電通、「2018年(平成30年)日本の広告費」を発表
編集部
株式会社電通(本社:東京都港区)は、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2018年(平成30年)日本の広告費」を発表した。ここでは、その一部を抜粋して内容を紹介する。
■2018年 日本の広告費の概況

2018年の総広告費は、持続する緩やかな景気拡大に伴い、通年で前年比102.2%(6兆5,300億円、7年連続のプラス成長)となった。
先行き不透明な世界経済や度重なる自然災害、弱含みの個人消費や高まらない所得実感など、不安材料は多かったものの、好調な企業収益などが日本経済の成長を後押し。また、媒体別では引き続き好調なインターネット広告費が総広告費全体をけん引する結果となった。市場全体としては、まさに構造変化の真っただ中にあると言える。
一方、インターネット広告のみで解決できないマーケティング課題を、従来からある媒体と組み合わせるなどして解決する統合ソリューションがより深化した。データやテクノロジーを活用し、各媒体の強みをさらに高めていく動きがより顕著となった。
媒体別にみると、「新聞広告費」(前年比92.9%)、「雑誌広告費」(同91.0%)、「ラジオ広告費」(同99.1%)、「テレビメディア広告費」(同98.2%、地上波テレビと衛星メディア関連)を合計した「マスコミ四媒体広告費」は、前年比96.7%となった。「インターネット広告費」(同116.5%)は、運用型広告を中心に堅調な伸びを示し、加えて、今回初推定したマスコミ四媒体由来のデジタル広告費※の増加による効果もあり(前年は仮推定・非開示)、広告費全体を大きく押し上げる結果となった。「プロモーションメディア広告費」(同99.1%)は、「交通広告」「POP」「展示・映像ほか」が増加。
業種別(マスコミ四媒体、衛星メディア関連は除く)では、21業種中5業種で増加した。主な増加業種は、「精密機器・事務用品」(前年比123.2%、メガネ型拡大鏡)、「外食・各種サービス」(同104.0%、飲食業、人材派遣)など。一方、主な減少業種は、「出版」(同87.2%、出版案内、婦人・家庭誌)など

マスコミ四媒体由来のデジタル広告費とは、マスコミ四媒体事業社などが主体となって提供するインターネットメディア・サービスにおける広告費のこと。新聞デジタル、雑誌デジタル、ラジオデジタル、テレビメディアデジタルのことで、これらのデジタル広告費はマスコミ四媒体広告費には含まれない。なお、テレビメディアデジタルの内訳である「テレビメディア関連動画広告」は、キャッチアップサービスなどインターネット動画配信における広告費のことを指す。
■媒体別広告費の概要(一部抜粋)
「インターネット広告費」は、前年に引き続き運用型広告、動画広告(SNS上での活用も増加)の成長がさらに加速し、1兆7,589億円(前年比116.5%)と5年連続で二桁成長となった。構成比も総広告費全体の26.9%となり、前年より3.3ポイント増加。2018年から推定を開始した「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は582億円だった。
「インターネット広告媒体費」は、1兆4,480億円(同118.6%)と、前年より2,274億円増加した。
一方、「マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)」は、2兆7,026億円(同96.7%)と4年連続して減少。また、「プロモーションメディア広告費」も、2兆685億円(同99.1%)と、4年連続での減少となった。
●テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連):1兆9,123億円(前年比98.2%)
【地上波テレビ:1兆7,848億円(同98.2%)】
・地上波テレビは、緩やかな景気拡大で増加が期待されたものの、出稿の勢いが活性化するまでには至らなかった。
・番組(タイム)広告(前年比101.2%)は、「第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)」「2018 FIFAワールドカップ ロシア大会」「第18回アジア競技大会(2018/ジャカルタ)」などのスポーツ番組が貢献し増加した。地域別では、通年で基幹8地区中、東京、名古屋(2年連続)、大阪(2年連続)、北海道、静岡、広島の6地区が前年超え。
・スポット広告(同96.3%)は、一部業種で増加が見られたものの、2年連続でのマイナスになるなど年間を通して低調に推移。地域別では、通年で全32地区中、沖縄を除く31地区で前年実績を下回った。
・業種別では、「精密機器・事務用品」「外食・各種サービス」「教育・医療サービス・宗教」「金融・保険」などが増加。一方、構成比の高い「食品」「化粧品・トイレタリー」「飲料・嗜好品」などが減少した。
【衛星メディア関連:1,275億円(同98.1%)】
・BS 放送 922.9億円(前年比99.7%)、CS放送 187.0億円(同93.1%)、CATV放送 164.8億円(同94.7%)と、前年まで成長が続いていた衛星メディア関連がマイナスに転じた。
・特に、CS放送のペイテレビチャネルにおける通販広告の減少が顕著。背景にはレスポンスの低下に伴う投下量の見直しやデジタルシフトの進展などがあると考えられる。
●ラジオ広告費:1,278億円(前年比99.1%)
・ラジオ広告費は、3年ぶりにマイナス。トップ業種の「外食・各種サービス」が前年比97.1%と前年に続き減少したことが要因の一つ。
・業種別では、通販などが伸長した「流通・小売業」(前年比114.9%)や、「精密機器・事務用品」(同120.3%)、「自動車・関連品」(同104.0%)など13業種が増加した。一方、減少は8業種。
・「radiko.jp(ラジコ)」は、月間ユニークユーザー数とプレミアム会員数が堅調に増加し、年後半にはオーディオアドを本格的に開始。
・コミュニティ放送も前年に続いて堅調で、ラジオ広告費全体の押し上げに寄与した。
●インターネット広告費:1兆7,589億円(前年比116.5%)
【インターネット広告媒体費:1兆4,480億円(同118.6%)】
・インターネット広告媒体費のうち、運用型広告費は1兆1,518億円(前年比122.5%)を占め、大規模プラットフォーマーを中心に高い成長率となった。自社プラットフォームを保有する媒体社も運用型の機能拡充とその広告販売に注力し始めており、各種コンテンツメディアについては、収益基盤となる運用型広告プラットフォームの活用を進めている。
・2018年の特徴は、自社プラットフォームの開発・拡大路線をとる媒体社と、他社プラットフォームの活用を軸とする媒体社に傾向が分かれてきたことにある。加えて、動画広告の表示フォーマット開発が進むなど、媒体UI(ユーザーインターフェース)の洗練化が進展した。
・また、大手プラットフォーマーによる事業は、広告領域だけではなく、AIスピーカーや決済領域、自動運転車への進出など多方向に拡大中。
・クライアントのブランドセーフティーへの関心の高まりとともに、運用型広告についてはより精緻な運用が求められている。予約型広告については評価が見直される傾向があるが、第三者配信への対応など運用型広告と同等の配信技術の導入が求められている。
・アドフラウド問題への対処などを含め、業界全体に高いコンプライアンス意識が求められている。
・また、本広告費には含まれないが、2018年にはEコマースメディアにおける広告市場も急速に成長しており、今後もその動向が注目される。
【マスコミ四媒体由来のデジタル広告費:582億円(インターネット広告媒体費の一部)】
マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は、急速に成長しており(前年比二桁成長と見られる)、運用型以外の領域での上昇が確認された。
・新聞デジタル:132億円
各社ともに運用型広告の売上改善、アドベリフィケーションへの対応、特にブランドセーフティーへの貢献に注力した一年であった。専門分野に特化したメディアのPV数が増加した結果、同メディアの成長が加速。さらに2019年を見越し、ヘッダービディングやアドフラウド対策など技術面での強化が進んだ。ブランドイメージの毀損を避けるトレンドが強まり、新聞デジタルの必要性が高まってきている。業種別では「ファッション・アクセサリー」などのラグジュアリー系が好調を維持。一方、「金融」「自動車関連」が減少。
・雑誌デジタル:337億円
出版社のデジタル事業拡大に伴い、アドベリフィケーションやブランドリフトを基点とした出版コンテンツの価値がクライアントに認められ、前年比200%超を達成したメディアも多くあった。紙媒体を基点としないデジタルネイティブメディアが相次いでローンチし、ユニークユーザー数・広告ともに好調に推移した。主要出版社では、デジタル広告の売上が広告売上全体の40~50%になるなど、デジタルメディアシフトが大きく進んだ。
・ラジオデジタル:8億円
「radiko.jp」をはじめするオーディオアドが急速に市場を拡大させている。ラジオデジタルの数字は前年比で増加したと見られ、その大きな要因には放送局独自のインターネットオリジナルコンテンツの堅調な伸びがあると考えられる。
・テレビメディアデジタル:105億円
2015年以降、テレビメディア関連動画広告が急速に成長しており、2018年には100億円を突破。地上波テレビ番組のキャッチアップ配信を行うTVer(ティーバー)などは、コンテンツ力を背景にさらなる展開が期待される。
【インターネット広告制作費:3,109億円(同107.7%)】
・インターネット広告制作費は、2018年も堅調に推移。
・企業のデジタルトランスフォーメーションの進展により、マーケティング活動とデジタル制作の相関性が一層強まってきた。「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に向け、この傾向はさらに加速していくと予想。
・特に伸長している制作領域は、コンテンツマーケティング(情報記事など)、ユーザーとのコミュニケーションサイト(会員サイトなど)、ウェブ動画(動画サイト、自社サイト掲載用など)、SNSとの連携企画、モバイルサイトなど。
・自社サイトをマーケティング活動の重要なメディアとして捉える傾向が、ますます顕著にってきた。その背景には、昨今取り沙汰されることの多いブランドセーフティーが担保できるという視点が見逃せない。情報の品質や信頼性という観点からも、自社サイトを含むオウンドメディアの制作が改めて注目されている。
・他の施策と併せた「コミュニケーション設計」や「効果の可視化」など、デジタル制作の領域でもマーケティングの実効性がますます求められるようになってきている。
■業種別広告費(21業種、マスコミ四媒体〈衛星メディア関連は除く〉のみ)について
2018年は21業種中5業種の広告費が増加、16業種が減少となった(2017年は6業種が増加、15業種が減少)。