巻き取り式や8K!CES2019で見た“次世代テレビ”のまとめ
IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志
1月8日〜11日(現地時間)に米ラスベガスで世界最大級のコンシューマエレクトロニクス&テクノロジー関連展示会「CES 2019」が開催された。世界中から4,500社以上の企業が参加し、最新製品や最新テクノロジーが展示された。
最近では自動運転などの技術革新が急ピッチで進むモビリティー関連の展示ブースが広がっている。そんな中で相変わらず展示会場の“華”として注目を集めているのが大手家電メーカーの薄型テレビだ。
■話題をさらったのはLGの「巻き取り4K有機ELテレビ」
テレビメーカーのブースでは多くがフルハイビジョンテレビの16倍(縦横各4倍)もの解像度を実現した「8Kテレビ」を展示し、その迫力と緻密な映像で来場者を魅了していたが、それよりも来場者の目を釘付けにしていたのがLGエレクトロニクスの“巻き取り4Kテレビ”、「LG SIGNATURE OLED TV R」だった。
LG SIGNATUREシリーズはLGエレクトロニクスのフラッグシップブランドだ。同社は8Kテレビも同時に展示していたのだが、LGブースの中心で大きくアピールしていたのはこの巻き取り4Kテレビだった。巻き取り4Kテレビというのはどういうことかというと、有機ELパネルがまるでロールスクリーンのようになっており、テレビ台のような本体部分に収納できるというもの。ホームシアタープロジェクター用の電動スクリーンをイメージすると分かりやすいだろう。
壁際などに設置する場合は特に巻き取る必要はないかもしれないが、LGはリビングや寝室で背面に大きなガラス窓がある場所などでのユースケースをアピールしていた。画面を収納することで、庭や窓からの景色を楽しめるようになるというわけだ。かなり設置場所の幅が広がるので、壁際よりもオープンなスペースに置きたくなりそうだ。全画面が出る「Full View」、時計や必要な情報だけが出る「Line View」、画面を収納しながら音楽などを楽しめる「Zero View」というモードがあるのもユニーク。最初はキワモノ的な印象もあったが、大画面テレビとインテリアとの新たな関係性を生み出すものとして、日本での発売にも期待したいところだ。
■サムスン電子はマイクロLEDテレビの小型化に成功
サムスン電子のブースでは、超小型LEDを敷き詰めて映像を表現する「マイクロLED」を用いたサイネージ向け巨大ディスプレイ「The Wall」や4Kテレビを展示していた。CES 2018では146インチの巨大テレビを展示していたが、今回は75インチテレビを参考展示し、家庭で導入可能なサイズを実現したことをアピールしていた。
マイクロLEDディスプレイは有機ELディスプレイと同様に一つひとつの画素が発光するため、有機ELテレビと同様に引き締まった黒を実現できるのが特徴だ。一方で、LEDをバックライトに利用する液晶テレビと同じように、有機ELテレビに比べて高輝度を実現できるため、より高コントラストな映像表現が可能になる。
サムスンのマイクロLEDはモジュール式を採用しており、さまざまなスタイルにカスタマイズできるのも大きな特徴だ。大型有機ELパネルの供給ではディスプレイの大型化に成功したLGエレクトロニクスがかなりのシェアを持っている状況のため、サムスンはマイクロLEDによって巻き返しを図る狙いもあるだろう。参考出展のため、いつごろの発売になるのかは定かではないが、新しいディスプレイのスタイルとして登場が期待される。
■ソニーが初の8K液晶テレビを発表
ソニーブースでは「BRAVIA MASTER Series」のラインアップとして8K液晶テレビ「Z9G」シリーズ、4K有機ELテレビ「A9G」シリーズを発表した。日本のメーカーとしては、シャープに次ぐ8Kテレビ参入となった。Z9Gシリーズは98インチと85インチという超大型モデルをラインアップし、米国では2019年春の発売を予定している。
同社が独自に開発している高画質プロセッサー「X1 Ultimate」に加えて、8K超解像アルゴリズム用の専用データベースを内蔵し、8Kに満たない解像度の映像を8Kにアップコンバートする「8K X-Reality PRO」を実現した。画面の上下に配置する4つのスピーカーが画面を震わせる「Acoustic Multi-Audio(アコースティック マルチ オーディオ)」も搭載しており、まるで画面から音が出ているような体験ができるのが魅力だ。
日本での発売時期や価格は未定だが、こちらも期待したいところだ。
■シャープは4年ぶりにCESに本格出展し、8Kをアピール
2018年11月に世界初の8Kチューナー内蔵液晶テレビを発売したシャープは、4年ぶりにCESに本格出展した。シャープは北米でテレビ事業を行っていない(中国のハイセンスに譲渡した)ため、テレビではなくグローバルに展開する8Kディスプレイを展示していた。そのほか、8Kビデオカメラや8K映像処理システム、イメージセンサーなどの8K関連デバイスなども含めて、「8Kエコシステム」を展示していたのが印象的だった。
■スマートテレビ機能の対応にも注目
そのほかに注目したいのは、薄型テレビの音声アシスタント対応などスマートテレビ機能の動向だ。Android TV搭載テレビのGoogleアシスタント対応が進む中で、Amazon Alexa対応テレビも登場。さらには、CES 2019の直前にソニー、サムスン電子、LGエレクトロニクス、Visioのテレビがアップルのスマートホーム基盤「HomeKit」と映像・音楽などのワイヤレス再生機能「AirPlay 2」に対応すると発表された。テレビを音声で操作したり、スマートフォンのコンテンツをテレビで再生したりといった機能の進化も今後の注目したいところだ。
■映像の高画質化や大画面化よりフレキシビリティが重要になるか
今回のCESでは、LGエレクトロニクスの巻き取りテレビに加えて、中国Royoleの折りたたみスマホ「FlexPai」が話題をさらっていた。これはディスプレイがおり曲がるようになっている端末で、開くとタブレットになり、たたむとスマホのように使えるというものだ。
Royoleの折りたたみスマホ「FlexPai」
LGとRoyole、どちらもその時々のニーズに応じて画面のスタイルを変えられるというところに大きな魅力がある。大画面化、高画質化したテレビも多くの来場者で賑わっていたが、必要に応じて形やサイズを変えられるディスプレイには、これまでにはない使い方やライフスタイル提案を感じた。
若者のテレビ離れが言われて久しい。まとめ買いなどをアドバイスする家電量販店のあるコンシェルジュに話を聞いたところ、一人暮らしを始める際に大画面テレビを購入しないという人は少なくないそうだ。スマホで事足りるというのもあるが、大きなスペースを取るテレビを置きたくないというのもあるのだろう。全体的にディスプレイの大型化が進んでおり(下記、資料ご参照)、LGが展示していた巻き取りテレビも65インチの大画面だが、単におしゃれに振っただけではなく、様々な背景がある中で出てきた今後のTVを含むディスプレイの生活の中の在り方の1例を示してるように感じられた。