TiVo、アメリカの「コードカット」対策に威力を発揮!リコメンドサービスの日本本格展開を見込む<vol.1>
編集部
「無秩序で無限にあるコンテンツから、目的のものを見つけ出す方法を革新的に作り出しています」(TiVo株式会社 HPより)というTiVo。
アメリカ発の企業で、元々はMacrovisionが電子番組表を手がけるGemstar-TV Guide Internationalを買収し、社名をRovi Corporation(以下、Rovi)に変更。その後、Roviは2016年にHDDレコーダーやセットトップボックス向けの動画配信ソリューションを提供していたTiVoを買収し、現在は社名をこの「TiVo」に。これに並行し、Digitalsmithsの買収も行っており、データ分析を強化。番組表データを活用したレコメンドやアナリティクスのソリューションをトータルでケーブル・配信事業者向けに提供している。
米国では、TiVo BOLTセットトップボックスも販売しており、タブレット、モバイル端末を網羅するビデオレコーダー(DVR)機能でも長年の実績を持っている。
また同社は、CES2019(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のプライベートブース(at ARIA Resort & Casino)で新たなサービスの日本版プロトタイプの展示も行っていたが、この度、日本支社にて改めて、TiVo株式会社 代表取締役社長 日本担当シニアバイスプレジデント 西村明高氏、同プロダクトマネージメントダイレクター 勅使川原智氏に話を伺った。
ユーザー向けの「コンテンツリコメンド機能」が2つと、その効果を見ることができる事業者向けに開発された「アナリティクスツール」のデモを見させていただいたが、前編ではリコメンド機能について紹介する。
■EPGから直接見逃し配信に遷移
一つ目はこちら。J:COMで実施している「VOD Link」という機能。Gガイド HTMLに組み込んだもので、ユーザーが、好きなコンテンツをリアルタイムのテレビ番組とVOD(ビデオオンデマンド)作品からシームレスに見つけられるようになるもの。
この画面は、一見見慣れたGガイドの画面だが、チャンネルの上部に、赤いアイコンと「見逃し視聴へ」という表記がある。ここを選択すると、そのチャンネルの中で、J:COMオンデマンドで配信されている番組過去3週間分が表示される。
ここを選択すると、そのチャンネルの中で、J:COMオンデマンドで配信されている番組過去3週間分が表示される。
勅使川原氏:見逃し視聴は、番組表と親和性が高いということで実装しています。番組表は現在と未来を出すものですが、その過去版のイメージですね。
一方、番組表では一つ一つの番組からもこの機能がリンクされている。
特定の番組の画面からも、「関連シリーズ/VOD」「見逃し視聴一覧」と、VODや見逃し配信サービスへの遷移が図られている。
さらに「出演者一覧」を選択すると、顔写真とともに、その出演者の出演する放送番組とVOD作品の数が表示され、顔写真を選択するとそれぞれの一覧に遷移できるようになっている。
このVOD Link機能の実装を元に、この先OTTサービスとの連携などを考えていた中、プレミアム・プラットフォーム・ジャパンのサービス「Paravi」との実験もスタートすることになったという。実験では、番組表で掲載されている番組のうち、Paraviで配信されているものは、直接リンクし視聴ができるようになる。
現在、この機能の商品性をテレビ、レコーダーの各製造メーカーに打診中だという。
西村氏:今はGガイド搭載のメーカーさんのご意向を伺っています。その後、興味があるということになれば、今度は放送局のみなさんとお話していきたいです。EPGから見逃しが視聴できるというこのサービスは、目標としては2020年春の開始としています。例えば、放送局がやっている無料の見逃し配信サービスは、親和性が高いと思っています。
現状は、リアルタイムの番組表の上部から遷移する形だが、インターフェイスについては検討中だという。
西村氏:見慣れた一覧表示もそうですが、上にスクロールしていくようなシームレスなEPGにすることも可能です。例えばPanasonicのテレビでは過去番組表が実装されていますし、そこから連動することもありうると思います。
■経営に直結するソリューション
もう一つは、「パーソナライズド・コンテンツ・ディスカバリー」という、個人向けおすすめ機能だ。「Gガイドのメタデータを使って、かつ実ユーザーの使用動向からユーザー嗜好を学習して、各ユーザーに対するオススメの番組を出す」(勅使川原氏)というもの。
プロトタイプ制作にあたり、Gガイド使用者のうち2万人の嗜好をクラウドサーバー上で学習させ、6家庭向けのオススメ番組サンプルを作り出したという。
勅使川原氏:(画面上で)一つ目のオススメ番組グループは、全チャンネルで現在放送中の番組の中でのオススメです。その家庭の好みだけではなく、全Gガイドユーザーに人気があるものも引っ張り出せるようになっています。その次のオススメ番組グループは、これから一週間の番組の中からのオススメを提案型で行っています。
西村氏:例えば同じドラマ好きでも、韓流ドラマ好きとハリウッドドラマ好きの視聴者は全く違いますが、メタデータの中にはそのようなサブジャンルがないんです。ただ、今のメタデータと視聴データをいただくだけで、そのようなレコメンドができると判明しました。また、このオススメは細かく設定が可能です。
このレコメンド機能は、アメリカですでに導入されています。現地での反響などについて聞くと、
西村氏:アメリカでは50社ぐらいに使っていただいています。全米のケーブルテレビ局の1位から10位のうち、1位のComcastは自前ですが、Time Warnerなど他の9社はこちらを使っていただいています。また、全米のサテライトテレビの会社2社ともに使っていただいており、VODでもVerizonなどの大きいオペレータに使っていただいています。
コードカットという言葉が3年ほど前からよく言われていました。「なぜケーブルテレビに月額100ドルも払うのか。NetflixとYouTubeと地上波だけでいいじゃないか」というものです。そのコードカットへの対策としてこのサービスの導入が進みました。コードカットへの対策として各社はコンテンツを増やしていますが、今度は増やしすぎて見たいコンテンツにたどりつかなくなったので、パーソナライズが大事になったのです。自社商品の中でもこのソリューションを組み入れています。
勅使川原氏:TiVo エクスペリエンス4という弊社のセットトップボックスのユーザーインターフェイスソフトウェアでも採用しています。テレビ放送だけではなくオンラインサービスや、録画されているものなど、メディア横断でオススメ番組を提示しています。
西村氏:NetflixもAmazonもアメリカでのコンテンツのメタデータは弊社で作っているんです。それをサービス各社に卸しているため、このように横断的に紹介ができるのです。
今回、このリコメンドサービスを日本でやることになった理由はなんでしょうか?
西村氏:アメリカでお客さんが付いているということと、このソリューションは経営に直結するものだからです。ケーブルテレビなどのサービスの脱退が減ったら収入が安定し、加入や視聴が増えたら収入が上がる。そのように導入することにより費用対効果が明確なのです。
ケーブルオペレーターさんやVODのオペレーターさんは加入者の脱退に悩まれているので、導入によって脱退が減るという点をお伝えしていきたいです。
後編では、このリコメンドを提案する上でのアナリティクスツールの仕組みについて解説いただく。