動画配信サービス「Paravi(パラビ)」の目指すもの~Connected Media Tokyo 2018 レポート~
編集部
2018年6月13日~15日、幕張メッセ(千葉県)においてデジタルメディアビジネスの総合イベント「Connected Media Tokyo 2018」が開催。今回も、会場各所で様々な講演が行われていたが、本項では、今年4月から動画配信サービスをスタートさせた株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパン(以下、PPJ)の髙綱康裕代表取締役社長が登壇した専門セミナー「新動画配信サービス「Paravi(パラビ)」の目指すもの」をレポートする。
■TBS、テレビ東京、WOWOW、日経新聞、電通、博報堂DYMPが集まる意味
「Connected Media Tokyo 2018」は、“モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータで変わるデジタルメディアビジネスを支える総合イベント”と銘打たれ、さまざまな角度から基調講演や専門セミナーが行われた。その中でも本年4月にサービスをスタートしたばかりの動画配信サービス「Paravi(パラビ)」(以下、Paravi)の専門セミナーは非常に注目を集めた。
PPJは、株式会社東京放送ホールディングス、株式会社日本経済新聞社、株式会社テレビ東京ホールディングス、株式会社WOWOW、株式会社電通及び株式会社博報堂DYメディアパートナーズが共同で動画配信ビジネスに参入すべく、2017年7月に設立したもの。

複数のメディアが集まり配信ビジネスに参入することの意味を、髙綱社長は「配信の世界でも無料と有料が住み分けられ、かつ並び立つと考えています。中期的に見れば、両方のモデルを同時に進められるプラットフォームを構築することを目指すのが良いと判断しました。ユーザーにとっても、複数のサービスが一つになる方が望ましいはずです」と話す。
またParaviというサービス名の由来を、「Paraはギリシャ語の接頭辞で“近い”という意味。Televisionに対してParavisionという言葉を作ってParaviと略し、テレビのコンテンツをより身近に触れて感じて欲しい、という思いが込められています」と説明した。

■新着の多さやオリジナルドラマなどのコンテンツ戦略
Paraviは、「定額・見放題の動画配信サービスで、月額は925円(税抜)。スマートフォン、タブレット、パソコン、テレビ(現在FireTV、AndroidTV対応)の複数デバイスで利用が可能」というものだ。サービスの内容は、SVOD配信とTVOD配信、そして生配信(ライブストリーミング)となる。
コンテンツの特徴として、次の5つの点が髙綱社長から紹介された。
1.毎日“録れたて”コンテンツ 50本以上/週
2.ここでしか見られない秀逸“オリジナル”
3.“国内ドラマ”数日本最大級
4.いつでもどこでも“ライブストリーミング”
5.動画だけじゃない“ラジオ&テキスト”
TBS・テレビ東京・WOWOWといった複数のメディアを抱えていることに加え、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」やTBSのドラマなどをすぐにキャッチアップしてその日の夜から配信がスタートすることから、新着コンテンツの多さを実現した。
オリジナルコンテンツについては、TBSドラマで人気の“SPECシリーズ”の続編“SPECサーガ完結編「SICK’S 恕乃抄」~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~”や、人気バラエティ“あらびき団”のParavi版“パラビき!パラビき!あらびき団〜四天王編〜”、テレビ東京のバラエティのスピンオフなどを配信している。

そしてParaviは動画だけではなく“ラジオ&テキスト”も配信しているのが特徴的で、PlusParaviというWebサイトを平行して展開し、ドラマの脚本家などコンテンツクリエイターへのインタビュー記事や、日経やWOWOWが制作するオリジナル番組の書き起こし記事の提供も行っている。これについて髙綱社長は「Paraviに行くとドラマなどのコンテンツを別の角度からも楽しめる、と思われることが狙いです」と明かした。

■Paraviが目指すものは“毎日訪れたくなる場所”
以上のようなコンテンツの展開には、「有料動画配信市場はこれから一気に活性化するため、マジョリティ層へのアプローチが不可欠」という考えがあると髙綱社長は言う。この場合のマジョリティ層とは「動画配信未体験やわずかな経験しかなく、テレビコンテンツの好きな人。具体的には、現在もテレビを見ている人や見ていなくてもテレビの話題が好きな人、小さい頃よりテレビを見て育った人など」と定義付けられている。

このマジョリティ層には、動画配信はどうすれば見られるのか、録画などできるのか、などという基本的な疑問をまだ多く持っている人がいる。「そういう人たちにいかに有料動画配信サービスを定着させていくか」が重要になるのだ。
髙綱社長は、Paraviが目指すのは「毎日訪れたくなる場所」だと言う。「毎日訪れると新しいコンテンツが増えていて、新しいものに触れあえる場所にしたい。将来的には面白いコミュニティを作って、居心地の良い場所を提供していきたい」と将来を見据えた。
動画配信サービスとしては最後発とも言えるParaviだが、複数のメディアが多くのコンテンツをさまざまな形で提供するというのは大きな強みであると感じられた。今後の動向にも注目していきたい。