フジテレビのニュースメディア「ホウドウキョク」とは?
編集部
メディアにあふれるニュースの中でも異彩を放つフジテレビのニュースメディア「ホウドウキョク」。どういう人が立ち上げに携わったのか? 24時間ニュース専門スタジオを作った理由は? マネタイズはどう進める? 運営責任者にさまざまな質問を投げかけた。
■伝えきれていなかった情報を、ひとりでも多くの人に届けるため
フジテレビの「ホウドウキョク」は、ニュースをテキスト記事、ライブ配信、動画、VRなどの多様な手法で、ウェブ、オンデマンド、SNSといった媒体にこだわらず情報を提供している、注目の分散化メディア。
運営責任者は同社コンテンツ事業局のニュースコンテンツプロジェクトリーダー、清水俊宏氏。2002年の入社以来、一貫して報道畑で政治部を中心に経験を積んできた方だ。
当時の小泉純一郎総理番、谷垣禎一財務大臣番、また自民党、民主党、公明党と与野党問わず取材を続けてきた実績を持ち、本社復帰後は『新報道2001』のディレクター、『スーパーニュース』のプログラムディレクター、『ニュースJAPAN』のプロデューサーと、地上波の番組制作に関わっていた。
その清水氏に「ホウドウキョク」の立ち上げを担当して欲しいと話が来たのは、2014年の年末。それから数か月後の2015年4月に、チーフプロデューサーとして24時間のストリーミングがベースのニュースチャンネルを立ち上げることになる。
「まだAbemaTVもできる前で、ネットでのライブ配信はまだブルーオーシャンの時代。動画配信が盛況なのに、そこにきちんとした動画ニュースのサイトはありませんでした。報道として乗り出して行けば、面白い世界が確かにある! と直感しました」
清水氏は「今まで伝えたいものが伝えきれていなかった」という想いも強く、地上波の枠組みではできなかったニュース情報の発信に乗り出す。
■24時間使えるスタジオで、バラエティに富んだコンテンツを多様な切り口で
「ホウドウキョク」の特徴として、24時間使える専用のスタジオがあるということが挙げられる。
「テレビ局が作るサービスなので、ここにスタジオがあるというのは一種のステイタスになります。話を伺いたい要人に来ていただいてインタビューも行いやすいですし、スタジオの横にあるサブでは報道の素材が全部一覧で確認することも可能です。常総市の鬼怒川水害があった時も、ものすごい状況になっていることにサブで気付いて、すぐに“これやろう!” と動けたのです」
まだ地上波のどこも報道していなかった時間に、「ホウドウキョク」で生中継されたスクープ映像は新聞協会賞を受賞した。
もともとフジテレビの記者は、多くの情報や映像を持っているが、地上波ニュース番組の枠ではどうしても伝えられないものがあった。
「僕も郵政民営化の取材を続けていて、“郵政民営化って成立するとどうなるの?”という疑問をよく視聴者にぶつけられました。もちろん情報はあって原稿を書こうと思えば書けるのですが、このような情報は毎日変わるわけではなく、毎日のニュースでは伝えられないのです」
24時間のニュースメディア「ホウドウキョク」は、この伝えられない部分を、自らがプラットフォームとなり、記者が伝えたいことを存分に伝えられる、ユーザーは知りたい情報をすぐに得ることができる、出し手と受け手の双方にとって価値のあるメディアとなっている。
■マネタイズを意識はするが、フジテレビ全社的な強みを活かす
24時間の情報発信となると、当然手間やコストのことが気になるところ。マネタイズも必要になると考えられるが、この点を「ホウドウキョク」はどう捉えているのか?
「広告収入を基本として、2017年からマネタイズを本格的に始めようと考えています。一方で、『ホウドウキョク』のコンテンツは、もともと地上波向けに取材した内容がベースになっているので、フジテレビ全体で価値が高まればいいと思っています。もちろん『ホウドウキョク』単体の黒字は目指しますが」
「ホウドウキョク」がメディアの価値を上げ、一人でも多くの人に必要な情報が届けられる存在であれば、この恵まれた環境を利用して、より良いコンテンツを発信し続けることで “フジテレビのニュース”の価値が上がる。
ウェブやSNSでのニュース配信によって、地上波テレビの価値がさらに上がっていく。「ホウドウキョク」の取り組みに今後も注目だ。
――プロフィール
ホウドウキョク運営責任者 清水俊宏さん
コンテンツ事業局 ニュースコンテンツプロジェクトリーダー。2002年の入社以来、政治部などで活躍。自民党、民主党、公明党と与野党問わず取材を続けてきた実績を持つほか、『新報道2001』のディレクター、『スーパーニュース』のプログラムディレクター、『ニュースJAPAN』のプロデューサーなどに関わる。