「こうしてくれたら、テレビ見ます!」産業能率大学 小々馬ゼミ『AgeMi!マーケ!2030』レポート<Vol.2>
編集部
産業能率大学 自由が丘キャンパスラーニングコモンズ( IVYホール)にて、同大学経営学部 マーケティング学科 小々馬敦教授が主導する「小々馬ゼミ」主催のカンファレンス『AgeMi!(アゲミ)マーケ!2030』が開催された。
「広告業界の最先端で活躍するパネリストを招き、10年先の未来を見据えた若者向け広告の潮流を講義形式で解説する」というコンセプトで行われたこのカンファレンス。当日は広告・PR業界、事業会社、テレビ・映像関連などの分野から300名を超える参加者が訪れ、賑わった。
今回は、セッション『こうしてくれたら、テレビ見ます!』の模様をレポートする。同ゼミに所属する2年生の学生がパネラーを務め、「若者代表」として自分たちが求めるテレビ番組のかたちを提言した。
■「私たちはテレビ離れしていない」
パネラーを務めたのは、同ゼミ2年生の渡辺萌さんと鹿角梨夏さん。冒頭で2人は「最初に結論を」を前置きし、「若者たちはテレビ離れしていない」と“宣言”した。
同ゼミが関東と関西の高校生男女に対して行った調査では、全体の7割が「毎週見ているテレビ番組がある」と回答。テレビとInstagram、いずれも「なんとなく眺めている」という答えが多数を占めていたという。テレビを見るという習慣そのものは変化しておらず、昨今の「若者のテレビ離れ」という論調に対しては「自分達に向けられた番組がテレビにないと感じるから」「テレビ離れではなく、テレビ局が私たちから離れている」という構えを見せた。
さらに、2018年に同ゼミ高校生を対象として行った調査の結果として「自室よりもリビングにいることが多い」という回答を紹介。「テレビは家族とのつながりに必要なBGM」であるとし、家族でテレビを一緒に視聴するという傾向が強く出ているとした。
同調査においては「一人暮らしするようになったらテレビは買わない」という回答が全体の2割程度にとどまった点も言及。「高校生の時点でテレビ視聴を結論付ける番組作りが重要」との考えを示した。
■ドラマは「まとめてイッキ見」「“家族と見られる内容か“を重視」
ドラマの視聴習慣については「シリーズよりも一話完結型を好む」(鹿角さん)。シリーズ物は「次週まで待ちたくない」(渡辺さん)といい、「放映終了後に“イッキ見”が基本」(鹿角さん)という。
リビングで家族と一緒に楽しむもの、という意識が強く、「家族と一緒に見られるストーリー・描写であるかどうか」が視聴の有無を大きく左右するという。
「殺人暴力や不倫のような過激な描写要素のあるものは、家族と一緒に見られないので好きじゃない」(渡辺さん)
また、視聴する番組の選び方について「いつも見ているものに安心感を感じる」(鹿角さん)といい、「キャストや監督の名前で選ぶことが多い」(鹿角さん)と語った。
■登場人物には「自分達と同じ土俵にいる」感じがほしい
つづいて壇上では、現在のテレビ番組における「好きではない演出」についての話題に。
「学園ドラマにおいて登場人物たちが校舎の屋上に集まるシーンがあるが、現在は校則で屋上には立ち入れないことが多く、現実味がない」(渡辺さん)、「高校生の登場人物がやたらと東大を目指しがち」(渡辺さん)と指摘。「実際の学園生活を送る自分達から見ると現実味がない設定を見ると興ざめてしてしまう」(鹿角さん)と語った。
番組や広告にYouTuber(YouTube上でタレントのように振る舞い、パフォーマンス動画を公開するクリエイター)が起用されることについては「YouTuberは『あくまで自分たちと同じ一般人が面白いことをしているから面白い』のであり、芸能人としてテレビに出演していても興味が湧かない」(鹿角さん)、「YouTuberがテレビに出ていると『自分たちと同じ土俵にいない』気分になる」(渡辺さん)と切り捨て、テレビ番組に登場する人物には「自分たちが親近感を持て、感情移入できる人物像」を求めていることを強調した。
かつてはテレビ番組の放送に合わせ、急いで帰宅する…… ということが主流であったが、現在は「自分の見たい時間にまとめて見る」ということに重きをおき、かつ登場人物に「自分たちと同じ“土俵”の人間を求めている」という若者たち。
昨今の恋愛リアリティーショーの人気も、「自分たちと同じ人間たちが、共感できるシチュエーションのなかで感情移入させてくれる」という感情に根ざしているようだ。
最後に、“私たちが「おもしろい!役に立つ!」番組をもっと放送してください!”と述べ、発表は終了となった。