測定することが可能となってきています。
ひとつの例を見て頂ければと思います。図2の数字はダミーデータですが、CMを視聴した人とそうでない人のデジタル上の行動や広告主のサイト来訪やコンバージョンへの貢献度の違いを測定したものです。またさらに、テレビCMが非接触の状態で純粋にデジタル広告のViewの効果も検証することも可能となります。
このケースでは、テレビCMを見た人とテレビCMを見ていない人で、バナーを重複接触させたとき、Clickしなかったものの、サイトに来訪した人は約5~6倍の差があったことがわかりました。まさにテレビCMのデジタル広告に対する間接効果とCVに対する貢献度を示したものになります。
もちろん、ViewThroughCVという指標にも課題はあると考えており、デジタル上の動画が運用型広告の場合は、配信されるセグメント、入札条件、メディアという条件を極力、同一に保つなどの工夫が必要です。
しかし、そもそもこれまで全く行動ベースで見えにくかったテレビCMを初めとする「オフラインメディア」が、クライアントの売上やウェブコンバージョンというKPIに対する間接効果を含めた貢献度を示していくことで、「オフラインメディア」の価値の再発見を行うことができると考えています。
このことは、広告主にとっても、データやテクノジーを、その技術の新しさではなく、最も投資コストの大きい「オフラインメディア」に対して活用していくことで真にマーケティングROIを高めていくことに繋がりますし、ひいては消費者にとっても、需要を作りだすような価値の高いコンテンツや広告を享受する機会が増えていくというメリットに繋がる活動だと考えています。
広告代理店の立場では、「メディア」「広告主」「消費者」の三方よしと繋がるものに貢献しない限り、存在意義はないという自覚を持って、古くて新しい“モノサシ”の取り組みを進めてまいりたいと思います。