フジテレビ「seek∞」でたくさんの“問い”が見つかるSXSWの報告会を実施
編集部
株式会社フジテレビジョン(本社:東京都港区、以下フジテレビ)は4月3日、昨年4月にスタートしたニュースメディア「FNN.jpプライムオンライン(以下、FNN.jp)」の誕生一周年を記念したトークイベント「seek∞」(読み:シーク)を開催。同イベント第一弾は、3月8日から米テキサス州オースティンで開幕した「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2019」をテーマに、現地を訪れた企業のキーパーソンや文化人など各界からゲストを招いての報告会を実施した。全2部構成で行われたが、第1部の模様をお届けしたい。
■たくさんの“問い”を見つけられるSXSW&「seek∞」企画背景
オープニングトークで登壇したのは、総合司会を務める同局・内田嶺衣奈アナウンサー、同イベント仕掛け人である、フジテレビ・ニュースコンテンツプロジェクトリーダーで、「FNN.jpプライムオンライン」チープビジョナリストの清水俊宏氏と「FNN.jpプライムオンライン」を担当し、「seek∞」プロデューサーの寺記夫氏の3名だ。
清水氏は、「未来を探求するビジネスパーソンに役立つ最新のテクノロジー情報やビジネス情報を発信するだけでなく、来場者同士のネットワーキングの場を提供するなど、メディアが関わるからこそできる新しいタイプのトークイベントをずっと作りたいと思っていた」と「seek∞」企画意図に触れた。
そして、記念すべき第1回のテーマに「SXSW」を選んだのは、様々な技術やアイデア、文化、芸術などが絡み合い、世界に革命を起こすような「問い」が見える場所がSXSWだからだと理由を語った。続けて、「現代社会はビッグデータやAIなど、人間よりも格段に速いスピードで次々に答えを出すテクノロジーが急速に進化している。そのため、人間には“問を立てる”仕事がますます求められるようになった。だからこそ、日本でも未来に向けた“問いを探せる場”を作りたい。それがトークイベント「seek∞」の命名由来でもある」と、本場SXSW同様、同イベントでもたくさんの「問い」を見つけられる場にしてもらいたいと語り、開会した。
■SXSW2019のトレンド
登壇した株式会社AOI Pro.情報開発プロジェクトリーダー エグゼクティブグローバルプロデューサーの北村久美子氏は、「SXSWとは、世界中からイノベーターが集う場所で、世界のリーダーたちとの“問い”のぶつけ合いができる場所である」と要約。そして、北村氏がSXSW2019から見た下記”4つの世界の潮流”と、関連したセッションの内容が伝えられた。
1.豊かな社会から個の幸せへ
2.デジタル不信感に直面する時代
3.人類と論理間
4.自然への回帰-Digital Detox-
Google、Apple、Facebook、Amazonといった企業が生活の中心に入ってきたことで、多様なサービスがメジャー化し、パーソナルライズしているが、結局は人であり、コミュニケーションが基軸となる。そういった部分に、再度注目が集まっている流れがあると北村氏は語った。
次に登壇した博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 主席研究員の加藤薫氏は、CES(Consumer Electronics Show)とSXSWの違いを、同イベントのタイトルにもなった「SXSWに解はない。しかし、問いは無数にある」と要約。
そして、SXSW2019で加藤氏が感じた、下記3つの問いを発表した。
1:情報:情報の概念が変わる、これからの動的な「スマートインフォメーション」の姿とは
2:プラットフォーム:ゴーグルの中から外へ。XRで増幅させる「人間の知性と体験」とは
3:コンテンツ:自律走行が前提となる、そこにおける「コンテンツと人間のよいあり方」とは
北村氏同様、加藤氏もそれぞれの問いに関連したセッションの模様を報告し、同じテーマでもCES(解)とSXSW(問)では発想自体が異なる点を指摘。そして、「”生活のデジタル化”が進む中で、これからの情報・メディア・コンテンツへの人間の”よい付き合い方”とは何かを問い続けたい」と結んだ。
■日本のコンテンツは世界に通用するか?
株式会社電通 Design Strategist /OPENMEALS発起人の榊良祐氏は、あらゆる料理をデータ化し、世界中にシェアできる“食のオープンプラットフォーム”を目指す『OPEN MEALS』のプロジェクトリーダーだ。
昨年のSXSWでは『SUSHI TELEPORTATION(スシテレポーテーション)』を展示し、「世界中にプロジェクトが拡散され、多くの協力者を得た」と榊氏。その甲斐あり、今年は2020年開店を目指す超未来データレストラン『SUSHI SINGULARITY TOKYO(寿司シンギュラリティ東京)』のデモンストレーションを行ったことを報告した。
結果、昨年度と合わせてたくさんのメディアにも取り上げられ、広告換算にすると、日本だけで6億9,347万円に上り、換算不能な海外メディアを入れると、倍以上に膨らむ計算だ。榊氏は、「SXSWを活用すれば、前例のないプロダクト、サービス、マーケットといった未来事業がつくれる」と呼びかけ、日本発の未来産業を共創しようと呼びかけた。
■企業でイノベーションを起こすには
シチズン時計株式会社 オープンイノベーション推進室 室長 大石正樹氏と同室 山﨑翔太氏は、新プロジェクトを引っ提げ、手探りながらも前例のない単独初出展を果たしたSXSW2019を振り返り、時計以外の分野でのイノベーションに取り組むまでの経緯と、取組みについて発表した。
大石氏は、「出展したことで外部評価が高まり、内部の抵抗分子も協力的になり、外の風が心地よい追い風となって内部に大きな影響を与えた」とコメント。
同プロジェクトへの参画を志願し加わった山﨑氏は、「他業務との兼任で大変な時期もあったが、組織化されたことで無事SXSWに間に合った。結果、たくさんの人に受け入れてもらい、生み出し側より、使う側の方が発想力があることに気付き、そうした思わぬ出会いからアイデアが生まれた」と、新プロジェクトのお披露目は2019年秋頃になると発表された。
■デジタル発酵する風景
第1部の最後は、「The New Japan Islands(日本館)」の統括ディレクターであるメディアアーティスト 落合陽一氏と、同統括プロデューサー経済産業省 宇留賀敬一氏の「デジタル発酵する風景」と題したセッションが行われた。
実は「デジタル発酵する風景」とは、今回の日本館のコンセプトで、デジタルを発酵したカオスな世界は外国人からの評判もすこぶる高かったそう。座禅体験やこたつ、パチンコ、スナック、土偶など、日本を象徴する展示には、多くの関心が集まったことなどが報告された。
セッションの終わりには登壇した2人への質問タイムが設けられ、時間を延長してもなお掛け合いが続くなど、盛り上がりを見せていた。
第1部では登壇者それぞれの視点から見たSXSW2019の様子や感想、発見、そして今回の「seek∞」で新たに生じた“問い”を抱きながらも、気持ちは早くもSXSW2020へと向けられていた。今回の第1弾「seek∞」に続く第2弾では、どのような目新しい試みが行われるのか、引き続き動向を追いたい。